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「ミライ君――――君は、このまますんなりとあの怪獣が殲滅されると思うかい?」

 

 最前線で激しい戦闘が繰り広げられている最中――――その後方に立って、ただ見ていることしかできない葦舟ミライは、歯がゆく、情けなく、もどかしい気持ちでいっぱいだった。ミライには、手にした〝ライフル〟がただの〝鉄くず〟に見えて仕方なかった。

 

 そんなミライを横目で楽しそうに眺めながら、ハルカ・ディスカバリーが声をかける。ただ空に浮かんで悠然としている白髪の少年、まるで彼だけの世界がそこには存在しているかのようだった。


「あの三人なら、きっと大丈夫だよ」

 

 ミライは血が滲むほどに拳を握りながら、自分自身に言い聞かせるように言った。

 そんな様子を、ハルカはことさら楽しげに眺める。赤い瞳が嗜虐的に輝いて、赤い唇が弧を描いた。


「怪獣の直径が三分の一になったって言っていたし、今のところ事前の作戦通りだ」

 

 十キロほど離れたこの距離からでも、〝トーキョージュピター〟の体積が減っていることは一目両全だった。さらにスーツのOSが現在の戦況を分析した結果を、リアルタイムでミライに報告しているため、この場において必要な情報の全てを把握していた。目視でも、分析の結果でも、少しずつ風船の空気が抜けて萎んでいくかのように――――怪獣は、その姿を縮めている。

 

 そんなミライの返答を聞いたハルカは、愉快そうに微笑んだ。


「あはは。確かに、あの怪獣は少しずつ縮んでいるね」


「ハルカ君、何がおかしいの?」


「ミライ君、あれは本当に怪獣なんだろうか?」


「それって、どういう意味?」


「いや、僕もいろいろな怪獣を見て来たけれど、あんなただ丸いだけの怪獣なんて見たことがないのさ」

 

 ハルカは両手を広げてみせた。

 まるで〝トーキョージュピター〟を包み込みたいに。


「今までの怪獣たちに、同一の個体はただ一つとして存在してなかった。全ての怪獣に、それぞれの姿形があり、それぞれの生体があり、それぞれの特性があった。そして今までの怪獣たちは、全て何かしらかの生物の姿をしていた。ミライ君には、あれが何かの生物に見えるかい?」


「それは?」

 

 ミライの目にも、あの怪獣が何かの生物のようには見えなかった。

 そうあの形は、紛れもなく――――


「僕の目には、あれは何かの〝卵〟のように見えるけどね。そう、何かが生まれ出る前の――――卵にね」

 

 かつて東京だった荒廃した大地が生まれ出る雛鳥の巣に、そしてかつて東京だった土地の上空に浮かぶ黒い球体が生まれ出る前の卵に見えた。

 

 ハルカ・ディスカバリーの言葉が、戦場で不気味に響いた。

 

 これから生まれ出るなにかを祝福するかのように。


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