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――――○七○○。
オペレーション〝バイバイ・ジュピター〟開始時刻。
トップチーム〝スターソード〟のメンバーに向けて、艦橋で今作戦の戦術指揮を取る龍驤ナオコからの指示が入った。
「総員第一種戦闘配備――――〝スターソード〟発進スタンバイ」
ヴァリス本部の司令官室ではなく、前線に配備された航空母艦『ジョージ・ワシントン』の艦橋から、戦術指揮官が発進の許可を出す。
「カタパルト射出後は、速やかに作戦開始位置へ移動。移動完了後は――――各員、オールウェポンズ・オールスキルズ・フリーよ」
龍驤ナオコが手を広げて海の先を指した。
「これより、対怪獣殲滅作戦行動――――オペレーション〝バイバイ・ジュピター〟を開始するわ」
作戦開始のけたたましい発進開始の合図が鳴り響き、〝スターソード〟のメンバーの発進が開始した。
「オードリー・エンタープライズ、〝ラプター〟――――Get Ready Go」
「ヴィヴィアン・インヴィンシブル、〝アヴァロン〟――――出撃しますわ」
「伊号マヤ、〝橘花〟――――出ます」
「葦舟ミライ、〝零式〟――――行きます」
カタパルトから射出された〝スターソード〟のメンバーが、水平線を暁に染める空に向かって一直線に駆け抜ける。そして、目標である〝トーキョージュピター〟へと向かっていった。
「衛星との〝戦術データリンク〟を確認。全システム、オールグリーン――――全ての〝ネクサス・スーツ〟のとの同期を完了」
高度と速度を上げ、予定進路についたオードリーが口を開く。
「ヴィヴィアン、時速五百キロを維持して。マヤはそのままの高度と速度を維持。いつでも能力をつかえるように準備しておいて。ハルカは、ミライから離れないで」
「了解」
「了解」
「了解」
静止軌道上の軍事衛星と〝戦術データリンク〟にアクセスをしたオードリーが、全てのネクサスの情報を掌握して的確に指示を飛ばしていく。
「ミライ君、今日はよろしくね。僕のそばを離れないように」
「ハルカ君?」
いつの間にか、ミライのすぐ隣をハルカ・ディスカバリーが飛行していて、ミライは驚きのあまり目を丸くした。ミライと同じ高度、同じ速度で空を駆けるハルカ・ディスカバリーは、〝ネクサス・スーツ〟も纏わずに、無防備な〝スキン・マトリクス〟一枚の姿で時速五百キロの速度で出していた。
「ミライ君は“飛行能力者”だったの? でも、そんな恰好じゃ――――」
「あはは。ミライ君がそう思うのも無理はないけれど、僕の能力は飛行じゃないさ。言っただろう? 僕は、少しだけ他のネクサスとは違うって――――僕の能力は〝調和〟さ」
「調和?」
「そうさ――――〝VK領域〟を介して、世界と調和することが僕の能力なんだ。僕は、そのそれを〝調律〟と呼んでいるんだ」
「調律?」
ミライには、ハルカの言っている意味がよくからなかった。
「そう、今は僕自身をこの空と〝調律〟し――――〝調和〟をもって空を飛んでいるんだよ」
「なんだか、すごく便利な能力なんだね?」
ミライは、ハルカの能力が何となくすごい能力なんだなということだけ理解した。
「二人とも作戦中よ。無駄口を叩かない。あと、五分で会敵よ」
ミライは注意を受けて慌てて前を向いた。
空を駆ける“スターソード”の目の前には、すでに〝トーキョージュピター〟の姿が映っていた。窪んだ東京の地表の上に浮かぶ――――〝黒い球体〟の怪獣。
荒廃したかつて有数だった都市、そしてかつての摩天楼。沈下した地盤。かつて東京であった大地には、淀んだ海が流れ込み、崩れたビルの残骸が突き出したりしていた。
「会敵した。みんな、それぞぞれの位置について――――」
“トーキョージュピター”から十キロほど離れた場所。淀んだ黒い海に覆われた、かつての〝港区〟だった場所に、伊号マヤが防衛網を張る。
殲滅対象の〝トーキョージュピター〟は、かつての〝千代田区〟であり、国会議事堂が置かれていた上空に浮かんでいた。それは、千代田区そのものをすっぽりと覆い隠すような巨大さで。
最前線に立つオードリーとヴィヴィアンは、〝トーキョージュピター〟の五キロ圏内にスタンバイし――ミライとハルカは、伊号マヤのさらに後方にスタンバイした。さらに、その後ろでは、セカンドチーム、サードチーム、補給チームが航空母艦で待機している。
ミライは、背中に抱えた対怪獣用の〝アンチマテリアルライフル〟を、心許無そうに両手で握った。
☆
「長門司令、全チーム作戦開始位置につきました」
「はじめてくれ」
艦橋のモニターに映った長門イソロクが短く告げた。
「オードリー、これより最前線の指揮権は全てあなたに一任するわ。攻撃を開始して」
龍驤ナオコが、サングラス越しに〝トーキョージュピター〟を睨み付けて――――
オードリーに攻撃開始を告げた。
☆
「了解。ヴィヴィ、これより対象への攻撃を開始する」
「了解ですわ。ヴィヴィアン・インヴィンシブル、対象への攻撃を開始します」
ヴィヴィアンは空へと駆け、そして〝トーキョージュピター〟へと接近して行く。背中に装備した兵装――――〝ソード・ユニット〟を装着して、華麗に両手を振るった。
「さぁ、私と踊ってくださる? 切り裂きなさいっ――――エクスカリバー」
そして、〝トーキョージュピター〟への攻撃が開始された。




