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ミライは、しばらく島風ミサキと顔を合せることはなかった。
翌日から、全ての生徒たちに〝所属チーム〟ごとの実戦訓練が行われることになったからだ。
全ての生徒は、それぞれの所属するチームのもとで怪獣殲滅の訓練を行う。
そして、まだ所属チームの決まっていない葦舟ミライは――――航空母艦に乗り込んで、一人基礎訓練と並行して、〝ネクサス・スーツ〟を着用しての戦闘訓練を行うことになった。
〝ネクサス・スーツ〟とは――――〝ネクサス〟が能力を使用するときに発生する〝VK領域〟を、エネルギーとして起動する、対怪獣殲滅を目的とした小型の〝パワードスーツ〟のことである。〝スキン・マトリクス〟と呼ばれる、全身を覆う〝真っ白なタイツ〟のようなものの上から身に纏う簡素なパワードスーツで、シーツを纏う主な目的は〝飛行〟による戦闘を可能にすることだった。そして、着用者の生命の維持や、殲滅を行う上での補佐的な役割を果たす。
〝ネクサス・スーツ〟自体には、攻撃的な機能はほとんどついておらず、それぞれの〝ネクサス〟が持っている〝能力〟に応じて、オプションとして〝兵装〟を取り付けられるようになっているが、基本的に殲滅に用いる攻撃手段は、〝ネクサス〟の持つ能力によるところが大きい。
「こ、これ、本当に飛べるんですよ? このまま発進していいんですよね?」
訓練のために搭乗した航空母艦の発進カタパルトで、黒のネクサス・スーツ〝零式〟を身に纏っている葦舟ミライが、泣きそうな表情で情けない声を上げた。
カタパルト射出のタイミングは、すでにミライ自身に移譲され、艦からは発進のサインが出ていた。しかしミライは念のため、航空母艦の〝艦橋〟にいる龍驤ナオコに尋ねてみた。
「もちろんよー。シュミレーション通りにやれば――――だい、じょう、ブイッ」
あまり大丈夫そうじゃない声が艦橋から、ミライのヘッドセットに響いた。
「カタパルト射出後は――――スーツ脚部のスラスターで飛行を維持、バーニヤで姿勢制御よー。基本的なことは、スーツのOSがやってくれるから、まずは習うより慣れろ。さぁ、はりっきて行ってみよー」
「そんな無茶苦茶な――――」
「――――あーもー、じれったいわね。そうだっ、カタパルトのコントロール返してもらうわね。さぁ、行くわよー。3・2・1・〝零式発進〟――――――――――」
「ちょっと待ってくだざ……………ちょっどおおおおぉぉぉぉ―――――――――――」
ナオコの強引な合図でカタパルトの射出が行われた。
航空母艦のデッキ、僅か百メートルばかりの滑走路をミライは駆け抜ける。
射出から二秒後には時速300メートルに達し、その勢いのまま大空に飛び出した。
――――かに見えたが、勢いよく飛び出したミライは中空で姿勢を崩して、そのまま真っ逆さまに海に墜落して行った。
「…………うそ? うわあああああああ――――――落ちる、落ちるううううううううううううう」
「…………あちゃちゃー。まぁ、初めはこんなものよね」
艦橋から双眼鏡でその様子を眺めていた龍驤ナオコは、眉間に皺を寄せながら「仕方ない、仕方ない」と頷いた。
艦橋にいる他のクルーには気づかれないように、唇を強く噛みしめながら。




