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人類の夢

作者: さきら天悟

「太らない薬はできないのかなぁ、人類の夢なのに。」

ラジオ番組で太り気味の人気パーソナリティが声を少し張って言った。

それは、薄毛の新しい画期的な治療方法の研究が始まったことのニュースに対するコメントだった。

「絶対できるよ。早く出来ないかな。」

番組の女性アシスタントも気軽に同調した。

この時、人類の夢と思える太らない薬が人類に悪夢を見せるとは誰も想像しなかった。


5年後、米国のある研究機関で体の状態を維持する遺伝子が発見された。

あるたんぱく質が加わるとこの遺伝子が活性化し、太った脂肪を消費し、健康状態の体を維持することが分かった。

この作用はアンチエイジング(老いの防止)に応用できると期待された。。

先進国の製薬会社は、争って薬の研究を始めた。


5年後、2、3社が製品にこぎつけた。

副作用が少しあったが、効果は絶大だった。

しかし、薬は非常に高価で1錠、百数十万円し、ほぼ毎日服用する必要があった。

テレビはこぞってこの薬で体の体形を維持しているセレブな女性を紹介した。

そのテレビの番組は、セレブが色とりどりの高級料理やスイーツを食するものだった。

セレブの食べる量は非常に多く、テレビの視聴者はあれでよく太らないと感心した。


さらに5年後、日本のお菓子会社が画期的な製品を開発した。

1錠100円程度で週に1回飲めば良く、副作用はまったくと言うほどでなかった。

その製品はコンビでも販売され女子高生も気軽に使用した。

海外製薬会社も類似製品を開発したが副作用が頻発にで、日本製の製品に太刀打ちできなかった。

日本の独占市場となり車とならぶ産業となった。

日本政府は、経済効果と成人病の予防により医療費の削減ができると期待し、大いに奨励した。

しかし、貿易摩擦や産業スパイなどの問題で日本と他の先進諸国とが国際会議で紛糾した。


さらに5年後。

日本の生活様式が一変した。

食品産業が増大した。

高級レストランから激安ラーメン店まで町中にあふれた。

どの店も太らない薬のおかげで客足は途絶えなかった。

コンビ二も陳列されている商品が一変し、食料品があたりを埋め尽くした。

今は世界中の珍しい食べ物もを置いてあるコンビニが人気があるようだ。

薬は、先進国だけでなく後進国にも浸透した。

しかし、太らない薬は以前日本のお菓子会社、1社が独占していた。


さらに5年後。

日本は滅亡した。

正確には日本政府である。

戦争が起きたのだ。

日本と諸外国は太らない薬の利権で紛糾していたが、それが原因ではなかった。

近年、太らない薬の影響で慢性的な食料不足が問題になった。

そしてその年、世界的に大干ばつが発生した。

例年の3割程度しか食料が生産できなかった。

引き金はC国だった。

食糧生産国が国内の食糧不足から食物の輸出停止を発表した。

C国は貿易協定違反とし軍を派兵した。

これを機会に食糧危機に陥った各国が、食料を争って世界中で戦争を始めた。

また、各国内でも食料を争って犯罪が横行した。

食料自給率の低い日本は、人口の8割が死に、政府が消滅した。


さらに5年後。

人類は滅亡した。

C国は食物を確保するため、植物、動物に影響を与えない、人間だけを殺す細菌兵器を使用した。

C国は細菌兵器のワクチンを用意していたが、突然変異でワクチンが効かない細菌が誕生した。

こうして人類は夢のように消えた。



まだ食糧不足の国があります。

太らない薬の開発を喜ぶような風潮には違和感があります。

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