夢
私はなんて酷いことをしたんだろう。
今になってやっと分かってきた。
しかし、あの時は何の知識もなかった私はどうすればよかったのだろう。
ただ運が悪かっただけなのかもしれない。
でも、私は凄く悔しかった。誰も悪くない、ただこの気持ちを誰に向ければいい?どこに向ければいい?
ただ死刑の日を待つしかないのか。
私はそれから毎日死に怯えながら過ごした。
本を読むことは続けた。しかし、それも出来なくなっていった。
読むにつれ、希望が脳裏によぎってしまうからだ。
外に出たい!人間として生きたい!
平凡な生活、家族、仕事、仲間、テレビ、音楽、恋愛、すべてに憧れていった。
今は死に対しては怯えてはいない。
ただ、私は知ってしまった世の中に憧れを抱く分、悔しさがましてしまう。
涙が止まらない、こんなことなら何も知らない頃に殺して欲しかった。
そして、時はたち、死刑の日が来てしまった。
「今日は夢を見たよ。楽しかったなぁ、家の中でソファに座っている自分がいて、向かいには妻がいて、となりには自分の子供もいたよ。テーブルには食パンにコーヒーが置いてあって、食べ終わると急いでスーツを着て外へ出て会社に向かってた。そうだ、行く途中の公園に青いビニールの老人が元気に洗濯物ほしてたっけ。」
コツコツコツコツ




