罪の意識
その人間が私の手をとり誘導され歩いていると、別の部屋へ入れられた。
そこには別の人間が座っており、対面に座らされ、ずーっと何かをしゃべっていた。
何を言っていたかは分からないけど、いきなり怒ったり、やさしくなったりしていたのを覚えている。
そしてそんなことが繰り返されて何日か過ぎた後、大きな別の部屋へ入れられた。
そこにはたくさんの人間がいて私を見ており、私は部屋の中心に立たされ、長々と私にしゃべっていた。
そしてそれが終わると、また小さな部屋へ戻された。
しかし、そこは前とは違い、私と同じ服を着た人間がいた。
その人間はなんと、あの青いビニールの家にいて食料をくれた老人だった。
その老人はとにかく人のいい人間だった。私にまず、言葉を少しづつ、少しづつ教えてくれた。
そして次は、文字の読み方を教えてくれた。
その頃はもう老人と5年くらいになっていただろう。
そんな老人の口癖は「本を読みなさい。」だった。
しかし、私は、言葉を喋るのは好きだったけど、文字を読むのが嫌いだった。
そんな暮らしていたある日老人が1日中布団から動かなくなり、呼びかけても揺すっても、反応しなかった。老人が死んだ事に気づいた。
その時私は生まれて初めて涙というものを流した。
次の日から一人部屋での暮らしになった。
喋る相手がいなく、退屈な日々を過ごしていたが、ふと老人の言葉を思い出した。
「本を読みなさい。」
私はその時からとりついたように、本を読み出した。
まずは、歴史から読んでいった。
私は衝撃を受けた。自分だけ取り残されていたこと、ここまで人間というものが発展していたと言うことに。
そのあとも、経済や文化、法律やスポーツ、ありとあらゆる本を読みあさった。
読んでいくうちに少しづつ自分がなぜここにいるのか、自分のしたことの罪の意識というものが分かってきた。
そして、何年か先、自分はどのように罰を受けるのかを…




