episode 4 白川 宏樹
・・・・・どうも、白川宏樹です。
いきなりはやとが転けて、うわださっ、などと思ってたらなんだか喚きだしたので醜い羽虫、などと思ったり思わなかったりしています。
「ひろにぃ?」
ん?誰かに呼ばれたかな?なんか聞こえた気がしたけど気のせいだと思うのでとりあえずはやとを見下す。
「ひ、ひろにぃ?」
また呼ばれた気がした。一体誰ですか、人がせっかく楽しんでいるというのに。
仕方ないので辺りを見回す。
「あれ?なんでみんな口開けて固まってんの?もう餌の時間?」
『・・・・・・』
まったく反応が無い。これだと面白くない。頭に疑問符をいくつも浮かべながら、4人を眺める。
ん?4人?
なんだかいつもより多いような・・・・・・・・。取りあえず確認。
少女面ののろまな亀こと青山光昭は立ったまま固まっている。
いつもいつもうるさい幼なじみ番長こと日向夕陽も中腰姿勢で硬直。
そこで夕陽の足元で転がっている羽虫、自称天才、ナリヤン、etc...ことあれ?名前・・・・あぁ、萩原隼人も同じく。
残る教室のドアに立つ―――。
「だれ?」
率直な疑問だった。そのはずだ、なのに―――。
「え!?ひろにぃ、私だよ!!」
なんで涙目でいきなり詰め寄られなければならないのだろうか?あれですか?新手の恐喝ですか?お金なんて持ってないから逆にください。
(わけがわからない)
らしくなく同様する俺。こんな子を俺は知らないはずなんだが。
今会ったばっかでいきなり―――。
ん?
“ひろにぃ”?
あれ?なんだか聞き覚えのあるようなないような・・・・・・。
もう一度じっくり少女を観察する。
焦げ茶色の髪を肩で切りそろえ、前髪パッツン。整った顔立ちに、大きな瞳が印象的だ。そしてなにより―――。
「あれ?そのヘアピン・・・・」
思い出しそうで思い出せないもどかしさ。前にそれと同じ物をだれかに・・・・・。
あ。
「飛鳥?」
「そ、そうだよひろにぃ!!」
目の前の少女はぱぁっという効果音が響いてきそうなほど満面の笑みを浮かべ、俺に飛びついてくる。
女の子なんだから恥を知りなさい。そんなんだと誰かにお持ち帰りされてもしりませんからね。
「あ、あのー・・・・」
ん?
我らがアイドルあお様がオズオズと挙手。いったい何をためらっているのだろうか?
首を傾げる俺となかなか声にしようとしないあおを見かねたように苦労人ことゆうひが代わりに口を開く。
「えっと、ひろきとその子は知り合いなの?」
あー、なんだそのことか。
「俺の下僕――」
「いとこですっ!!」
顔を真っ赤にして否定された。なかなか面白い反応をするなこいつ。
新しいおもちゃを見つけた俺は、取りあえずこの子を紹介することにして、三人に向き直る。
よーし。
「えっと・・・・・苗字なんだっけ?」
ガクッと崩れ落ちる4人。
正直に言ったのになんで親の仇を見るような目を向けられるのだろう?
「寺崎っ!!寺崎飛鳥!!」
「あー、そうだった。で、俺の下ぼ――」
「いとこですっ!!!」
必死に否定する飛鳥。やばい、面白い。
「で、こっちが苦労人の日向夕陽」
「誰のせいよ!?誰の!!」
なんか人のせいみたいに言っていた気がするが気のせいだろう。
「で、この美少女が我らがアイドル青山光昭」
「しょ、少女じゃありませんっ!!男ですっ!!」
こっちも一瞬で赤面。茹で蛸みたいでうまそう。
「で、そこに平伏してる羽虫はゴミ山荒らし君」
「俺の紹介一段とひどくね!?萩村隼人だこらぁ!!」
「こらぁ、って言えば恐がると思ってるんだったら一回脳みそ日干ししたほうがいいと思うよ?きっとカビが生えてるから」
あーだこーだ文句を言ってくる全員をスルーして、教室内に入る。
なんだか主に女子の視線が集まっている気がするが気のせいだろう。
席は名前順で並んでいるらしいので、自分の席を確認。俺の席は真ん中の後ろから二番目の所だった、これなら寝てもばれないな。
そんな平和なことを思い浮かべながら俺の周りでギャーギャー喚いている蚊どもをシャットアウトするために目を閉じた。
この一年も退屈せずにすみそうだ。