彼の御方を愛しすぎた娘
勝手な考えのもと描いておりますので、不快な思いをした方がいらっしゃったらすみません。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい
もう近寄りませんから
悪い事などしたいとも思いません
貴方の負担になる事などいたしませんから――
許して下さい…神さま
あぁ…どうして。
どうしてあんな仕打ちを受けてまで、逢いたくなるのは貴方だけなのだろう。
身近な存在であるから、神である貴方を愛したわけではない。―――生まれてからずっと、私は盲目的にあの御方を愛し続けていたの。
私という存在は、エデンにいるみんなからはずいぶん遅れて創られた。
おまけに、花を咲かせる神や動物の世話をするのが得意な神など沢山特技を持っている中で、私は大したこともできないままだった。
皆が神と呼んでいるのは私たちや世界を創造した御方で、あらゆる存在に愛されている。父であり母でもあるあの方は、みなの親であり恋人でもある。『誰より愛すべき御方』なのだ。
普段から、特別あの方に目をかけて戴いていたのは知っていた。
生まれた時から体が少し弱くて沢山心配をさせてしまった。ようやく少し体が丈夫になってきているのだけれど、今は不器用な私を気にかけてくださっている。
私はそれが嬉しくて、優しく笑ってくださるのに甘え、いつもあの方にくっ付いて過ごしていた。
「今日はいつもよりたくさんお仕事をできました」
「そうか、偉いぞ。無理はしなくていいから、少しずつがんばりなさい」
「はい、ありがとうございます」
些細なことを報告する私にあきれることはなく、あの方は私をやさしく見つめては頭を撫でてほめてくださる。そんな私の態度が気に入らなかったのだろう。周囲の反応は冷たいものだった。
当たり前だ。博愛の精神を教え、説く御方が贔屓などしていい訳がない。
「まぁ!
あの子ったら仕事すら禄に出来ない癖に、またあの御方の手を煩わせているわ」
「本当だな。優しさに甘えるばかりで、なんていやしい娘だろうっ」
だから私は、あの御方に優しくされる代わりに彼の周囲の神には馬鹿にされ、邪険な扱いをされていた…。彼の目を盗んでは転ばされ、時にはごみを頭からかけられたりもした。
もっと酷い事をされたことがあるけれど、今更そんなこと思い出したくもない。
……あの神たちが言うところによると、私の存在は彼にとって邪魔以外の何者でもないらしい。
厳しい言葉を向けられる度に何時も落ち込んではいたけれど、そんな言葉をかけられるのは初めてではなかった。ずっと言われ続けていたから、私だって本当は邪魔なのではないかと考えたこともある。
あの方の役に立てたら、少しでも嬉しいと何時も思っていたけれど……私のする事なんて所詮いつも空回り。それでも私が傍にいる事で彼が笑ってくれるのなら、たとえ周囲のいう通りだとしても、それでいいのだと思っていた。彼の信用している神々にあの事を伝えられるまでは―――。
「お前は、傍にいるだけで迷惑になると、何時になったら気づくのだ?」
「そうよ。あの御方だって、あなたの対応には困っていらっしゃったのよ?」
「…っそんな!」
これまで優しかった方々に、邪険にされたこともショックだったけれど……間接的に聞かされた、あなたの本心が恐ろしくてしょうがなかった。傍で努力していけばいいと考えていたのに、まさかそれさえ迷惑だったなんて…。
誰より貴方に近しい方々が見かねて忠告してくれたことに、感謝しつつも胸が張り裂けそうだった。
「なに?そんな訳がないって?優しいから、あの御方は口にできないだけなのよ。
その証拠に、貴女が頼りないといつもお嘆きになっているわ」
「いい加減、迷惑かけないすべを考えなさい」
まさか彼自身ですら、私を煩わしいとしか認識していなかったなんて、考えもしなかった。言われた悪口の中には『知恵が足りない』なんてものもあったけれど、今ほどそれを実感した事はないだろう。何時も私に向けてくれていた頬笑みは、本物ではなかったのですね…。
―――だけど、ありがとう。
貴方から直接そんな事を言われたら、きっと私は泣いて貴方にすがってしまったと思うから。せめて最後だけでも、きれいに終わらせてくれてありがとう。
愛しているけれど、誰よりも大切であるけれど…。
私は、もう二度と
貴方の瞳に映らないことを、神に誓います。
『純粋な神様が堕ちる時』と対になっております。