愚かな少女と秀麗な少年
この作品は他のものと異なり、ある日ある場所で交わされた男女の会話文のみで表現しております。
愚かと呼ばれる少女と、秀麗と言われる少年。
相容れぬはずの男女が織りなす会話。
『君はどうしてそんなにも簡単に人を信じるんだ』
「だって信じなければ、誰も信じてくれないでしょう?」
『信じた結果がその様だろう?
いい加減に学んだらどうなんだ』
「私はいつも学んでいるわ。
こんなにも今、貴方を愛おしく思えるのだもの」
『それが、そもそもの間違いだというんだ。こんな奴に惚れて、何が楽しい。
もっと他にいい男などゴロゴロいるだろう』
「私の中では貴方が一番よ」
『いや違う。君の中では俺以外の選択肢を抹消しているだろう』
「それがどうしてダメだというの?貴方を知ったら、他の人なんて目に入らなくなってしまったの」
『君は何もわかっちゃいない、俺ほど狡賢い奴はいないんだ。
君だって例外じゃないんだぞ。蜘蛛のように絡めとって、ジワジワその綺麗な体も、可愛い顔も全て全て喰らってしまうんだ』
「あら、私を食べたいと思ってくれるなんて嬉しいわ」
『ほら、またそういう事を言って俺を試しているんだろ?
―――あぁ、食べたいさ。ずっと我慢していたのなんて、お互いに分かっていたはずだ。』
「貴方ほど滑稽な人なんて知らないというのに
みんな馬鹿ね」
『全くだ』
事情も知らず、周りでやいのやいのと囃し立てる人間の
何とも愚かで愛しき事。
表面をのぞいているだけじゃなく、もっと奥まで掘り進めて見なさいな。
きっと貴方の隣にいる友人ですら…
貴方の知らぬ、ほかの顔がそこにはあるはず。
次話は、友人に恋した女性の片想いの話になります。