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キャンパスと幼なじみ

大学のキャンパスは、昼前の光を受けて白く眩しく輝いていた。

春の空気はまだ少し冷たく、風が吹くたびにコートの裾が揺れる。

ユキは校門をくぐりながら、小さくあくびをした。


眠い。

昨夜はなかなか寝付けなかった。

理由は自分でも分かっている。

頭の奥で、何度も同じ光景がよみがえるからだ。


搬入口の通路。

少し暗い空気。

近づいてきた影。

そして――唇。


ユキは慌てて首を振った。


(だめだめ)


考えないようにしようとする。

けれど気づくと、また同じ場面を思い出している。


「ユキ」


背後から声がした。

ユキは振り向く。

長身の男が立っていた。

アッシュグレージュの髪。すらりとした体つき。高い背。

どこかモデルみたいな整った雰囲気を持つ男――佐竹葵だった。


「おはよ」


ユキは少し笑う。


「おはよ、葵」


葵はユキの顔をじっと見た。

少しだけ眉を寄せる。


「……寝てない?」

「え」


ユキは一瞬止まった。


「なんで」


葵はあっさりと言う。


「顔」

「目、ちょっと赤い」


ユキは慌てて視線を逸らした。


「昨日バイトだったから」


嘘ではない。

でも全部でもない。

葵は少しだけ黙る。

それから歩き出した。


「イベコン?」

「うん」


ユキも隣に並ぶ。

少し沈黙が流れる。

やがて葵がふと聞いた。


「楽しかった?」


ユキは少し考える。

楽しかったか、と聞かれると、うまく答えられない。

ただ。

胸の奥が、少しだけざわつく。


「……うん」


曖昧に答える。

葵はそれを横目で見ていた。


「ふーん」


短く言う。

そして、ほんの少しだけ笑う。


「なんかさ、今日、変くね?」


ユキの心臓が跳ねた。


「え」

「いや」


葵は肩をすくめる。


「なんとなく」


ユキは慌てて前を向いた。

胸がうるさい。


(バレてないよね……)


葵は何も言わなかった。

でも。

ほんの少しだけ、ユキを見ていた。

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