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テニサと飲み会

大阪公立大学と関西女子大学の合同テニスサークル。

その日の飲み会は、大学近くの居酒屋で開かれていた。


店の中は騒がしかった。

テーブルをいくつか繋げて、男女が入り混じって座っている。

笑い声とグラスのぶつかる音が絶えず響いていた。


その中で、ナカジマは明らかに浮いていた。

席の端。

頬杖をついたまま、ハイボールをちびちび飲んでいる。

いつもなら、もうとっくに席を移動している時間だ。

目をつけた女の子の隣に座って、適当に距離を詰めている頃だった。

今日はそれがない。

ただ、グラスの氷をストローで回している。

そこへ、サークルの友達が隣に腰を下ろした。


「ナカジマ、お前今日どうした?」


ナカジマは顔を上げない。


「今日はテイクアウトしやんの?」


軽口だった。

ナカジマは片手をひらひら振る。


「あー、今日そういう気分じゃない」


それだけ言って、またハイボールを口に運ぶ。

友達はナカジマの横顔を見て、少し目を細めた。


「どうしたん?」


少し間を置いて言う。


「もしかして例のユキちゃんとなんかあったん?」


その名前が出た瞬間だった。

ナカジマの顔が、わずかに曇る。

ほんの一瞬だけ、動きが止まった。


「……いきなりキス拒否された」


ぼそっと言う。

友達が眉を上げる。


「マジで?」

「ありえんだろ。映画行った時はしたのに」


ナカジマはグラスを見つめたまま、氷をストローでくるくる回した。

カラン、と小さく音が鳴る。

友達は肩をすくめる。


「ま、女の子の気持ちは分からんけどさ」

「普通付き合ってからがいいんじゃね?」


ナカジマは少し黙った。

氷の溶けたハイボールを見つめたまま、短く息を吐く。

それから言う。


「付き合うとかはだるい」

「それにあの子じゃなくても女には困ってない」


テーブルを指先で軽く叩く。


「あくまでやんのが最終目標」


友達が吹き出した。


「うわクズだ」


ナカジマは肩をすくめる。


「一人に縛られたくない」


そう言って、ハイボールをまた一口飲んだ。

そのときだった。

テーブルの反対側から、女の子が声をかけてくる。


「ナカジマくん」


ナカジマがちらっと顔を上げる。

関西女子大学の一年の子だった。

少し酔っているのか、顔が赤い。


「今日なんか静かじゃない?」


そう言って、ナカジマの隣に少し体を寄せる。


「もしよかったらさ」


声を少し落とす。


「二次会一緒に抜けない?」


わかりやすい誘いだった。

友達がニヤニヤする。

ナカジマは一瞬だけその女の子を見る。

それからグラスを持ち上げる。


「あー……」


少しだけ考える。

そして、軽く手を振った。


「今日はいい」


女の子が少し驚いた顔をする。


「え?」


ナカジマは肩をすくめた。


「そんな気分じゃない」


それだけだった。

友達は目を丸くする。


「マジ、珍し」


ナカジマは答えない。

ただグラスの氷を見つめている。

カラン、と氷が鳴った。

ナカジマはふとスマホを取り出す。

画面を開く。


LIME。

ユキのトーク画面。


最後のメッセージは、この前の晩のやり取りのままだ。

ナカジマは数秒それを見て、

何も送らずに画面を閉じた。


「……」


そしてまた、ハイボールを飲んだ。

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