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好きだった幼馴染に消えちゃえと言われた俺は〜〜いまさら好きと言われてももう、あの頃には戻れない  作者: 野良うさぎ(うさこ)


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裏切られてもいいと思える人

 御剣は特に俺に話しかけようとはしなかった。が、手紙のようなものを俺に手渡した。


『この世界には異世界から帰還した人間を保護する組織がある。私は東京神楽坂支部チーム長だ。君をスカウトしにきた。魔力は感じないが、あの異世界で私よりも生き残った能力がある。今なら時給は――』


 有り得そうな話しだった。転移者は腐る程いた。きっとあの異世界だけじゃない、他の異世界から戻ってきた人間もいるんだろうな。


 手紙には続きがあって、簡単に言うと、転移者がこの世界に戻る時、特殊なアラートが鳴るらしい。それは魔力や特殊能力に反応するみたいだ。


 勧誘とはいいつつ、組織に入るかは俺の自由らしい。……駄目だ、絶対に信用できない。組織に入らなくても入っても、俺は自由になれる保証はない。


 それに、気になる言葉もあった。


『私たちの敵である、異世界の魔王どもがこの世界に侵攻している。だから、力を合わせて――』


 これが嫌な予感の正体だ。

 こいつらは魔王の敵だ。あの魔王の事を指しているかわからないが、

 俺は異世界であの魔王が死ぬ時、半分の力をくれてやった。そのおかげかどうかわからない。でも、あの魔王はこの平和な世界にいるんだ。


「やっぱりさ、一年C組白ギャル後輩が最強だよな」

「笑顔が超カワイイよな」

「俺は三年B組黒ギャル先輩だよ……。やばいよ、あのボディ」

「ていうか、身長も超高いしモデルみたいだよな」

「転校生の御剣ちゃんも結構可愛いよ」

「まあ薫子並って所だな」


 言いたい放題だな、おい。人の容姿をランク付けするな。セクハラで訴えられるぞ。


 隣にいた二人の男子生徒は俺の視線に気がついたのか、怯えていた。

「な、なにかな?」

 俺はこの二人から黒ギャル先輩の情報を得ることにした。大丈夫、スキルはつかわない。もちろん尋問用のスキルは持っている。催眠スキルの悪用は絶対に駄目だ。





「……なるほど、黒ギャル先輩は黒瀬真央くろせまおっていうのか。……孤高のギャルとして校内で有名。ヤンキー気質に近い。とても強い。友達はいない。くそ、まともな情報がないな」


 友達か……。俺にも友達といえるような人は――俺は頭を抱えた。




 と、その時、誰かが俺の後ろに立った。柔らかくて温かい手のひらを目に当たられる。


「だーれだ。……ねえ、さっき君はあーしに何を言おうとしたの?」


「ま、まお……う」


「あれ、名前知ってるんだ。うん、黒瀬真央だよ」


 そんなのは匂いでわかった。気配でわかった。だって、あの魔王と同じ匂いがするんだ。それだけで泣きそうになってしまうんだ。


 目隠しされた手が解き放たれる。少しだけ俺は泣いてしまった。


「あれ? やっぱり泣き虫君だね? ……あのね、ちょっと不思議なんだ。あーし、君とどこかで会った事ある? なんかね、ここが疼くの」


 やはりちょっとだけむくれている真央さんが俺の手を自分の心臓に持っていく。真央さんの心臓の鼓動が手に伝わる。

 気がついてしまった。真央さんは異世界での記憶がない。……でも微弱な魔力を感じる。



「あ、あ、その、真央さん。俺、友達いないんです。友達になってくれませんか?」


 そうだ、まずはお友達からだ。突然過ぎて変に思われないか?


「う〜ん、そうだね、お友だち……、うん、あーしとお友だちになろうよ。へへ、じゃあ隣座るね」


「え?」


 俺が座っている椅子の半分をヒップで押して奪う真央さん。濃密な匂いが立ち込める。落ち着くんだ。異世界でも魔王とこの距離感は何度もあった。だから――


 平常心だ。今の俺には平常心が必要だ。当たっている太ももが熱くて意識を集中してしまう。


「そういえば、俺の顔を見てむくれていますよね? なんでですか?」


「あれは別に……、なんかムカついたから。なんでだろ? 今もちょっとムカムカしてるの」


 それは……きっと殺し合ったからだろうな。……なんだろう、こんな平和な時間が俺に訪れるとは思わなかった。


 横目で見える薫子(さっき登校してきた)が何か言いたそうな顔をしていたけど、真央さんが怖くて動けないでいた。


 それと、強烈な魔力をさっきから感じる。

 教壇で誰かと話している御剣。明らかに真央さんを意識していた。そして、御剣の隣にいる白い少女……。


 俺はそいつの魔力を知っている。


 そいつは俺の仲間だった。


 おれが……、刺し違えて殺した聖女だ。


 顎をくいっと向きを変えられた。


「こら、お友だちが話しているのに、違う女の子を見るのは駄目じゃない? あーし、怒っちゃうよ」


「す、すみません。真央さんがあんまりすごく可愛くて緊張しちゃって」


「そ? 君は私の事、変な目で見ないし、偏見なさそうだから興味もったのかな? あのさ、放課後一緒に帰ろ」


「は、はいっ! 喜んで!」


 おかしい、俺はこの世界で二度と誰も信じないと誓った。なのに、俺は運命の人と出会えた気分だ。


 そろそろ休憩時間が終わる。真央さんが席を立つ。俺は見送ろうとしたけど、真央さんは「別にいいよ」っていって、教室を出ようとした。


 俺は自席で見送るだけにした。しつこいと嫌われてしまう。


 と、真央さんは教室を出る時、振り返って手を小さく振ってくれた。俺は初めて真央さんの笑顔を見た。


 脳が沸騰しそうだった。なんだあの可愛い生き物は? 俺は思わず立ち上がっていた。


 真央さんの後を追おうとした二人の女子生徒、御剣と謎の白ギャル(聖女)の前に立ちはだかる。


 俺に小声で囁く。


「蓮夜君、どいてほしいです。あいつは魔王の転生体候補、この世界でいつ悪さするかわからない討伐対象です」

「ええ、そうよ、今朝発覚して、現在調査中よ。調査員じゃないあなたは下がってて」


 俺は聖女の頭と御剣の頭を掴んで持ち上げた


「そういや、御剣は俺をスカウトしたよな? ……残念だがお断りだ」


 二人は持ち上げられ、痛みで悲鳴を上げている。教室が俺の蛮行を驚いた様子で見ている。確かに事情がわからなきゃそう思うよな。


 だがな、今度こそ俺は守るんだ。


「――魔王の敵は俺の敵だ。てめえらのボスにいっておけ。魔王を倒したかったら、まずは俺を倒せってな」


 もう俺は間違わない。今度は俺が魔王の味方になるんだ。――独りぼっちにはもうさせない。


「じゃあな、ちょっと寝てろよ」


 俺は二人に催眠スキルをかけた。二人は教室の床でグースカ寝てしまった。


「ちょっと蓮夜!? あんた何してるのよ! 女の子をいじめないで!」


「違う、違う、アイツラが真央さんをいじめようとしていたから、お仕置きしただけだ」


「そ、そうなの? なら別にいいけど……。あ、あのさ、私さ、蓮夜に話しかけても、その、大丈夫?」


「ん? 幼馴染だろ? 別に構わないよ。ただ、恋愛感情がないだけだ」


「うわぁぁぁぁ!!!」


「幼馴染ちゃんの悲鳴が聞こえたよ! お姉ちゃんが来たから安心して。……クンクン、あの女の匂いがする! もしかして蓮夜と……」


「お姉ちゃん、この倒れている二人の介抱よろしく。俺はちょっと出かけてくわ」


 あいつらは魔王たちと複数形で言った。もしかしたら、真央さんみたいに、何も知らずに怖い目にあっているかも知れない。


 ……なら、俺が全部救う。


 悲しい話なんて二度とゴメンだ――




ここまで読んでくださってありがとうございました!

合間見て書いていましたが、書籍作業をしなければいけなくなったので、こちらは一旦完結とさせていただきます!

最後に★で作品の評価をお願いします!

楽しく書けました!ありがとうございました。

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