表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きだった幼馴染に消えちゃえと言われた俺は〜〜いまさら好きと言われてももう、あの頃には戻れない  作者: 野良うさぎ(うさこ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

幼馴染サイド


「蓮夜!! 蓮夜しっかりして!! お願い死なないで!! お金ならいくらでも払うから!!!」


 大好きだった。私、花山薫子は牧島蓮夜の事が大好きだった。緊急搬送された蓮夜は意識不明の重体だった。


 わたしは血だらけのスニーカーを抱きしめながら、呆然と虚空を眺めていた。


 もしも手術が成功したとしても、身体と脳に障害を負う。そう言われた。


 待合室のベンチで一人待つ。気がついたら自分の爪を噛んでいた。血が出ているのに気が付かなかった。頭が沸騰して、おかしくなりそう。


 蓮夜の両親は連絡がつかなかった。お姉さんはすぐに駆けつけると言ってくれた。


「蓮夜……、私が消えちゃえっていったから……弱いくせに、私を庇って……」


 全部自分のせいに思えた。蓮夜はわたしと出会ったからこんな目に会ってしまったんだ。


 私にとって蓮夜が全てだった。あの日、蓮夜と公園で出会った。私は年上の女子にいじめられていた。『い、いじめは良くないよ! やめて!』といって蓮夜が私を守ってくれた。


 一目惚れだった。あの日の蓮夜の姿が昨日のように思い出せる。蓮夜は頭も良くて、運動も出来て、スタイルもよくて私の理想の王子さまだった。


 でも……、小学校にあがって、蓮夜はなんだか冴えなくなっていった。

 それはわたしの見る目がなかっただけなんだ。


 蓮夜は本当は頭が良いのに、親から馬鹿だって言われてて、自分の事を馬鹿だと思っていた。


「蓮夜……、私が馬鹿だった。蓮夜がいない世界なんて信じられない……」


 蓮夜の行動はチグハグしていた。クラスメイトはそんな蓮夜を冗談で馬鹿にする。

 好きな男の子がバカにされるとムカつく。でもそれ以上に、ヘラヘラしている蓮夜が嫌だった。だから、私は蓮夜に強くなってほしかった。


 でも、だんだんと蓮夜に対して雑に扱うのが慣れてしまって……、頭では分かっていたのに止められなくなっていた。


 蓮夜は昔、私の事を好きといってくれた。だから、それを免罪符にして私はわがままし放題だった。


「はぁはぁはぁ……、薫子ちゃん! 蓮夜……、死んじゃうの? わ、私が、プロレスごっこしなくなったから?」


 蓮夜のお姉ちゃんは、自分の家族が大嫌いだ。いつか、蓮夜を連れて家を出る、いつもそう言っている。でも、私と一緒で蓮夜に対してどうしても素直になれない。


 私たちは昨日重要な作戦会議をした。


 今日から私たちは、蓮夜に素直になって、好き好きアピールをして、幸せになってほしかった。

 なのに――なのに……


「ひっぐっ……蓮夜……。私がバカだったよ。もっと、早く……、私が……」

「そんな事ないです……。私が、調子にのって、素直になれなくて……」



 後悔。その言葉だけが頭に浮かんでしまう。

 倒れた蓮夜は血だらけのスニーカーを見つめていた。それを思い出してしまうと――


 自分の中の何かが音を立てて崩れ去っていった。



 ***



 私とお姉ちゃんは医者の言葉を聞いて、どんな顔をしていいかわからなかった。


 ――蓮夜が意識を取り戻す事は二度とない。


 命は助かったけど、もう二度と動かない。足が震えて動けなかった。でも、私は蓮夜に謝りたい。あの時、私が公園に誘っていなければ。私がもっと早く正式なカップルになるための告白をできれば……。


 わたしはベッドの上にいる蓮夜の顔を見ようとしたら――


「蓮夜……!! ……え? 目があいている?」


 自分の脳がおかしくなったと思った。でも、お姉ちゃんも蓮夜を見て腰から崩れ落ちた。

 蓮夜の目が開いている!!!


「蓮夜、私だよ。わかる? 蓮夜の事が大好きな花山薫子だよ!!」


 蓮夜は上半身だけ、ムクリと起き上がり、私を見つめた。




「………………すみません、どなたですか?」




 ハンマーで殴られたような衝撃が頭に襲いかかった。冗談を言っている仕草じゃない。蓮夜は……私の事……わすれて……。


 口から血の味がした。込み上げてきた後悔を噛み締めて、私は、自分を殺したかった……。




応援をお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ