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小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第一章 みんな星々のかけら

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2 旅に出よう


 そうして、カラクは銀龍であるイトラ、金獅子のレフの四天王二人を仲間にした。


「ほかの魔族たちは皆、死んでしまったの?」

「いいえ、魔王様。死んだ者もおりますが、逃げた者の方が多く、皆、散り散りとなっております」

「俺は死んだ時のことをよく覚えてない。小さいせいなのかな?」


 地面に下ろしてもらったカラクは、イトラを見上げながら問いかける。


「いいえ、魔王様。元の魔王様を基本とはしておりますが、異世界人の発案した料理の味噌汁でいうと、元の魔王様は煮干しの一欠片のようなもの。そこらへんの人間の死体も、いわば豆腐やネギとして活用しておりますので、貴方様はもう唯一無二の貴方様、味噌汁なのです」


(そういえばたまに落っこちてきた異世界人がいたような……けれど味噌汁に例えるのはどうかと思う……煮干し)


「そう……じゃあ、他の魔族たちを探す旅に出よう!」


 カラクが思いついて意気揚々と声を上げると、イトラは嫌そうに顔を顰めた。


「魔王様。私以外はそこの獣のような脳筋か、頭のおかしな連中ばかり。二人っきりで永遠に暮らしましょう」

「てめーっ、誰が脳筋だ? 性悪の爬虫類女が!! だが、正直、魔王様に釣り合うヤツが俺以外いないのは確かだ!」


 言い争う二人に対し、カラクはぽつりと言った。


「皆に会いたいの」


「わかりました!」

「任せておけ!」


 うるうるの眼をしたカラクの願い事には二人とも敵わず、力強く言い切ったのだった。



「俺が小さいのは蘇ったせい? 材料が足りなかった?」


(そのへんの人間の死体とか、物騒な言葉が聞こえていたけれど……)


「いえ……おそらく魔力不足かと。少しずつ自然回復するかとは思いますが、これを」


 イトラにそう言って渡されたのは、黒々とした黒真珠のようなたまである。


「それは魔力を吸収しやすい性質のある貴重な黒魔石です。この石が自然界から自然に魔力を集めますので、貯まれば割って魔力を吸収してください」

「すぐに大きくなれる?」

「ええ! 魔王様であれぱきっと……だが、今のいとけないお姿も惜しい……だが、大きく成長した際は我が伴侶に……」

「イトラ?」


 ぶつぶつ小さな声で独り言を呟き出したイトラにカラクは声を掛ける。


「っ!? はっ! 必ずやその黒魔石がお望みの姿に成長することの助けとなるでしょう! 同胞を探す旅に出るのなら魔力の多い地へと向かいましょう。その方がより魔力を吸収しますので」 


 はっとした様子のイトラは慌てて真面目な顔をつくり、指をある方角へ指し示した。


「そう。では、しゅっぱーつ!!」


 そうして、カラクはイトラとレフを伴として旅を始めたのだった。カラクはとてとてと自らの足で歩き出す。しかし、幼児の歩幅は小さく、魔王とはいえ、体力も幼児並み。すぐに疲れてきてしまった。足も痛くなり涙目になっていると、レフがポンっと黄金獅子の姿に変わる。


「魔王様。どうぞ、俺の背中に。この森などあっという間に駆け抜け好きな場所へ連れ行くぜ!」

「ふぁっ……綺麗な毛皮。お日様の色なの」

「っ!? 魔王様!? それならば、私の背にこそぜひ! 瞬く間に空を翔け抜け望みの地へとたどり着きましょう」


 イトラもポンっと銀色の輝く鱗を持つ美しい龍へと姿を変える。


「ふぁっ!! ……龍なんてかっこよすぎるよ」


 イトラはふんっと横目でレフを眺め鼻で嗤う。獅子と龍は睨み合っている。


「じゃあ、まずはレフに乗せてー」


 がくりと肩を落としたイトラは人型の姿に戻って、とぼとぼと後をついてくるので、カラクは一生懸命、龍姿の素晴らしさを褒めながら後で必ず乗ると約束したのだった。


「ねえねえ、イトラにレフ」

「いかがしました? 魔王様」

「なんだ? 魔王様」

「魔王様じゃなくカラクって呼んでよ」


 カラクのお願いに、イトラとレフは困ったように言葉を探している。


「お願い。魔王なんて実感がないし、カラクって呼んでもらえたらもっと仲良くなれると思うの」

「くっ」

「はうっ」


 しばらく身悶えしていた二人は、何とか頷いてくれたのだった。


 森の中をレフに跨りながら、てくてくと軽快に歩いて行く。森はぽかぽかと陽気に満ちていた。頬に木漏れ日があたり、レフから伝わる暖かさも心地よい。カラクは思わずうとうとしそうになった。


 すると、少し先からざわめきが聞こえてくる。レフは耳をぱたぱたと動かし、警戒したように毛を逆立てる。


「カラク。何か騒ぎが起きている。避けようか?」

「うーん、何が起きているかこっそり見に行こー」


ざわめく不穏な喧騒に近付いていくと、木立の隙間に何人もの兵士たちと連行されている獣人が見えた。


「どうやら人間たちが獣人を捕らえているようですね。気づかれない内に避けて通りましょう」

「待って……なぜ捕らえているの?」

「このあたりの領主は獣人嫌いだと聞いたことがありますが……」


 カラクは連行されていく人々を見つめる。その中に怯えて耳と尻尾を垂らした、小さな猫の獣人のよく似た姉弟だろう子供たちがいた。


 子供たちがよろよろと歩いていると、弟が木の根につまずきそのまま転んだ。兵士が遅れている子供たちに舌打ちし、手に持った鞭をしならせ近寄っていく。


「助けてあげられないかな?」

「我が主の望みであれば」

「何でも叶えてやる」


 そう言ってイトラとレフは一行の前に進み出た。それに気付いた兵士達が驚いて剣を引き抜く。


「我が主に血腥ちなまぐさいものは見せたくない。雑魚どもよ。去れ!!」

「食っちまっても良いが、楽に死ねると思うなよ」


 イトラが指先一つを振ると、鋭い風が大きな側の樹に吹き付ける。樹は輪切りになってただの薪となった。レフは身体を小山のようにみるみる大きくさせ、牙を剥き唸った。大地が揺れる。


 それを見た兵士たちは震え上がり、我先にと逃げ出していく。カラクはとことこ歩いて小さな獣人の姉弟に近づいた。


「もう大丈夫」


カラクは人間と獣人の事情はなにもわからない。けれど、まだ幼い猫耳の姉弟たちが縄に繋がれ歩かされているのをただイヤだと思ったのだった。


「ありがとう」

「あーがとー」


 金色の耳をピクピクさせて翡翠色の目を上目遣いに姉が言うのに、真似をして弟も言う。


「うん」


 そうして獣人たちを行きがかりで助ける事になったカラクは彼等の村へと招かれた。







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