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小さな魔王は皆の推しになりました  作者: 光流
第二章 神々のサイコロ

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13 向かう先は


『ありがとうございました』


 木霊たちが一列に横並びになり、ペコリと礼をする。それから、木霊の小さな頭と変わらない大きさの白魔石をよいしょっよいしょっと渡される。この地の神は既にこの場には顕現していない。だが、神は目覚め、祟りもなく万事収まったのだった。


『この地の神は目覚められた。この地は恩恵を受け、繁栄していくことでしょう。あなたがたのおかげです』

「良かったの。この場所はとても綺麗なの」


 また、小さな姿に戻ってしまったカラクは、嬉しげにそう言うと笑った。その姿は、成長しつつあった前よりも小さくなって、魔法陣から出てきたばかりの頃の姿に戻ってしまっていた。


「私も貴方がたには大きな恩ができた。何か助けが必要な際は言ってくれ。子孫にも伝えていくよ」


 仮面をとったラスカ王は、真摯な目をしてそう言った。人々は既に家に返され、護衛の兵士のみ側で控えている。黒焔王も、ラスカ王の隣に立っている。ためらいながらも、カラクを見て口を開いた。


「俺の行動で取り返しのつかないことになる所だった。ありがとう。貴方という存在がここに現れたのは、二国の民にとって僥倖ぎょうこうなのだと思う。これまでのことを忘れる訳ではないが、これからのためによく話し合って歩んでいきたい」


 そう言って黒焔王は、苦笑いするとラスカ王を見つめ眩しげに目を細めた。


「うむ。私もこの真心が伝わるよう励もう。もう、隠しごとは何もない。神が話されたように、早く婚姻して子孫をつくろう」


 ラスカ王は真っ赤な短髪をかき上げていたずらっぽく笑った。その笑顔は美しく、中性的でありながらも色気を感じさせる。


「お、お前のその臆面のなさはなんとかならないのか!? 恥じらいというものを知れ!」

「そうか……それがお前の好みなのであれば、無いものもあるように見せかけよう」

「ふふふっ! 仲良しなの!!」


 カラクは言い合いをする二人を見て、大丈夫そうだと安心して笑った。黒焔王はその笑い声を聞き、苦笑してカラクたち一行を送り出した。花畑は来たときと変わらず、美しく咲き誇っている。二人の王とそのお付きの人々は、その姿が見えなくなるまでじっと一行を見送っていた。



 とてとてカラクが歩き出すと、イトラがまじまじとカラクを見て戸惑いの眼差しを向けるも、言葉を出しあぐねている。山王も気付き、単刀直入に問いかけた。


「カラク。祭りの前よりも縮んでへんか?」

「ふぇっ!?」

「話し方も、ついこの前よりも幼くなっている気がするが……」


 レフも申し訳なさそうな微妙な表情をして言葉を付け加える。


「構わぬ構わぬ。可愛いぞ、カラク! 妾はいつまでもそなたが大きくなるのを待てるのだ」

「ええ、カラク。そのいとけない、可愛らしい姿もとても魅力的です」


 饕餮とイトラは、フォローなのか本心なのかそう言うと、カラクを見て微笑む。


「いやなのー! せっかく大きくなっても力を使って縮んでいくとその内なくなるのー!」


 カラクは赤ん坊になった自分を想像して、ぞっとして叫ぶ。


「これまでも時間が経つにつれ、徐々に通常よりも早く成長していたと思います。生まれ変わったばかりの姿に戻っただけです。それほど心配はないでしょう。しかし、どうしてもというのであれば、膨大な魔力を持っていたあの者を頼ると良いかもしれません……」

「あいつか!?」


 ためらいがちに話すイトラに対し、イフは嫌そうに顔をしかめた。


「だれのこと?」


 カラクはこてんと首を傾げだ。昔の記憶はおぼろげで思い当たらない。


「我々四天王の一人、アシュラ。覚えてはいらっしゃいませんか?」

「うーん?」


 カラクはふと、笑いながら触手を振り回し、拳を振りかざして殴り掛かってくる男の姿が脳裏に浮かんだ気がした。


「こ、こわい人!?」

「いや、あいつは戦闘狂のただの馬鹿だ」

「ふっ、脳筋が何を言うか」


 苦虫を噛み潰したように、レフが言うと、イトラが鼻で嗤う。


「やっぱりこわい人なのー!」

「しかし、あの者は魔力が多く、恐らく黒魔石にすぐに魔力を貯めることができるでしょう」


 こうして、一行の次に向かう先が決まったのであった。




 一人の男が丸太の上の薪に斧を打ち付けて、割っている。長身で鍛え抜かれた身体をしており、薪を割る姿は、その作業がいとも容易いように見える。無造作に伸ばされた白髪はボサボサで、白い髭によって顔立ちも隠れてしまっていた。


「山番さん。食料を持ってきましたよ」


 近くの村から、配達人である佐川さがわが定期便を持ってきて、その男に声をかけた。佐川はずっと配達の仕事をしており、50の歳になった。昔から動じない性格だったが、この歳になってますますどのような相手にも、物怖じせず接することができるようになった。


「いやー、暖かくなってきましたね。この間も、祭りがあったみたいで」


 佐川はお喋りで、山の管理人のような仕事をしているその男にいつも一方的に話し掛けていた。この男の名は知らない。ある日、ふらっと現れて、森の魔物や魔獣を退治したことで、山小屋の管理を村人たちから任されることとなったのである。


 名前を聞いても何も答えないため、佐川はいつの頃からか山番さんと呼ぶことにしていた。


「私の嫁の親戚から聞いた話なんですが……その祭りで魔王が現れたそうで。魔王は勇者志伯しはくに倒されたんじゃなかったんですかね?」


 よいしょっと、山小屋の机の上に荷物を乗せ、振り返ると、すぐ目の前に山番が立っていて、佐川はぎょっとした。


「……だ」

「えっ?」

「……魔王が現れたという場所はどこだ?」


 初めて佐川に対して言葉を発した男、志伯は緑の瞳に力を込めて、遠くを睨みつけた。






 

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