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ふたりのラプソディ  作者: ほしまいこ
第四章 別れと始まり
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第四節 新しい仕事

新しい仕事をアサインされ、今後を考えるふたりです。

✳︎R15の表現が含まれています


第一話 セキュリティ庁にて

<アダンの驚き: 新しい仕事>


「え、監視センターですか?」


山口転勤を断った俺に突きつけられた人事は、国の重要システムの監視を24時間体制で行うセンター勤務だった。俺は主にシステムインシデント内容の精緻化と、次々と発生する新たなハッキングや新しいサイバー攻撃への対処の企画だ。


それに加えて、二直勤務のオペレーターの健康状況も医師として担当する。


やりがいのある仕事ではあるが、守りの側面が強い保守的な業務内容だ。


俺は自分の気持ちを整理するため、カフェのある休憩室へ向かった。

温かいコーヒーを飲みながら考えた。


今回の辞令は、国の心臓部分を守る役割がある。セキュリティもかなり強固だ。


とは言え、勤務体系は深夜に渡ることもあり、急のインシデント対応もあるはずだ。現場の最先端の守りの要といったところだろう。


若い頃とは違い、深夜に仕事に向かうこと、常に呼び出しの携帯連絡のある職場は体力がいる。


プログラミングや開発企画、規定まわりとは随分と違う。つまり、3年間の出向経験が活かされなかったとも言えるし、新たなステージを用意してもらったとも言える。


要は、俺がこの仕事をやりたいかどうかだ。


椎名の顔が浮かんだ。

俺は、椎名との時間を大切にしたい。

これからは国の心臓を守るのではなく、椎名の心臓を守りたい。


俺は心を決めて、自席に戻るため席を立った。

まずは、久々の自席の机を整理しないと。どちらを選んでも、近いうちに使わなくなるけどな。



第二話 抱擁

<椎名の優しさ: 恋人への想い>


アダンから簡単にメール報告を受けていた。


家で話し合おうとなっていたが、俺は帰宅までの時間にほぼ答えを出していた。恐らくアダンの答えも同じだろう。


「イチコ、ご飯先に食べちゃって。アダンはそろそろ帰ってくるから窓の外見るのは後でな」


2階の窓から玄関あたりを見て、アダンの帰宅を心待ちにするのがイチコの習慣だ。


イチコを抱え上げると、ニャーンと嫌がる声を上げた。黒くフサフサの毛が少し立ち上がり、金色の目が俺を睨む。

俺はイチコとキッチンに向かった。



「ただいま!イチコ、ご飯食べたか?ヒゲに何かついてるぞ」


アダンは玄関まで走って行ったイチコを抱き上げ、頬ずりしながらリビングに入ってきた。


俺の手料理を見て、ふわりと微笑む。

俺たちは木曜日の夕食を一緒に食べた。

アダンの落ち着いた表情に、俺は少し安堵した。食後に話し合おうと言うと、アダンはこくりと頷いた。


食器を洗う間、アダンに風呂を勧めた。

アダンはそうだな、と頷き、お風呂沸かすと言って足元をぐるぐるしていたイチコとバスルームに向かった。


なかなか戻って来ないのでバスルームに見に行くと、イチコを胸に抱えて座り込んで目をつぶっている。


「アダン、どうした?大丈夫か?」


声をかけると薄っすら目をあけた。

何でも、イチコが風呂に入りたいとただをこねるので、簡単に洗ってあげたそうだ。

猫は寒がりなので、アダンは胸にイチコ抱えて温めていた訳だ。その時に少し眠たくなって座り込んでいたらしい。


「風呂はもう湧いているから、入っておいで。イチコは俺が預かるから」


イチコは少し湿っているが、タオルドライでかなり乾いたようだ。ニャ!っと声をあげてリビングに走って行った。


俺はお湯の温度をチェックしバスルームを出ようとすると、アダンが後ろから抱きついてきて囁いた。


「椎名も入ろう?今日は色々と目処が立って、ほっとしたんだ」


振り向くと、熱を帯びた瞳と目が合った。先ほどまでの眠たげな子供のような表情は消えている。


厚い唇が軽く開いて、物欲しそうに俺の返事を待っている。寝起きなのは分かるが、かなり小悪魔だろ。


返事の代わりに服を脱ぎ捨て、シャワーでアダンと自分を濡らしながら何度も激しくキスをした。

長めの前髪から白いおでこを出し、俺の首に手を回してきた。何処でこんなことを覚えたんだ。


時間をかけてあげたかったが、俺の理性は限界で、シャワーを止めてアダンを抱きしめた。

俺は首筋に舌を這わせ、耳たぶを軽く噛んだ…


身体を清めてタオルで包み、布団でパジャマを着せた。アダンは安心しきって目を閉じている。

俺は部屋の灯りを消して、隣にそっと横たわった。


「しいな?ごめん世話ばっかりかけて」


目が覚めたのか、アダンは薄目を開けて俺の首に縋りついてきた。

帰任したてで疲れているのに加えて、俺は手加減もなく激しくし過ぎた。気にしないでと額にキスを落とした。


アダンは更に身体を密着させてバスルームではできなかったキスを催促してくる。

困ったな。俺はまだ元気だしな…


「アダン、キスはおでこで我慢して。これ以上したらまた制御できない」


アダンは薄目を開けて、それで良いよと呟いた。

「明日は残業しないから。もっと椎名が欲しいよ」


少し迷ったが、許しを得たので俺はアダンを強く抱きしめて、唇を貪った。

気持ち良すぎて気が遠くなりそうだ。

額から汗が滴り、アダンの顔を濡らす。


涙を浮かべたシャンタングレーの瞳は、憂いを帯びて水々しく潤んでいる。半開きの唇は赤く、舌が口付けを待つかのように俺を誘う。


俺たちはその夜は結局、今後のことを話し合えずにお互いを貪りあった。

これからは、2人の時間はまだまだある。

いま、刹那的に触れ合うことを優先したい。


眠りに落ちたアダンを胸に抱き寄せ、俺はその温もりと快楽の気だるさに幸せを感じて目を閉じた。


スヤスヤと規則正しい呼吸が夜の闇に溶け込んだ。


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