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ふたりのラプソディ  作者: ほしまいこ
第三章 恋人と恋敵
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第四節 恋人の提案

恋敵の執着と、これからに向けた2人の新しい決断編となります。

*R15の表現があります。


第一話 嫉妬心

<椎名の懸念: 恋敵の瞳>


今日はプロジェクトのリリースを正式に承認をもらうため、事前の報告を部内と社内関係者に行う。


そのための資料は既にできているが、昨夜、アダンが指摘した補足資料の準備を朝一で行った。


これで準備万端だ。よし。俺は自分に気合いを入れた。


「以上が、今回のプロジェクトの概要と年間収益計画です。規約の件は、資料にお示しのとおり、当社の不利益になる懸念点は解消できております」


関係者からは特に指摘事項もなく、報告会は順調に終わろうとしていた。


質問もなく、会議を終えようとした時、おもむろに安西さんが挙手をした。


「今回のリスクについての関連するルール確認ですが、顧客情報管理は大丈夫なのでしょうか?今回の規約だけでは管理方法に懸念があります。商品化するに当たって、無理があるのではないですか?」


昨日、アダンが指摘したリスクオーナーシップの補足についての事を指摘している。朝一でアダンが準備をしてくれた資料が役に立ちそうだ。


「それに関しては、ビジネスの収益化機会だけではなく、リスクオーナーシップ、つまりリスクについての関連するルールの顧客情報管理と業務範囲規制について考慮済みです。

補足資料を準備いたしましたので、ご説明いたします」


俺は段取り通り説明をはじめた。


安西さんはこれ以上の指摘が見つからないのだろう、会議は追加質問もなくクローズとなった。



会議室を出てカフェに向かいながら、俺はアダンにお礼を言った。

今回、無事にリリースできたのはアダンの功績が大きい。


カフェでコーヒーを渡しながら、俺はアダンの昨夜の的を得たアドバイスの礼を言った。

アダンはいやいやとまた謙遜している。


「これでホッとしたよ。出向明けまであと数日だけど、これで安心して帰任できる。あとは自分の処遇を考えないとな。

転勤の件は既に上司に断りを入れたので、今後はセキュリティ庁での処遇がどうなるかだけど、一旦はこの3年間の業務も評価されるだろうから、悪いようにはならないと思う。

いずれにしてもお前の側にいるよ」


アダンはニコリと笑ってコーヒーを飲み、俺を見上げた。


シャンタングレーの瞳が美しく、つい手を伸ばしそうになるが、オフィスなので自制した。



アダンと別れオフィスに戻る途中、不意に安西さんに呼び止められた。


「椎名さん、良かったですね」


その目は笑顔で繕っているが、剣のように鋭い感情を隠しているのが分かる。


こちらからもアダンの件もあり、声を掛けようと思っていたので好都合だ。


「プロジェクトの件でしょうか?今回の会議で承認を頂きましたので、最終的に経営会議にかけさせて頂きます。この度はサポート頂きありがとうございました」


まだサポートをもらうほど一緒に仕事をしていないが、アダンの引継ぎ担当なので一応、お礼を述べた。


安西さんは一瞬、面白くなさそうな顔をしたが、すぐに繕って頭を下げて踵を返した。


何だか嫌な予感がする。

今日もアダンを送って帰ろうと、俺は独りごちた。


・・・・・


「椎名、お疲れ。俺、そろそろ帰るな。今日は残業?無理するなよ」


アダンは帰り際に声をかけてきた。


「いや、もう帰るよ。一緒に帰ろう」


ちょうどアダンに連絡を入れようと思っていた。


一緒に会社を出て、俺は安西さんのことが気になり、アダンを一人で帰すのが心配だと伝えた。


「アダン、今日も家まで送っていいか?あの人…安西さんの執着のある態度が不安だ。お前が襲われたりしないかって。当面、俺がお前を守ってやらないとと思うんだ」


アダンはやはり不安だったのか、黙って頷いた。


アダンは立派な成人男性だが、華奢な体型のため、大柄な安西さんのような男性には敵わないだろう。


「じゃあさ、よかったら…今日、泊まってくれないか?

実はさっき手を掴まれてさ、椎名だけは許さないとか言ってきて、なんか怖くてさ。あいつ勘づいたんだな」


俺は思わずアダンの手首を引き寄せて見た。

掴まれた跡は付いてないようだ。


「わかった。俺の家に行って服取ってからタクシーでお前の家に行こう。行こう」


急いで家に帰り、荷物をまとめてタクシーでアダンの家に行った。

週末はデートの予定だったが、身の安全を考えたら甘い思いはどこかに飛んでしまった。


アダンはホッとした顔をして、タクシーの中で俺の肩に頭をもたげた。



第二話 守ること

<椎名の大切: 恋人との時間>


イチコは一目散に俺に向かって走ってきた。

黒く長い毛並みに金色の目を輝かせ、犬のように小尻を立てて走ってくる姿は、まるで久しぶりの恋人との再会のようだ。そして、少しアダンに似ている。飼い主に似たようだ。


「イチコ、良い子だったか?少し会えなかったなけど、ご飯はきちんと食べてるか?」


まるで頷くような表情で、ナーンと返事をする。すっかり気に入られたようだ。


「こら、イチコ。椎名は俺の恋人だ。お前はベタベタしちゃダメだぞ。もう、膝に乗るなよ。離れろよ」


アダンは大人げなく、イチコと俺を取り合っている。何だかちょっとした三角関係のようで、微笑ましい。5分ほどこんなやり取りが続いた。


スーツのジャケットを脱ぎ、ソファに腰掛けた。


アダンの家は寛ぎの時間しか流れていないかのように、ゆっくりと俺を癒してくれる。

俺はソファに身体を沈めた。


パタパタ音がして、部屋着や布団の準備をしていたアダンが3階から降りてきた。

アダンは薄ブルーの綿の部屋着に着替え、すっかり自宅での安心しきった顔をしている。


「安西さん、このまま何もしないとは思えないな。俺がが帰任したら、頃合いを見て他の担当者へ仕事を引き継ぐんだと思う。俺の担当は今回のリリースでいったん完了になるので、本当は今いるメンバー内での引き続きで十分なはずだしな。

せめて、椎名のリリースの邪魔をしないと良いんだけど」


アダンは心配そうにカーテンを少し開け、外をチラリと見た。家の近くまで安西さんが来たことをまだ怖がっているようだ。


「軽い軽食と飲み物を3階に用意するから、椎名は風呂に入ってこいよ。もうお湯が溜まったと思う。ゆっくりしてきて、まだ9時だし。

あ、こらイチコ、お前は風呂に入っちゃダメ。椎名に着いていくな」


イチコは結局は、風呂の扉の前で、座って俺を待っていた。時折、ナオーンと呼び声が聞こえてくる。


風呂から上がって少しイチコと遊んであげた。でも高齢のせいか、途中で眠たくなったようで、電気が切れたように自分のベット、猫用の小さなベットに入って寝始めた。

割と大きめのイビキが聞こえる。この家は平和だな。俺は平日の夜に久しぶりに寛いでいる自分を感じた。



・・・・・



風呂から上がったアダンが、イチコの寝顔を見て微笑む。いつも2人で長いことこんな風に寄り添って生きてきたんだろうな。


「椎名、3階行こう。イチコのイビキ、この後もっと大きくなるぞ」


2人で笑って3階に行き、ソファに座ってお茶と軽食をつまんだ。アダンのことが心配で泊まることにしたが、正直、何もしない自信はない。


「今日は三日月だな。先週が新月だったから、また2人で満月見れると良いな。ねぇ、椎名、今の家って賃貸だよね?いつ更新?」


アダンが俺の肩に頭を置いて聞いてきた。


確かそろそろ更新かな、俺は答えた。

今の家は入社が決まってから住んでいるので、もう随分と長い。


「よかったらなんだけど…俺の家に住まない?一人じゃ広すぎるし、椎名と暮らしてみたい。

転勤は断るよ。昇進に興味ないし、椎名のいない山口には今は行きたくない。仕事のことは、それからゆっくり考えることにするよ」


俺はアダンの申し出が素直に嬉しかった。

今回のような心配事もあるし、お互い家族と疎遠で近しい人もいない。

何より、恋人と暮らせることが嬉しかった。


「良いのか?俺は嬉しい。荷物はもともと少ないし、捨てて良いものが多いから、処分も簡単だし。

ただ、一緒に住むなら、家賃や光熱費は今と同じ額を出す。それと食費は俺もちにしてくれ。あと、家事の分担もな」


アダンはふはは、と笑って、椎名は真面目だなと言った。そもそも家賃は俺だって払ってないのに、と。


「椎名、お金のことはまた相談しよう。2人で住むなら2人名義で貯金もしたいし、ゆっくり考えよう。でもありがとう、椎名は誠実だよな」


「固定資産税とか高いだろ、この辺りは。いいから、お金のことはきちんとさせてくれ。

でも、嬉しいな。アダンと暮らすなんて。俺、身体持つかな」


アダンがキョトンとして、どうして?とウブな事を言う。



俺は身体で分からせた方が良いと判断して、アダンを抱き上げてベットに運び、優しく押し倒した。

そして身体を組み敷いてのしかかり、キスを繰り返した。


「んん、椎名…激しい。どうしたの?今日はそんなに飲んでないのに。ゆっくりしよう?」


俺に一番難しい要求を突きつけてくる。まだ、こういった事には順番があると信じているようだ。


「アダン、俺を見てゆっくり出来そうな余裕あると思う?今日もごめん、余裕ない。嫌だったら今言って」


アダンは困ったように微笑んで、椎名の好きにして、と耳元で囁いた。



俺は部屋着を脱ぎ、アダンにキスを繰り返しながら服を取り払っていった。


アダンの白い肌と髪が乱れておでこが丸見えの状態だ。恥ずかしさから頬を赤らめ、耳まで熱を帯びている。


俺は首からゆっくりと唇を這わせ、そのまま下に移り唇と舌で堪能した。


「椎名、そんなこと恥ずかしい」


アダンはしばらくか弱い抵抗を繰り返したが、そのうち快楽に飲み込まれたのか、涙に潤んだ目を俺にむける。


俺は脳が擦り切れそうになり、アダンにのしかかった。うっすらと目を開けたアダンは、俺の首に手を回して、気持ちいいと囁く。


やばい、気持ち良すぎる。。


アダンは互いの汗で濡れた顔で、下から優しく俺を抱き寄せる。


「しいな、気持ちいい。。すごく幸せ。ねぇ、他にも色々教えて」


俺は後ろから優しく背中にキスをした。アダンと俺の声が重なり、再び2人でシーツに沈んだ。


アダンと共に呼吸が整うまで抱き締めあい、意識が戻ってきてから、何度も口付けを交わした。



月が真上に来て、部屋がわずかに明るくなった。

アダンの白い顔が、青白く夜の空間に映え、金色に反射した瞳が、俺を愛おしく見つめている。


俺は幸せを強く感じて、アダンの額にキスを落とし、程なくして意識を手放した。


遠くから、アダンがお休みと言う声が小さく優しく聞こえた。


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