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ふたりのラプソディ  作者: ほしまいこ
第三章 恋人と恋敵
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第三節 執拗な同僚

付き合って間もない2人に訪れる危機編です。

上手く行くことと行かないことに、初めて直面する2人です。

第一話 ふたりの朝食

<椎名の朝食: 恋人との朝>


「おはよう、椎名。よく眠れた?」


耳元でアダンの可愛い声がする。

俺の前髪が揺れる。どうやら、俺の前髪を優しく梳っているようだ。


俺はどうやら、深い眠りに落ちていたらしい。


目をショボショボ開けると、アダンの笑顔があった。ハッとして、思わずアダンの手を掴んだ。


「身体、辛くないか?その、、初めてなのに俺、余裕なくて加減してあげれなかったから。痛いとこないか?」


アダンはふわっと笑って、シャンタングレーの瞳を柔らかく細めた。瞳は、朝日を浴びて金色に輝いている。


「大丈夫だよ、お前優しかったから、全然痛くない。ちょっと身体がだるいだけ、平気。

そうだ、キッチン借りたぞ。腹減ってるだろ?朝ごはん、食べよう!」


アダンは元気にベットから降りて、畳んだ部屋着を渡してくれた。


起き上がってみて、俺は自分が裸のことに気づいた。アダンは俺の姿を見て急に恥ずかしくなったのか、キッチンに行ってしまった。


食卓テーブルには、パンと卵焼きのモーニングが、ミルクを添えて用意されていた。


「ごめん、勝手に冷蔵庫のもの使わせてもらった。簡単なメニューだけど。お腹空いてるだろ?コーヒーは俺は上手く淹れられないから、ミルクにした。コーヒーはあとで教えて、んん…」


身体がだるいのに、俺の黒いエプロンをつけてモーニングを作ったかと思うと、愛おしくてアダンを抱き寄せてキスしてしまった。

まるで新婚の朝だな、と思いつつもやめられない。


アダンは真っ赤になって、心臓に悪いからと俺から離れた。何だか初々しくて可愛い。


「朝ごはん、ありがとう。もう9時なんだな。起きられなくてごめんな。俺、確かにお腹空いてた。昨日、ちょっと緊張したし、その…」


アダンは破顔して、椎名は可愛いな、と言って笑った。



恋人になって初めての朝ごはんは穏やかで、今までも2人は恋人だったと錯覚するほどだ。


食後にコーヒーを淹れ、アダンとソファで寛いだ。


「ねぇ、椎名、俺とその、、一晩過ごして、嫌になった?それとも付き合うでいい?」


アダンはまだ気にしていたらしい。

俺は今回のことで、全く問題ないし、むしろそそられる事を確信していた。

昨夜、身体で示したつもりだったが、アダンには伝わっていなかったらしい。


「ごめん、きちんと言葉にしてなかったな。告白したし、分かってもらったと思ってた。

改めて、俺と付き合ってくれないか?俺、アダンのことが好き過ぎて、おかしくなりそうだ」


アダンは緊張がほぐれたのか、ようやくふわっと笑い、俺に抱きついてきた。

そして、良かった、とつぶやく。


そして安心したのか、コーヒーを美味しそうに飲みはじめた。


朝日を浴びたアダンの横顔は透明で、俺が昨夜に吸いすぎた唇はいつも以上に赤く、色気が増していた。


それに昨夜の情事の後もあり、髪はいつも以上に跳ねていて、しどけなさに拍車をかけている。


俺は飲みかけのコーヒーをサイドテーブルに置いて、恋人になったアダンの額にキスを落とした。


そして、アダンの跳ねた髪を触りながら、

「髪、伸びたな。後でカットするよ」と囁いた。




第二話 嫉妬心

<椎名の懸念: 恋人の同僚>


週末が開けた火曜日、俺は相変わらず忙しく仕事に追われていた。ただ、身体と心はスッキリと晴れ渡っている。


恋人がいるって良いな、俺は少し浮かれていた。



会議後にオフィスに戻る途中、セキュリティ庁から出向の安西さんに声をかけられた。


「椎名さん、少しだけお話しできますか?」


その目つきは相変わらず鋭く、俺のことをよく思っていない事が明らかだ。


俺は、はいと頷いた。


安西さんは規約について問題はなかったかなど、先日のアダンとの打合せ内容を気にしていた。


問題点は解消できた旨を伝え、サービス提供に向けて順調である事を伝えた。


「では、リリースについては問題ない事、安心いたしました。それと、一旦、奈木の方からの引き続きは完了しましたので、今後何かありましたら私にもお声がけください。

では、私もセキュリティ庁に向かいますので、失礼いたします」


安西さんは丁寧に挨拶をして、踵を返した。


俺も戻ろうとして少し歩いた時、安西さんに再び声をかけられた。


「そう言えば、奈木は帰任後は地方への転勤の辞令が出るそうですよ。こちらに3年の任期での成果が評価されて、地方拠点で更に重要なポジションを任されるらしです。

ま、私が推薦しておいたんですけどね。


椎名さんも奈木がいなくなり、業務に支障が出ないか心配かもしれませんが、私の方でフォローさせて頂きますのでご安心ください。では」



俺は突然のアダンの転勤の話しに固まってしまった。


安西さんが推薦したって、どういうことなのか?

それと、何やらチクッとしたものを感じる。


俺はアダンから詳しく聞きため、携帯に夜に待ち合わせしたいとメッセージを送った。


付き合ったばかりで地方への転勤なんて考えられない。しかもなぜ、安西さんの推薦なんだ?

俺はまたネガティブな気持ちに心が支配されてしまった。


俺はなんとか動揺して早くなった呼吸を整え、オフィスの扉を開けた。



・・・・・



「椎名、お疲れさま!」


30分ほどアダンを待てせてしまった。


会社近くの居酒屋は社内の人もいる可能性があるため、ゆっくりと話したく、結局いつものカフェバーで待ち合わせた。


先に飲んでてくれと言っていたので、アダンはビールを一杯空けたようだ。


白い肌がほんのりと赤くなり、店の薄暗い暖色のライトを柔らかく反射している。俺に気づいて白い手をひらひらとさせた。


俺はアダンの向かいに腰掛け、再びビールを注文してお疲れと乾杯した。


そして、安西さんから聞いた転勤の話しを切り出した。



アダンは少し暗い顔をして少しためらっていたが、静かに話しはじめた。


「実は、安西さんは椎名に会う前から俺のこと気に入っていたようで、何かと声をかけられていてさ、とても迷惑してたんだ。

でも、親御さんが関係省庁のお偉いさんで、割とうちの人事に口を出せる人なんだよ。


それで、ちょっと怖くなって異動願いを何度か出してたんだ。その頃にちょうど出向の話をもらって、お前の件もあって立候補したんだ。


こっちに来ていた3年間は、あまり安西さんと接点が無くて安心してたんだけど、最近、俺の引き続き担当になってさ。志願したっぽい。

多分、何となく俺がこっちで恋人を見つけたのに、気づいたんじゃないかな。俺、最近お前のお陰で髪を切ってオシャレになったしさ」


それはストーカーまがいではないか。

俺は顔が青くなった。


「それでこの前、安西さんに言われたんだ…付き合わないかって。もちろん断ったんだけど、そしたらかなりムッとされて怖かったよ。

その後、異動の話が出たんだ。それも、安西さんの親御さんの地元の山口県、基盤の地方都市だよ。何だかその執着心が怖くてな…

この前も家の近くにいたし、何だかストーカー化してる気がして怖いよ」


家の近く?アダンは男にしては華奢なので、何かあってはまずい。俺は更に顔色が青くなった。


「だから、今考えてるんだ。セキュリティ庁は辞めて、医師の仕事に専念しようかなって。

山口には行きたくないよ。お前の側にいたいし、役所は俺には向いてない気がしてさ」


俺は愕然とした。


それは、完全な公私混同ではないか。いや、もっとタチが悪い。仕事に影響が及ぶなんて。

アダンの能力を考えると、セキュリティ庁での活躍は今後もますます期待できるだろう。

だが、政治がらみの力が掛かるなんて、環境が悪すぎる。


「アダン、セキュリティ庁を辞めることは、もっと慎重に考えた方が良いけど、こんな嫌がらせが避けようもないことなら、仕事は辞めたらいい。

俺がお前のことなんとかする。しばらく休んで、それからまた医者でもシステム開発でも、仕事探したらいい。お前のスキルなら何処でもやっていけるよ。

だからその、、俺の側にいて欲しい」



アダンはキョトンとして、ふわっと笑った。


「椎名、勘違いさせるなよ。それってプロポーズみたいだ。でも何だか嬉しいな」


いや、俺は本気だ。


その言葉がプロポーズに聞こえるのなら、きっと結婚したいくらいアダンが好きだって事なんだ。


「俺は本気だよ。まだ付き合ったばかりだけど、アダンとは真剣に付き合っている。遊びじゃない。

だから、アダンもきちんと俺に向き合って欲しいんだ。2人でこれからのこと考えて行こう。

時期が来たらきちんとプロポーズする」



アダンはポカンとして、固まった。

そして次の瞬間、ふわっと微笑んだ。


「椎名、真面目だな…まだ付き合って10日くらいだぞ。でも、本当にそんなに真剣に俺のこと考えてくれてたんだな、、嬉しいよ…」


アダンは俺の手を強く握って、目を潤ませた。


ほんのり蒸気した頬が更に赤みを帯びて、俺は思わずその頬に触れた。


安西さんの事が不安でストレスだったろうし、転勤の話はもっと前から知っていたはずだろうが、心配かけないよう、俺に黙っていたようだ。



考えたら、付き合ったのは最近だけど、3年もお互いを側で見てきた。


多分、俺も出会った時からアダンのことを大切に思っていたんだろうと、改めて思う。


「椎名、土曜日はうちに来いよ。何時ごろ来れる?イチコも会いたがっているし、もっとゆっくり話したい。今日は心配かけたから、お詫びに美味しい夕飯作るよ」


俺は頷き、週末の約束をした。


アダンは話したら少し安心したようでホッとした。

ただ、安西さんのことは要注視だな。



帰りはアダンを家まで送った。

また家の近くにでもいたら大変だ。


名残惜しくなるので玄関の前でアダンを見送った。

後ろでイチコがナーンと鳴いている。


アダンは名残惜しそうな顔をしたが、ふと仕事を思い出したと話しはじめた。


「今回のプロジェクトだけど、一点、再度確認したいんだ。リスクオーナーシップ、つまりビジネスのリスクに関連するルールなんだけどさ、顧客情報管理と業務範囲規制に再度確認を入れたいんだ。明日、関連資料見せてほしい。いいか?」


アダンのこの切り替えが好きだ。

スイッチの切り替えが早いし、仕事とプライベートの顔が全く違う。



アダンのようにセキュリティだけではなく、コンプライアンスを考慮し、リスク管理を考慮したビジネスができる人は逸材だ。


俺はアダンに仕事を続けさせてあげたいと、心から思った。


俺は当面、アダンの身の安全と、プロジェクトの無事な開始のために頑張ろう。


そう心に固く誓った。

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