隻眼の少年3
<そうだ、このことは村のみんなには、
秘密にしておいた方がいいかも。>
「ど、どういうこと?」
<僕の住んでるこの世界ではね、
異世界転生人を見つけたら、
王国の偉い魔法使いに報告しなくちゃいけないんだ。>
「報告…、
報告して、それから、どうなるの?」
<ボクもよく知らないけど…、
噂では、王都に連行されて…。>
「連行されて…?」
<人体実験されちゃうんだって!!>
「じ、人体実験!?」
(ちょっとちょっと!!
今度は人体実験!?
ぜったい展開おかしいって!!)
<だから、これは二人だけの秘密にしておいたほうがいいかも。>
「わ、わかった、
これは二人だけの秘密にしよう。」
オレは少年と約束をする。
「それとさ、さっきも聞いたけど、
ここは、いったい何て世界なの?」
<この世界?>
「そう、今いるこの世界。」
<…世界っていうのが、
いまいちよくわかんないけど、
今僕たちがいるここは、
シルドビス大陸。
その中のフィレリア王国・レイクロッサ地方のシャペル村。>
「シルドビス…大陸…、
フィレリア…のシャペル村…。」
<そう、他にもわかんないことがあったら、
教えてあげるよ!!
それとさ、こっちからも質問!
美少女エルフと異世界ハーレム、
ってなぁに?>
「えっ…!?
も、もしかして…、
オレの妄想……、
全部…、聞いてた…?」
その瞬間、体中の毛穴から汗が噴き出す。
<うん、全部つつ抜けだよ。>
「え───────!!!」
(いい年した男の妄想を、
いたいけな少年に、
のぞき見(のぞき聞き)されるとは…。)
(この少年は…一体、
オレという人物をどう思うだろう。
頭の中の妄想なんて、
パソコンの中を、
覗かれるよりも恥ずかしいじゃないか。)
<…だからさ、それも、全部聞こえちゃってるよ…。>
「わ”────────────っ!!!」
<あははは!!!
あのさ、ヒビノタツヤって、おもしろいね>
「お、おもしろい…、
な、なるほど…今の証言によると、
オレが見ているヴィジョンは、リゼル君、
君という少年の意識体も共有することができる、
ということが証明されたという事だ。」
オレは思いっきりカッコつけて、
自分の知性を少しでも示そうと話をすり替えた。
しかし、カッコつけたくてしゃべった内容だけに、
自分自身でも何を言っているのか、
よくわかっていない。
<はぁ…、また変なことを、ごちゃごちゃと…。>
(…オレ、12歳の子供に、呆れられてる…。)
オレは、あまりの恥ずかしさを隠すため、
リゼル少年との会話を切り上げ、
急に身構えた。
右手を胸の前に出し、とにかく集中した。
(集中さえすれば”魔法”は放てるものだ。
”魔導…砲”とかってスキル獲得したみたいだし…
なんたって、これは異世界転生モノなんだ!)
「えいっ!!!!!」
しかし、何も起こらなかった。
(この世界の魔法は、詠唱式なのか…。、
だとすれば、何がしかの呪文が必要となるのか。)
(…あるいは、専門性の高い魔法陣の構築などが必要なのだろうか。)
オレの一連の行為はむなしく時を浪費するだけだった。
オレは完全にすべっていた。
<…あのさ、さっきから、何やってるの…?>
「え………?
も、もちろん、魔法だよ!!」
<僕、魔法使えないよ。>
「そ、そんなわけない…!!
こ、これは異世界転生なんだ…」
<ふーん、さっきから、
言ってることが、よくわかんなくなるんだけどさ…>
「ははーん、ループものだ!
一巡目ではわからないけど、
何度か死ぬ事で真実に近づいていくっていう、
あれだ!」
(と、とにかく、
早くゴロゴロするためにも、
スキルを確認しなきゃ…。)
<ねぇ、ちょっと!!
よくわかんないことはやめてさ、
屋根裏部屋へいこう。
ヒビノタツヤに、
いいもの見せてあげる。>
オレを屋根裏部屋へ促すリゼル少年。
「えっ!?
屋根裏部屋…。
オレのゴロゴロタイムは…?」
<もぉ、さっきからゴロゴロ、ゴロゴロって…
何がしたいの?>
「ゴ、ゴロゴロっていったら、あれだよ、
床とか、ソファとかベッドでゴロゴロって、
横になって…。」
<………>
「ど、どうしたの急に黙って。」
<おじさん、つまんない。>
「つ、つまんない…。おじさん…。
…あの…、いいかげんオレの名前だけど…。」
<名前…?>
「そう、ヒビノさんとか、タツヤさんとか、
他に呼び方があるんじゃないかな。
一応オレのほうが年上みたいだし。
あ、念のために言うと、
ヒビノがファミリーネームで、
タツヤがファーストネーム。」
<ふーん、
……じゃあ、タツヤだね!!>
「…さんは。」
<え─────────!!>
「…じゃあ、いいよ、…タツヤで…。」
そんなこんなで、
オレの”異世界転生生活”が始まった。
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