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イヤミな将軍とおてんば姫と北の大鴉

――王都より北・ゴロゾ地方――



 フィレリア王国・北方領へと通ずるさびれた街道を、

 道と不釣り合いなほど豪奢な馬車が走る。

 

 その馬車の中に、

 ギル・ドレと取り巻き二人の姿があった


 先日の”特別試験襲撃事件”により、

 公爵将軍ギル・ドレは中央軍の要職を解任された。


 将軍の任を解かれ、

 特別顧問という何の権限もない名ばかりのポストが与えられた。


何故なにゆえ…このわしが、

 北方領なんぞド田舎へ行かねばならんのだ。」


「…ええ、はい、

 それはもう殿下のまったくおしゃる通りでございます。」


 リトマイケは額の汗を拭きながら答える。


「しばしご辛抱下さいませ。」


 リトマイケとは対照的に、

 フォックスは相変わらずの鉄仮面ぶりだ。


「ふん、まぁよい。

 今回はきさまらの顔を立ててやる。」


「ありがとうございます、

 決して悪いようには致しません。」


 リトマイケが答える。


「今回の件だが、

 憎きサンダース・ヒルが左遷されるまではよかったのだ!

 元々あの平民出のパイロット風情が、由緒ある王国軍で、

 でかい顔をしていたのは気にくわなかったからな。

 しかし、何故ワシまで責任を取らされるなくてはならん!!

 元老院といい、王族といい、特にあの出戻りめ、

 このままではすまさんからな。」



 ギル・ドレは唇を噛んだ。










――――王都・親衛隊隊長執務室――――



 フィレリア王国・王立親衛隊”バーミリオン”・隊長の決断。



 隊長執務室の机上に、

 一枚の書置きがある。


《しばし、ラドニックとともに王都を離れる。


 その間、隊のことはブルソーに一任する。》


 <親衛隊(バーミリオン)>隊長


 アリエス・フィズ・フィレリア










――フィレリア王国・北方領・首都バルデオン――

 


 暦の上では春を迎えたものの、

 いまだ冷たい北風が吹きすさぶ首都バルデオン。


 領主ポウジー家・邸宅


 一羽の大鴉オオガラスが邸宅の中庭へ舞い降りた。


 大鴉は中庭へ降り立つと、

 壮年の男に姿を変える。


 男は顔に大きなあざと鷲鼻を持つ男だった。


 中庭傍の部屋からその様子を見ていた屋敷の主は、

 その様子に別段驚くことなく、

 再び机上の書類へ目を落とした。


 すぐさま、

 鷲鼻の男がノックもせずに

 部屋へ入ってきた。


「マルドックですか…。

 報告でしたら先ほどの手紙で承知しました。

 わざわざ出向かなくてもよかったものを。」


 男の視線は相変わらず、

 机の書類に向けられている。


「ふん、北の女が恋しくなってな。

 貴様こそ、すでに中央へ発っていると思ったが。」


「その前に、色々と

 片付けておかねばならぬことがありましてね。

 面白い客人との面会もその一つです。」


「ギル・ドレか…。

 あんなクズを相手にしてどうするのだ。」


「肝心なのは、使い方です。」


「ふん、好きにしろ。

 俺は今晩たっぷりと楽しんで、

 明日”アルレオン”へ飛ぶ。」


「そうですか。

 ところで、”例のパイロット”は大丈夫ですか。」


「それなら問題ない。

 安全な場所に匿ってある。」


「それはけっこう、

 彼にはもう一働き

 していただかなくては。」


 マルドックは不気味な笑顔を浮かべたまま、

 無言で部屋を去った。


「くくくく、

 楽しくなりそうですね。」


 サウールは卑屈に笑った。
















◇登場人物


フィレリア王国・王立親衛隊”バーミリオン”

隊長アリエス・フィズ・フィレリア

挿絵(By みてみん)






挿絵(By みてみん)

左 カーク・”狐”・ザグレブ大佐”

 

真ん中  ”侯爵将軍”ギル・ドレ

   

右 コール・”古狸”・リトマイケ少将

 



謎の男 マルドック

挿絵(By みてみん)



サウール・ポウジー公

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
[良い点] ギル·ドレ将軍。ゴンゾ地方にも美味しいブルーチーズがあるといいですね。しばし雌伏の時です(南無) リトマイケさんのイラスト拝見しました♪ イメージがぴったりでした(笑 とても応援したくな…
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