実機授業6
―――― アルレオン軍学校・機兵演習場 ―――――
その頃、アルレオン軍学校、
ライデンシャフト演習場では、
候補生同士による模擬戦が始まろうとしていた。
演習場に建てられた管制塔のバルコニーに、
仁王立ちする指導教官レリウスの姿があった。
「アルファ班、呼ばれた者は前へ出ろ。」
「デュロイ・クラヴィッツ!
リコ・アフィデリス!」
レリウスのアナウンスが、
各機体のコックピット内に響いた。
演習場中央で、デュロイ・クラヴィッツ機、
リコ・アフィデリス機が向かい合う。
互いの距離は、およそ200m。
リコ機、デュロイ機ともに、
魔導砲(演習用)を構え、
ルーンリアクターの出力を高めて、
開始の合図を待つ。
緊張するリコのコックピット内に、
魔導無線が入ってくる。
「無様な姿をさらす前に、
さっさと降参した方がいいんじゃないか、級長さん。」
対戦相手のデュロイだ。
「……………。」
(デュロイ得意の揺さぶりだ、
これには反応しちゃダメ。)
リコは黙ってやり過ごす。
「はははっ、ビビッて何も言えないのかよ!」
デュロイはさらに悪態をついた。
「……………。」
(何を言われようが集中集中!
私は私の戦いをする。)
リコは言葉を発することなく、
心の中で強く強く繰り返した。
――― 機兵格納庫内・整備科待機室 ―――
教室の壁にかけられた大型魔導モニターの前には、
多くの整備科の学生たちが集まっていた。
「うぉー初戦から好カード!」
「飛び級の天才 対 秀才の級長か…。」
「機兵の操縦なら双子のデュロイだろ。」
「いやいや、級長リコの堅実な操縦も侮れないぜ。」
「自分デュロイ嫌いなんで、級長応援!」
「オレも!」「おれも!」
「私はデュロイかな、ああ見えて機体の扱い丁寧なんだよね。」
観戦する学生たちのボルテージも高まっていった。
――― 機兵演習場 ―――
「始め!!!」
レリウスの掛け声を合図に、
パイロット候補生同士による、
機兵模擬戦が始まった。
ドシュ!!!ドシュウウ!!!
ドシュン!!!ドシュウウ!!!
掛け声と同時に、
互いの機体は牽制の射撃を放った。
砲撃後に鋭い動きを見せたのは、
双子のデュロイだ。
「おっせーぞ!!」
急加速で前進し、
リコ機との間合いを詰める。
「くっ…!!」
デュロイに対し遅れをとったリコは、
後退しつつ砲撃を撃ち込んだ。
ドシュン!!!ドシュウウウ!!!
「……落ち着け私!!
出足さえ止められたら…」
しかしデュロイ機は止まることなく、
さらに加速し、みるみるうちに距離が縮まる。
「…もうこんな距離!!」
ドシュッ!!!ドシュン!!!ドシュウウ!!!
リコはさらに砲撃を打ち込む。
デュロイはその砲撃を、
小刻みに蛇行し巧みにかわした。
「あ、当たんない…!?」
ドシュッ!!!ドシュウウ!!!ドシュン!!!
リコは魔導砲を放ち続ける。
「やみくもに打ったって、
オレ様には当たんねーよ!!」
リコ機へ迫るデュロイは、
兵装を白刃刀(模擬ブレード)に素早く変えた。
リコはまだ魔導砲を構えたままだ。
「間に合わない!!」
「ふん…、のろまが!!」
デュロイ機の放つ斬撃が、
リコ機を襲う。
ガギィィィン!!
リコはとっさに魔導砲(演習用)で、
デュロイの斬撃を受けた。
「うっ…危なかった。」
しかし、デュロイは攻撃の手を緩めなることなく、
さらなる斬撃をくわえる。
「うりゃー!!」
ガゴゴッ!!
デュロイのはなった斬撃が、
リコの魔導砲を弾き飛ばした。
「終わりだ!!」
止めを刺そうと、
デュロイは大きく機体の腕を振り上げた。
リコはその瞬間を見逃さなかった。
「隙あり!!」
ガキキィィン!!!
リコは一瞬の隙をついて、
デュロイの機体へ体当たりを食らわせた。
態勢を崩されたデュロイは、
一度離れて、距離を取った。
「ちっ…、油断したか。」
デュロイは態勢を立て直し、
すぐさま魔導砲を放つ。
ドシュッ!!!ドシュウウ!!!ドシュン!!!
リコもすぐさま機体を動かし、
デュロイの砲撃をかわし追撃態勢に入った。
ドシュウウウ!!!
追撃態勢に入ったリコの足元を狙って、
デュロイの砲撃が放たれた。
その瞬間、リコ機の周囲に砂塵が舞い散った。
「あ”―――っ!?
視界が………!!」
舞い上がった砂塵はリコから視界を奪い去った。
デュロイはその間隙をつき、
一気に出力を高め、間合いを詰める。
デュロイは再び魔導砲を白兵刀(模擬ブレード)に持ち替えた。
「今度こそ終わりだ――!!!」
リコ機めがけ白兵刀を振り下ろした。。
ガギィィィン!!!
白兵刀がリコ機の右肩にヒットした。
「うっ…!!」
その後もデュロイは追撃の手を緩めなかった。
ガガンッ!!ガキィン!!ガギィン!!
流れるように2撃、3撃と斬撃を繰り出した。
リコに反撃の術は残されていなかった。
ビ―――――――!!!
大きな警告音が鳴ると、
リコの乗ったゼクウは膝をつき静止した。
「『勝者、デュロイ・クラヴィッツ!!!』
レリウスは勝者の名を高らかに叫んだ。
――― 機兵格納庫内・整備科待機室 ―――
「圧倒的…。」
「ま、実力通りの結果じゃね。」
「リコ、よくあのわずかな隙をつけたよな…。」
「やっぱオレ、トロイ嫌い。」
「好きとか嫌いは関係ねーだろ。」
「いや、大あり!」
「そんなことよりトロイの兵器換装見たか…。」
「見た見た!めちゃくちゃ滑らかだったぜ!」
「今年中の正規パイロット昇進、ありえるぜ。」
訓練を見ていた生徒たちからは、
様々な感想が飛び交った。
――― 機兵演習場 ―――
「次!!デイニー・バッケンハイム!!
トロイ・クラヴィッツ!!
前へ!!」
演習場に再びレリウスの声が響いた。




