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最初の授業1

 ───オルレアン軍学校・パイロット候補生特別クラス───


「紀元前……

 すなわち、フィレリア王国による

 シルドビス大陸統一以前、

 じつに多くの勢力が、

 覇権を争った戦乱の時代だったわけじゃ…。」

  

(……いきなりの授業、

 しかも、よくわかんない座学…。

 はぁあぁ…早く終わんないかな…。

 オレには美少女の保護観察官がついてるんだ!)


 オレは今、

 オルレアン軍学校・第1校舎の教室で、

 授業を受けている。

 

 授業はいたって普通だ。


 白髪のおじいちゃん教師が、

 黒板に色々と書きながら、

 専門的な話をしている。


「その時代の戦争というものは、

 主に兵士や馬、武具、防具の量並びに質の差が、

 戦いの勝敗を分ける大きな要素であった…。

 まぁ、必ずしも武力だけが強さではないのじゃが、

 この話はのちの授業ですることとして、

 ライデンシャフトの効率的な運用が重要な現代においても、

 過去に編み出された戦術から学べることは

 非常に多い…のであるからして…。」



 この授業は、

 どうやらこの大陸の歴史と戦い方みたいだ。


(はぁ………、

 もう一度学校の教室で、

 勉強することになるとは……。)


 オレの周りのパイロット候補生たちは、

 整ったみなりに引き締まった表情、

 見るからに秀才揃いだ。


(こいつらとパイロットの座をかけて戦うのか…

 …なんだか自信なくなってきた。)

 



 ───フィレリア王国・アルレオン軍付属学校───


 アルレオン軍付属学校


 正式名称

 フィレリア王国・オルレアン州・王立軍付属学校


 軍学校の起源は古く、

 200年前より王国軍人を養成する機関として、

 当時の国王の号令の下、

 所領の領主たちにより各地で設立された。


(アルレオンでは、

 この費用の大部分を賄ったのが、

 領主のダリオン家である。)


 当時の王国は、

 まだ教育機関が発達しておらず、

 高等教育を受けられる機会は非常に限られていた。


(一説によれば、

 いち早く国民均等に

 教育機会を与える政策を取った、

 帝国の仕組みを

 取り入れたのではないかと言われている。)


 近年、アルレオンでは優秀なパイロット候補生を

 王国全土から集めている。


 パイロット候補生に選抜されれば、

 学費、生活費の免除はもちろん、

 親や親族に給金が支払われた。

 

 未だ多くの軍学校では、

 出自や経済的な格差が残るが、

 このアルレオンは王国では珍しく実力主義をとった。

 

 その結果、アルレオン軍学校は、

 優秀なパイロットを輩出し続けている。


──────────────────────────────




 ───アルレオン軍学校・校舎内・職員室───


 少し時間を巻き戻す。


 広場から学校に戻ったオレは、

 職員室へ案内された。


 男の職員、


「ティターニア候補生、

 君は魔導機兵科”3年”次応用操縦課程からの

 スタートとなる。」


「”3年”!?」


 オレは思わず声を上げた。


「それがどうかしたのかね、

 追加の書類に”3年”次への編入が

 指示されていたが…。」


「す、すみません、

 そうでした。」


 オレはできる限り、

 動揺を表に出さないよう振る舞った。


(くっそー、ヒゲのおっさんめ…、 

 そういうことなら、

 最初から教えとけってんだ!!)


 オレはいきなりの学校2年短縮を喜ぶ前に、

 そのことを知らせてくれなかったことへ、

 怒りを覚えた。


「3年次の実習授業は、

 経験値を高めるために実戦を想定した

 模擬戦闘訓練が中心だ。

 様々なシチュエーションを想定した戦闘を行う。」

 

(ふぅ…、2年の短縮はデカい!

 あのオッサンの最後の笑顔は、

 そういうことだったのか。)

 

 オレはすっかり職員の話を聞き流していた。


「そして、最後に行われる昇格試験を

 クリアした者だけが、

 正規操縦士の証である翼の紋章

(ウイング・エンブレム)を手にすることができる。」


(とにかく、死刑回避のためには、

 さっさと軍へ配属されなきゃな…。)


「では、担当教官を紹介しよう。」


「――こちらが、魔導機兵科強化訓練教官

 ・アリーシャ・レリウス軍曹だ。

 パイロット候補生選抜クラス

《リンド・ブルム》3回生を担当している。

 君の担当教官だ。」


 オレの目の前に、

 紹介された女性教官が現れた。


(グ…グラサン!?)


 サングラス姿の教官の出現に、

 オレは言葉を失う。


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)

(い…いかつすぎる。)


「アリーシャ・レリウスだ。よろしく。」


 レリウス教官は言いながら、

 スッと握手の手をオレの前に差し出す。


「あ…リ、リゼル・ティターニアです。

 よ、よ、よろしくお願いします。」


 オレは緊張しながら握手をするが、

 教官の顔をチラッと見ただけで、

 目をそらしてしまう。


「どうかしたか?」


「い、いえ…なんでもありません。」


 オレは恐る恐る顔をあげる。


 女教官はオレのビクビクした様子に気づくと、


「ああ、この色付きメガネか。

 これは、目の保護のためだ。

 過去の戦闘で目を負傷してしまってな。

 気にするな。」


「は、はぁ、そうなんですか。」


(気にするなって言われても……、

 ちょっとなぁ…。)


「では、後のことは頼んだぞ。レリウス君。」


 男の職員は敬礼をしてその場を去っていった。


 アリーシャ・レリウス教官、

 よく見ると、教官という割にまだ若そうだ。

 

 おそらく30歳前後ってところだろう。


 体つきは、軍服が張り裂けそうなほどのふくよかな胸に、

 くびれのあるボディライン…。


(…ゴクり)

 

 オレは思わずつばを飲み込んでしまう。


「どうかしたか?」

 

 レリウス教官は不思議そうにオレを見る。


「い、いえ。」


(ナイスボディに見とれてました…

 なんて言えるわけない。)


 そんなオレをよそに、レリウス教官は話し始める。


「ティターニア候補生、

 君がこれから入るのは、

 全国から集められたパイロット候補生で編成された、

 選抜クラス《リンド・ブルム》だ。

 厳しい競争が待っている、心しておけ。」


「……はい。」


(ちっくしょー、色々聞いてると思ってたより、

 厳しそうじゃないか…。)


 教官は続ける。


「それでは、クラスに案内する。

 必要な学生証や教科書などはもらったか?」


「は、はい。」


(はぁ、いきなり授業か…)


「では、ついてきなさい。」


 レリウス教官は、足早に歩き出す。


 教室に続く廊下を、

 レリウス教官は長い紅髪をなびかせながら颯爽と歩く。


 オレはついていくので精一杯だ。


 教官が振り向く。


「ティターニア遅いぞ!

 それからずっと気になっていたんだが、

 お前姿勢が悪いな、

 もっと背筋を伸ばして、キビキビ歩け。」


「は、はい。」


「それから、返事ははっきりしろ。

 言いよどむような候補生はパイロット失格だ。」


(うわぁ…軍の学校って感じ…。)


「はい!」


 オレは精一杯の返事をする。


「うむ、それでよろしい。」


 オレは改めて厳しい所へ来てしまったと、実感した。





──────────────────

アリーシャ・レリウス

挿絵(By みてみん)

アルレオン軍学校・魔導騎兵監部教官



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― 新着の感想 ―
[一言] なんか濃そうな教官が……!!!
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