運命の判決2
「はぁ………。」
オレは大きくため息をついた。
「………えーと、」
精神的に参っているオレを心配してくれたのか、
中尉がオレに話かけてくる。
「この国の法律では、
王室に所属する方が興味を持てば、
この軍紀裁判にかぎらず、
この国のあらゆる意思決定に、
関わることができるんです。」
(………!?)
オレはどうにか気持ちを立て直し、
中尉の説明を、
もう一度頭の中で繰り返した。
すると、自分の中で疑問が生まれる。
「そ、それって……、
王様とか王族は、
やりたい放題ってことですか?。」
デア中尉はオレの発言に目を丸くする。
(やっぱ、王様とか、
王族ってすげぇんだ。
ううう…………、
村人でこんな理不尽な目に遭うんだったら、
王様に転生したかった…。)
デア中尉は慌てた口調で、
「や、やりたい放題……、
ティターニア君、
言葉遣いには気を付けて下さい。」
オレに注意する。
そして、
「今の国王陛下が即位されてから、
王室は、この権利の行使に慎重だったはずです。
かつて、権利の行使が、
民衆の暴動を引き起こしたこともあったから…。」
中尉はオレの発言に対して、
否定的な答えを返してきた。
(や、やっぱ訂正!
もし王様になれても暴動は嫌!!)
「私の知る限りでは、
この半世紀、権利の行使は、
行われていないはずです。」
(だけど……、
じゃあ、何でオレの事件に王室とか、王様が…?
まさか!!
今度こそ、
オレが転生者だってことがバレたのか!?)
オレは別の不安に襲われ、
一気に憂鬱になる。
急に黙りこむオレ。
「……。」
「あ、あの……
……大丈夫?」
「あ、あんまり…、
大丈夫じゃないかも…です。」
オレは弱音を吐かずにはいられなかった。
──────王都グレミア・王宮・展望室──────
リゼル・ティターニア軍紀裁判、
判決言い渡し・前日
年老いた王は、眼下に広がる王都の街並みを眺めながら、
物思いにふけっていた。
国王”オーク・フィズ・フィレリア”
オークが国王に即位したのは、
彼が20歳の時だった。
先の王、兄のローグが病に倒れ急遽した。
その後46年、国を統べる王として、
オークは玉座に座り続ける。
王国の歴史において、
これほどの長きに渡り玉座についた者はいない。
それは、オークが、とびぬけて優れた為政者だったからでも
権力にひどく執着したためでもない。
この国の特殊な王位継承が、
次の王を拒み続けたためである。
オークには、王位継承権を持った王子が、
3人の妻との間に、8人いた。
しかし、現在、残された王子はたった1人である。
その子をも失うかもしれない、
そのことを考えるとオークは何事にも身が入らないのである。
コンコン
部屋をノックする音がした。
「……入れ。」
オークは答えた。
執事が扉を開けると、
娘の王女”サラ”が部屋へ入ってきた。
フィレリア王国・第一王女”サラリンド・フィズ・フィレリア”(通称サラ)、
20年前、一度は王国内の有力諸侯バノン家へ嫁いだのだが、
子を授からなかったため、フィレリア王室へ戻されていた。
現在、サラは王の側仕えとして、
王の執務に対し様々な助言を行い補佐をしている。
実際、高齢の王に代わり、
王室内の意思決定には、
彼女の意見が多大に反映されていた。
陰では、<出戻り宰相>こう呼ぶものもいる。
いまや、彼女あっての王室、
これが、王室に関わる者たちの偽らざる認識であった。
サラは部屋に入ると、
黙したまま、王の言葉を待った。
「サラよ、進捗はどうじゃ?」
王から言葉をかけられ、
「はい、元老院の懐柔に思いのほか手間取っております。」
サラは答えた。
「そうか…、どのような手段を使ってもよい、
必ずや認めさせるのだ。」
「…かしこまりました。」
「うむ。で、軍のほうは?」
「こちらは、一部に根強い反対がありますが、
おおむね予定通りに進んでおります。」
「そうか…、それはけっこう。」
「その軍につきまして、
本日、陛下に会わせたい人物を
連れてきております。」
「ほう、…それは、珍しいな。」
「通してよろしいでしょうか?」
「…うむ。」
「ありがとうございます。」
サラは頭を下げ、
一度部屋を出た。
そして、再び部屋へ戻った。
サラの後ろに、
サンダース≪ベルディア≫ヒル中将の姿があった。
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第2章はここまでとなります。第3章に続きます。
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