ちゃぶ台返し2
「誰からだ?」
「レイクロッサ基地・整備部隊から、
とのことです。」
「後にせよ。」
サンダースは軽くあしらった。
「しかし…、レイクロッサからは、
大至急とのことでしたが…。」
サンダースは説明をする部下の手に握られた、
封筒に目をやった。
そこには、数字の87と鎌のイラストがあった。
それを見るやいなや、
サンダースは部下から封筒を奪い取り、
封を開け、中の手紙に目を通した。
「…………。」
サンダースは大急ぎで会議室へ戻った。
─────────本部・会議室─────────
そのころ、会議室では、
ギル・ドレたちが、
上等な葉巻を満喫していた。
「うむ、これはなかなかの一品ではないか。」
ギル・ドレは上機嫌だった。
そこへ、サンダースとマズローが戻った。
「では、再開する。」
アーツライトは、ギル・ドレたちが、
モノ言う前に再開を宣言した。
部屋にいた給仕たちは、
すぐに部屋を出た。
会議が再開されると、
サンダースは挙手をし、
発言を求めた。
「うむ、サンダース。」
アーツライトは発言を許可した。
サンダースの表情には、
先ほどまでとは違い厳しいものがあった。
「刑の執行前に、
事前検証を求めます。」
サンダースは話を続けた。
「私は、自らの目で、
本当にその少年が魔導機兵を操れるのか、
確認したい。
敵機7機撃墜が事実ならば、
大変な戦力になるかもしれません。」
サンダースは、
その場にいる全員の顔を見渡した。
相変わらず厳しい表情のままだ。
全員が、サンダースの発言に
驚きと戸惑いを示した。
「───ベルディア公、それは冗談ですかな。」
真っ先に意見したのは、
ギル・ドレだった。
「笑えませんなぁ。」「その通りだ。」
フォックス大佐や古狸少将も次々に答えた。
ギル・ドレ将軍、古狸少将、
フォックス大佐、3人は、
穏やかな表情を装いながらも、
目の奥は笑っていなかった。
「検証の価値有りと考えます。
私もこの目で、
12歳の少年の操縦を見てみたい。
近年一回の出撃で7機撃墜など聞いたことがありません。」
炯眼のマズローはサンダースの発言を擁護した。
「待て待て、一度ならず、二度も民間人を、
ライデンシャフトに乗せるだと、…話にならぬ!
7機撃墜も、何かの間違いにきまっておろう!!」
ギル・ドレは不意に大声を発した。
古狸リトマイケも声をあげる。
「閣下のおっしゃる通り!!
どのような理由があれ、
平民の子供が操縦できるなど、
あってはならぬ!!
我ら王国軍人の面子丸つぶれではないか!!!
「面子はともかくとして、速やかに刑を執行し、
早急に手を打つのが最善かと。
生かしておくと面倒な事になりますぞ。」
フォックスは冷静に言うと、
ギル・ドレに目配せをした。
フォックスの落ち着いた対応に、
ギル・ドレ、古狸は平静を取り戻した。
「ふむ…。」
とだけ言うと、
アーツライト将軍は腕組みをしたまま、
黙り込んだ。
重い沈黙が会議室を覆った。
この沈黙を破ったのは、
”アン・ベルディアの奇跡”サンダース・ヒルだった。
「そこまで言われるのでしたら、
こうしましょう。
もし、この検証で何も得られなければ、
私は中将の職を辞します。」
「将軍!!!」
マズローは、サンダースの突然の提案に、
驚きの声をあげた。
「はっはっは、面白いではないか、
”ベルディア公”がそこまで言うのなら、
やらせてみましょう。」
ギル・ドレは大げさに言った。
「ド、ドレ卿…。」
フォックス リトマイケは、
呆気にとられた。
「馬鹿を言うでない!!!!」
声を荒げたのは、
ここまで黙ってやり取りを、
見守っていたアーツライトだった。
「黙って聞いておれば、
各々好き勝手を言いおって。」
アーツライトの顔は真っ赤だった。
「ここは法に従い、
正しき裁きを取り決める場なるぞ。
法と将軍職を天秤にかけるなど、
許される訳なかろう!!」
長老の怒りは収まらなかった。
「そもそも、被告の少年が魔導機兵を、
操縦出来たとて、
本件とは何の関りもないのじゃ!!
この件は、最初の意見通り、
極刑とする!!よいな!!
では散会じゃ!!」
アーツライト不機嫌な足取りのまま、
部屋を出て行った。
ギル・ドレ達3人も足早にその場を去った。
残されたマズローとサンダース。
「将軍…」
サンダースは険しい顔つきで、
椅子に座ったまま、動かなかった。
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