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死刑宣告受けました2


 オレは自分の耳を疑った。


(…死刑、今、この娘は、

 死刑って言ったのか…、死刑!?)


 オレは現実を受け入れられなかった。


 挿絵(By みてみん)



「あ、あの…、今なんて…?」


「ですから…、死刑です。

 君が、様々な重罪を犯した証拠が、

 こちらにあります。

 求刑は”死刑”です。」


「えええええええ!!」


 オレは、その後、何度も何度も確認するが、

 デア中尉の答えは変わらなかった。


「死刑って…、

 それはいくらなんでも…。」


 オレは頭が混乱したまま、

 理不尽な求刑に対し抵抗する。 


「オ、オレ、何機も帝国軍の

 ライデンシャフトを撃墜したんです。

 あっ!!もしかしてこれ、

 手の込んだドッキリですか!?」


 オレはこの状況がまったく理解できなかった、

 いや、理解したくなかった。


「ドッキリ?

 それは、いったいなんの話ですか。

 君は…、頂いた資料を見る限り、

 弁解の余地なく、”死刑”です。」


「あ、あの、オレ12歳の、

 未成年の、普通の少年なんです!!」


 オレは必死で抗議する。


「それはわかっています。

 ですが、この場合年齢は関係なく、

 法律に照らし合わせる限り、

 …有罪…”となります。」


 デア中尉は無表情のまま、淡々と答える。


「オレ、片目が不自由な隻眼で、

 ほらしかもなかなかの美少年ですよ!」


 オレは鎖でつながれた不自由な手を、

 精一杯使ってアピールした。


「あの、それは…、

 裁判と全く関係ありません。」


 中尉は、ここでもノーリアクションだ。


(せっかく異世界でかわいい女の子と出会えたのに…、

 何この展開、特異すぎるシチュエーションだろ!!)


 オレは頭の中で嘆いた。



 その後も、

 オレは”死刑”を受け入れられず、

 中尉へ文句を言い続けた。


「わかりました。

 百歩譲って、有罪だったとして、

 あれです、あれ、えーと…情状酌量!!、

 そうです、情状酌量!!

 これまで、真面目に生きてきたみたいですオレ。

 少しはあったっていいでしょ情状酌量!!」


「情状酌量って…、

 君、難しい言葉知ってるのね。」


 デア中尉は驚いた顔をした。

 今日、初めて表情が変わった。


 しかし、すぐに、


「残念だけど…、無理です。」


 元の表情に戻る。


「いやいやいや、オレ、未成年ですって。」


 オレは食い下がる。


「はっきり言いますけど、

 この軍紀裁判は、形式的なものです。

 手続き上必要だから開かれるだけで、

 判決が変わる事はありません。

 私も形式だけの弁護士なんです。

 理解してもらえましたか。」


 デア中尉は表情一つ変えず、淡々と答えた。


「ですので、

 極刑は、免れません。」


「……」


(あーあ、言い切った!

 言い切っちゃったよ!

 チックショー!!!)


 放心するオレ。


(これが、映画とかで見た、

 ザ・軍隊の不条理ってやつだ…。)


「あの…」


 今度は、デア中尉から、

 オレへ話しかけてきた。


「素朴な疑問なんだけど、

 何でライデンシャフトに乗っちゃたの?」


 デア中尉の顔が、

 ほんの少し、

 好奇心旺盛な年頃の女の子の顔に見えた。


「な、何でって… 」


 オレは少し考え込む。


(うーん、ダメ元で、リゼルの事とか、

 異世界から来たことを話してみるか…、

 どうせこのままだと死刑だもんな。)


「えーと、実はですね…、」


「…実は…。」


 中尉は興味津々といった感じで、

 オレの言葉を繰り返す。


(あ!!ダメじゃん!!

 バレたら人体実験!!!

 ううう…、やっぱここは、

 テキトーなことを言うしかないか。)


「実はですね……、

 そこに……、


 ”巨大ロボット”が、あったから。」


「巨大ロボットが……あったから?」


「そ、そうなんです、

 目の前に”巨大ロボット”があったんです、

 そりゃ乗っちゃうじゃないですか!

 ロボット物なんだし!」


「ロボット…物…?

 巨大ロボットとは、

 ライデンシャフトの事ですか。」


 デア中尉は、オレの説明を、

 理解出来ていないようだった。


「そもそも…、その機体の、

 正規パイロットは?

 パイロットのグレアム少佐はどうしたんですか?」


 いつのまにか、

 中尉の表情が元へ戻っている。


「えーと、負傷したグレアム少佐を救助して、

 それから許可を得て乗り込んだんです!!


 そうだ!!

 グレアム少佐に聞いてもらえば、

 オレの話が本当だって信じてもらえるはずです。」



「そうですか…。」


 考え込むデア中尉。


「どうせオレの話なんて、

 信じてもらえないんでしょ。

 だったら、このことは、

 グレアム少佐に聞いて下さい。」


「それは…出来ません。」


「出来ません…なんで!?」


 オレは思わず大きな声を出した。


「そ、そんなにオレを死刑にしたいんですか!?」


「そういうわけではありません。」


「あー、わかった。

 オレに罪をなすりつけるために、

 軍に都合の悪い話はさせられない、

 そういうことですか。」


「そうではありません!」


 デア中尉のボルテージも上がる。


「じゃあ何でですか!?」


 デア中尉はオレの質問に、

 なかなか答えなかった。


「何で、ですか?」


 オレはもう一度聞いた。


「…現在、グレアム少佐の行方が、

 わからないからです。」


 そう言うデア中尉は、

 冷静さを取り戻していた。 


「行方が………わからない。」


 オレは中尉の言葉を繰り返した。


 オレは予想外の返答に、

 もう何が何だかわからなかった。


「えー…、あー…、

 と、とにかく、

 敵をいっぱい倒したのに、

 なんで死刑なんですか!」


 オレは自分でも何を話しているのか、

 よくわからなくなってきた。


「それは、いくつもの重い軍紀違反の結果です。」


 中尉は同じ説明を繰り返した。


「うっ、…ぐっ…、

 最初に戻った。」


「一応、念のために聞くけど、

 君、転生者じゃないよね。」


「えっ!?」


(やばい!!!

 何かバレるようなこと言っちゃたか…。)


 体中から汗がふき出る。


「ち、違います!!」


 オレは首を大きく振って、

 力強く否定する。


(そりゃ死刑も嫌だけど、

 人体実験もゴメンだ!!)


「まぁ、そうだよね、

 すでに村の人たちからの聞き込みも済んでるし、

 君が転生者の可能性は低いと、

 調査結果も出てるし。」


「もし、転生者だったら、

 死刑はどうなりますか?」


 オレは思い切って聞いた。


「それは変わりません。

 転生者が現れたことを魔法省へ届け出たあと、

 刑が執行されるだけです。」


「あ、そうですか…。」


(くっそー!

 どのみち助からないじゃんかー!!)



「…リゼル君、君、本当に12歳?」


 デア中尉がオレをまじまじと見る。


(こんなかわいい女の子に見つめられるなんて、

 もう、死刑でもいい!!!)


 転生して初めて味わう、

 至福の時間だった。


(いやいやいや!!、

 やっぱ死刑は嫌だ!!!

 な、なんとかしなきゃ!!)


 オレはなんとか説得を試みる。


「どこからどう見ても、12歳!

 ほら、手だってこんなに小さくて、

 かわいいんです。

 どうですか、

 『かわいそう』って気持ちになりませんか?」


「…………。」


 デア中尉が困った表情になる。


(困った顔もいい!!)


 オレはこんな状況にも関わらず、

 目の前の美少女につい反応してしまう。


「…いきなりライデンシャフトに乗って…、

 ……7機撃墜………、

 さすがに、これを信じろと言われてもね…。」


「本当なんですって! 敵を7機撃墜したんです!

 勲章くれたっていいと思いますよ!

 それなのに、勲章じゃなくて、死刑って!、

 そりゃー…、あんまりですよ。」


 オレはどうしても納得いかなかった。


「…ごめんなさい。

 軍紀違反は、違反だから…。」


 中尉は、申し訳なさそうに言った。

 今日初めて見せた悲しそうな顔だった。


(ううう………、

 同情されたらされたで、

 余計……つらい………。)



 デア中尉との接見が終わると、

 オレは建物内の別の独房へ移された。


 その後も形だけの謁見がおこなわれ、

 数日が過ぎた。


 そして、何の進展もなく、裁判最終日を迎える。









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