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死刑宣告受けました1

第2章始まりです。

 ───フィレリア王国・王都グレミア───


 シルドビス大陸中西部に位置し、

 霊峰フィレル山のふもとに広がる、

 フィレリア王国・王都グレミア。


 少年リゼル・ティターニアは、

 レイクロッサ近郊での戦闘後、

 捕縛され、王都グレミアへ連行された。



 数日後…


 人気のない街はずれのカフェで、

 若い2人組の非番王国軍人が話をしている。


「おい聞けよ、…すげえ情報仕入れたぜ。」


「へー、何かあったのか?」


「『へー、何かあったのか』じゃねーよ、

 もっと食いついてこいよ!」


「……また始まった。

 いつもみたく、

 どうせしょーもないネタだろ、

 どこぞの隊で色恋トラブルとか、

 上官と不倫してそうな下士官の話とか、

 だからさ、もったいぶらず、さっさと言えよ。」


「今日のはそんなんじゃねーんだよ!」


「…はいはい。」


「聞いて驚くなよ。」


「驚きません。」


「レイクロッサで、

 ……激しい戦闘があった、って話だ。」


「……マジかよ!!」


「しーっ!!声がでけーって。」


「すまんすまん、

 だって、それが本当なら、

 なんで本部から発表がないんだ。」


「それは…、オレにもわからん。

 ただな、色んな部署の奴の話を、

 オレなりにまとめた結果、間違いないぜ。」


「お前の情報網、スゲーな…。

 で、戦況はどうなってんだよ。」


「双方痛み分けってとこだな、

 それでな、かなりの損害が出たみたいなんだ。」


「どれぐらい?」


「1個中隊分てとこかじゃねぇかな。」


「1個中隊!?そんなにか。」


「ああ、完成機体から、補給パーツまで、

 けっこうな量の輸送計画が、急発注で進んでる。」


「それだけの量の補給輸送か…、

 目立って絶対話題になるだろ。」


「だから、輸送自体の目的地を分けて、

 別の基地経由にしてみたり、

 別の基地からも物資を出すよう手配したり、

 ずいぶんと入念な作戦を立ててんだよ。」


「お前…こんな話して、大丈夫か……。」


「…え…やばいかな……はははははは。」




───王都グレミア・王国軍中央基地本部───


 歴史を感じさせる荘厳な石造りの建造物と、

 幾何学的なデザインの建造物が併合する、

 フィレリア王国・王国軍の心臓部。


 そこに、腕と足を鎖でつながれた、

 少年リゼル・ティターニアの姿があった。



 中央基地・軍事小法廷。


「はぁあぁぁ…、

 マジかんべんして…。」 


 オレは大きくため息をついた。


 現在ここでは、 

 ”軍紀”裁判ってやつが開かれてて、

 被告人は、オレだ。


 今は、検察審問官とかいう人が、

 淡々と起訴状を読み上げている。


「被告人リゼル・ティターニア。12歳。

 レイクロッサ地方、シャペル村出身。平民格民間人。

 被告は大陸歴534年、風の月12日、


 レイクロッサ地方・シャペル村付近の丘にて、

 王国軍機MLV—207・ブルージュ・ZWEI(ツヴァイ)に無断搭乗。

 及び無断操縦。


 その結果、複数の帝国軍機ガタカⅡと交戦し機体を激しく損傷させる。

 被告の犯した罪は明らかであり、重大である。」


「罪状は、軍法規定78条・王国軍機密情報窃盗罪、

 126条・軍機略奪罪、その他にも…。」


 読み上げは続いた。


(悪夢だ…、なんで死に物狂いで戦って、

 こんな目に合わなきゃいけないんだ…。)


 オレは、目の前の壇上に座る、

 偉そうなオッサンたちをにらみつけた。


 しかし、おっさんたちは表情一つ変えず、

 というか、ちらりともこちらを見ない。


(くっそー、相手にされてない感じ…。)


挿絵(By みてみん)


 オッサンたちは、おそらく役割的に、

 裁判官とか、そんなんだろう。


 中央のおっさんも、

 左隣のオッサンも、右隣のオッサンも、

 さらにその隣も、その隣も、

 見事に全員、立派な髭をたくわえている。

 

(ふーん、こっちの世界じゃ、

 いろんな形の髭があるんだな、

 …なんてヒゲに感心してる場合じゃないんだよ、

 …はぁぁぁぁあぁ。)


 オレは机に突っ伏した。


「ちょっと、顔を上げなさい、

 その姿勢は失礼ですよ。」


 オレにそう声をかけてきたのは、

 隣に座る、オレの担当弁護士、

 デア・リオン中尉だ。


 ちなみにこの弁護士のデア中尉、

 髪色は栗色、髪型はセミロングで

 清純派アイドル系のお顔立ち、

 ちょーかわいいのに、

 愛嬌ゼロというか、

 不愛想が服を着ているような女子だった。


挿絵(By みてみん)


(もっと愛想よくしてくれたらな…。)


 オレは顔をあげて、中尉に尋ねる。


「あのー、壇上に並ぶ髭のオッサンたち、

 あれ誰なんですか?」


「オ…、オッサンたちって…、

 リゼル君…君ね、

 呼び方には気を付けて下さい。」


 デア中尉は、呆れながら答える。


「中央にいらっしゃるのは、

 この裁判の裁判長を務める

 シュルツ・アーツライト将軍、

 王国軍のとても偉い方です。

 将軍の左右に座ってらっしゃるのが、陪審官の方々。

 あの方たちもみなさん高級将校、軍の偉い方々です。」


「へぇ――。」


「一度にこれだけの方々が集まるなんて、

 そうそうないことなんです、

 もっとちゃんとしてください。」


 デア中尉はピシャリと言った。


(怒った顔もなかなかいい…。)


 オレは全く中尉の話を聞いていなかった。



 裁判の初日は、起訴状の読み上げと、

 罪状認否が行われた。


 オレは、完全否認をした。


(死ぬ思いで敵を倒して、

 なんで責められなきゃいけないんだ。

 感謝の言葉が先だろ、まったく。)


 オレは怒りが収まらなかった。


 しかし、どれだけオレが怒ったところで、

 状況は変わるわけもなく、


「はぁぁあぁぁ……。」


 あまりのやるせなさに、

 オレは大きなため息をついた。



 シャペル村で目を覚まし、

 リゼル少年と出会い、村の人たちとご飯を食べ、

 ミレーネちゃんを探して、森でグレアム少佐を救出し、

 ライデンシャフトに乗り、帝国軍機7機を撃墜する。


 

(待望の異世界生活の終着が、

 こんな形になるなんて…、

 やっぱりオレはついてないんだ…。)


 オレは自虐的に笑った。 

 

 


───数日前の王都・グレミア・王国軍中央基地───



 馬車が止まった。


 オレが乗せられた、

 護送車の扉が開く。


「ティターニア、降りろ。」


 オレの護送を担当した、

 若い男の兵士が言った。


 オレが護送車を出ると、

 見たことない世界が広がっていた。

 

「…すっげー…。」

 

 そこは、

 ファンタジーとSFが合わさったような、

 完全な異世界だった。


 オレは3人の怖そうな兵士に囲まれながら、

 さびれた小さな建物内の一室に連行された。


「入れ。」


 オレは狭い部屋へ入れられ、鉄扉が閉められた。


「殺風景な部屋だな…。」


 部屋には、ボロテーブル1つと、

 ボロ椅子が2脚、それしかなかった。


 とりあえず、オレは椅子に座って、

 ただ時間が過ぎるのを待った。


(オレ、どうなっちゃうんだろう…。)


 オレは、腕と足にはめられた鎖を見つめ、

 さらに不安になった。


 かなりの時間が経ったころ、

 鉄扉が開いた。


「失礼します。」


 部屋へ入ってきたのは、

 軍服を着た若い女の子だった。


(か、かわいい──────!!!!)


 オレの不安は一気にふっとんだ。



 その後、お互いに簡単な自己紹介をして、 

 オレは、この状況の説明を受けた。


 そして、中尉からオレへ告げられた、


「”死刑”です。」


 と。


「───」











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