オレの戦闘2
ドシュウウウ!!!バシュウウウ!!!ドシュウウウ!!!ドシュウウウウウ!!!
「撃ってきた──────!!」
敵ガタカⅡが、
オレたちめがけ魔導砲を、次々と放つ。
オレは、リゼルに言われた通り、
集中力を高めて、
リゼルの操縦感覚を呼び起こす。
「ふぅ……。
頼む動いてくれよ。」
ドシュウウウ!!!バシュウウウ!!!
熱線が、さらに襲いかかってくる。
<タツヤ!!回避行動!!!!>
「やってるよ!!!!」
<とにかく、
当たったらダメだからね!!!!>
「なんだよそのアドバイス!!」
ドシュウウウ!!!ドシュウウウウウ!!!
オレは、不思議な感覚で、
機体を操り、
放たれた魔導砲を、
最小限の動きでかわす。
「す、すっげぇ……!!
オレ、ちゃんとよけてる」
ドシュウウウ!!! ドフウウウ!!! ドシュウウウウ!!!
「くっそー、
こっちは初心者だってのに、
手加減無しかよ!!」
オレは文句を言いながら、
回避行動をとり続ける。
<うんうん、タツヤいい感じ!!>
ドシュウウウウ!!! ドシュウウウウ!!! ドフウウウウウ!!!
「このリゼルの感覚をうまく使えば、
もしかしたら…。」
ドシュウウウ!!! ドシュウウウ!!!
オレが余裕を見せた瞬間、
敵魔導砲の熱線が、腕部、脚部とかすめていく。
「あ、あっぶね──────!!!」
<もう何やってんの!!!>
「ごめんごめん!!」
<もっと集中して!!!>
「は、はい!!」
(はぅ…結局…、
戦うのはオレなんだよな…。)
────────────────────────────
ドシュウウウン!!! ドシュウウウン!!!
帝国軍ライデンシャフト部隊は、
魔導砲を放ち続ける。
バシュウウウ!!! ドシュウウウ!!! ドシュウウウ!!!
しかし、数発、王国軍機をかすめただけで、
そのほとんどが外れた。
「な、なぜ、当たらん!!!!」
「おいおい…どうなってんだ…」
「パイロットは、…いったい何者…。」
レインは動揺する部下たちへ、
「うるさい!!黙って撃て!撃てー!!」
乱暴に言葉をかける。
オレたちめがけ、
帝国軍の集中砲火が続く。
シュドオオオ!!! ドシュウウウ!!!
「あ、あの…、リゼルくん…、
オレ、いつまでよけ続けてりゃ…。」
オレは歯を食いしばって、
必死に機体を操る。
<もう少しガマン!!
反撃のタイミングは絶対くるから!!>
「だけど…これ…、なかなか…。」
<ガンバって!!もう少し敵のエネルギー削らなきゃ。>
「ふぅ…、オレ…まだ…、
よけ続けんの…。」
<もう少しだから!!>
ドシュン!!! ドシュン!!! ドシュン!!!
ドシュン!!! ドシュン!!! ドシュン!!!
「わかったよぉ!!!」
オレは半ばやけくそ気味に答える。
ドシュン!!!ドシュン!!!ドシュン!!!
敵の容赦ない砲撃は続く。
「…はぁはぁ…、
この、リゼルの能力がすげえのは…、
わかったけど…。」
ドフウウウウ!!! ドシュウウウウ!!! ドシュウウウウ!!!
オレは、神経を研ぎ澄まして、
機体を操り、敵の砲撃をかわし続ける。
「これ使うの…、
正直疲れるかも…。」
オレは、他人の感覚を使っての慣れない操縦、
その想像以上のしんどさから
一瞬気を抜いてしまう。
「あっ…………!!」
<えっ!!!!!?>
ドゴオオオオオオオオ!!!!!
やってしまった。
機体は激しく揺れ、
スゴイ衝撃がオレたちを襲う。
砲撃はブルージュ・ZWEIの右胸に直撃した。
ドシュウウウ!!! ドシュウウ!!! ドフウウウウ!!!
そのすぐ後も敵の魔導砲撃が機体をかすめる。
「や…やっちまった……、
…もう……ダメだ…。」
オレはたまらず弱音をはく。
その瞬間、
<おいタツヤ!!!
動け────────────っ!!!>
リゼルの叫びがオレの頭に響く。
オレは、リゼルの絶叫で我に返り、
操縦桿に力を込め、
もう一度回避行動に集中する。
<泣き言言ってないで動かし続けなきゃ!!!>
「ちょ、直撃した…のに…、
まだ動くの……。」
<ブルージュの装甲なら、
1発ぐらい大丈夫!!>
「す、すげえ装甲…。」
<だけど、次はないよ!!
もっと集中して!!>
「は、…はい。」
オレは気合を入れなおし、
操縦桿をにぎる。
ドシュウウウン!!!ドシュウウウン!!!
───────────────────────────
「1発確実に当たったはずだが…。」
「この状況でまだあきらめんのか。」
「…読めん。
パイロットは、
いったい何を考えて操縦しているのだ…!!」
「中尉!!
ここであまり時間をロスするわけには…」
予想外の展開に、
隊員たちの間に動揺が広がる。
「くっ…。」
レインは強く唇を噛んだ。
────────────────────────────
ドシュウウウ!!!
「はうっ!!」
ドシュウウウ!!!
「ほあっ!!!」
オレは被弾して、気合を入れなおし、
再びひたすら敵の魔導砲をかわし続ける。
<す、すごい!!>
ドシュウウウ!!!
「どりゃ!!!」
<…タツヤ、
僕のチカラ使いこなせてきたみたい。>
(はあっ… はあっ…
研ぎ澄ませ……集中力……
次ちょっとでも……操作を誤れば、
せっかくの…転生人生も、…お終いだ。)
<ううん、違う!!
僕のチカラ以上の操縦だ…。
怪我のせいで、視界は右目だけだし、
サブスタビライザーだって、
正常じゃないんだもん…。>
オレは、操縦に集中して、
リゼルの独り言に反応できない。
ドシュン!!!ドシュン!!!ドシュン!!!
(ほっ…はっ…よ──────っと!!)
オレは、リズムよく敵の攻撃をかわし続ける。
<いったい…何が起きてるの…!?、
今のだって、けっこう近い距離からの砲撃だよ?
レーダーを見ながらかわすなんて…できっこないし…、
背後からのも…、
ぎりぎりのところで、かわしてる……!?
うしろからの砲撃を……!?>
ドシュン!!!
「こっちかっ!!!」
ドシュン!!!
「今度は、ここかっ!!」
<や、やっぱりだ!!……
タツヤは、敵の動きを目で追ってない!!!>
ドシュン!!!
「よっ!!」
<空中戦で、敵機の砲撃を受けた時は、
空中戦起動”乱数回避機動”
で相手の照準をはずすのがセオリーなのに…。
僕たちは、それを使わないで、ぎりぎりでかわしてる……。>
ドシュン!!!ドシュン!!!ドシュン!!!
「はぁ…はぁ…、
よっ、はっ、ほっ、と。」
<僕も操縦には自信あったけど…、
こんな操縦…、やったことない。>
「なぁリゼル!!
もうそろそろ、
反撃していいんじゃない?」
<え……!?
あ…、ごめん何?>
オレの突然の呼びかけに、
リゼルは驚いたようだ。
「ちょっとちょっと!!
さっきから一人でぶつぶつ言ってさ、
ちゃんと人の話聞いてる?」
<え!?
あ…、あははは。>
リゼルは笑ってごまかした。
「敵の攻撃が弱まってきたみたいだから、
そろそろ反撃出来るんじゃないの。」
<そ、そうだっけ…。
じゃあ、いよいよ反撃だね!!>
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「中尉!!これ以上あの角付きを、
相手にするのはいかがと…。」
「…なにっ。」
「魔導砲のエネルギー残量を考えると、
これ以上の消費は、
レイクロッサ攻略作戦に響きます。」
部下からの現実的な提案だった。
レインは、現実を受け止められずにいた。
たかが1機相手に、
警戒こそしていたものの、
ここまで手こずるとは考えられなかった。
パイロットが誰であれ、
敵基地のエースであるグレアム機を撃墜すれば、
殊勲の手柄となる、そう考えた、
レインの判断ミスだった。
「”角付き”は無視して、進撃するべきかと。」
部下はさらに続ける。
「……」
レインは自機の腕を切断された屈辱も重なって、
冷静な判断力を失っていた。
「そんなにエネルギー残量が気になるか…、
ならば、接近戦で仕留めるまでだ!!」
「私に続け!!
なんとしてもあの角付きを仕留める!!!」
帝国軍は編隊を崩し、
レイン機を先頭に、猛スピードで飛行し、
王国軍角付きに対し接近戦を挑む。
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敵の砲撃が止んだ。
敵軍はスピードをあげて一斉にこっちへ向かってくる。
「リゼル、砲撃は止んだけど、
敵がこっちに向かってきた─────!!」
<敵は接近戦に持ち込むつもりなんだ!!
タツヤ!!魔導砲構えて!!>
「え!?
魔導砲!?
剣じゃなくて!?」
<あれだけの数をいっぺんに相手するんだよ!!!
剣じゃ無理!!
距離を保って魔導砲で仕留めてやるんだ!!
絶対近づけさせちゃダメだからね!!>
「りょ、了解!!
距離を保つんだな…。」
オレは敵から逃げるように、
機体を反転させ、
一気にメインバーニアスラスターを噴射する。
<よーし!!
これから屋根裏部屋の装置の練習成果、
見せてやる!!>
「オ、オレだって、
ゲームと出会って20年、
ぼっちゲーマーなめんなよ!!」
オレたちは、一気にガタカⅡを引き離した。
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「中尉!!
”角付き”がスピードを上げ、
…逃げてゆきます!!」
「…追うぞ!」
レインの返答はシンプルだった。
「し、しかし…、」
「命令が聞こえなかったのか!!
追うぞ!!」
「「「はっ!!!」」」
9機の帝国軍機が、
たった1機のライデンシャフトへ迫る。




