やればできる!?2
レインは、蹴りをくらう直前、
機体をそらし、致命的なダメージを抑える。
「……ちっ、なんて攻撃だ!!」
敵機の無茶苦茶な戦いぶりに、
ビシス・レインは困惑した。
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オレたちの蹴りは、
ガタカⅡにかわされ、肩口をかすめた。
機体は、
そのままの勢いで、
大地を削り、
ようやく止まった。
「くっそー、よけやがった!!」
<あ────っ!!
惜しい!!>
「リゼル、次は!?」
<”次”の前に、タツヤ、
もっと力を抜いて操作してみて!!>
「こ、こんな状況で力を抜けって!
無茶言わないでよ!!」
<だってさ、
まだ、ボクの力を出し切れてないみたい。>
「わ、わかったよ。
…すぅ~、はぁ~。」
オレは、一度深呼吸をして、
操縦桿、ラダーペダルを、
とにかく動かす。
「こうやって、こうか…!
それから、こうして…。」
オレは思いつくまま、
めちゃくちゃに機体を操縦する。
そんなオレの動きに惑わされたのか、
相手は攻撃のタイミングを計れずにいた。
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「ちっ…、なんとかかわしたが、
先ほどの接触、
右腕がやられたか…。
しかし、何なんだ。
立て続けに体当たり。
今度は…、
”変な踊り”だと!!
この戦場で…、
なめたマネを!!」
レインは目の前の相手に、
怒りをおぼえる。
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<あははは、何その踊り!!>
「え、ああ、この踊りか、
オ、オタ芸…ってんだ。」
<変なダンスはともかく、
いいよ、タツヤ!!
確実に動きがスムーズになってる!>
「そ、そう。」
オレは褒められて、顔がゆるむ。
「なんか集中すれば、
機体をこうしたいっていう
イメージ通りに操作できるんだ。」
<…………。>
「なんでだろ…?」
<それって、僕の練習の成果かな!?>
「あのオンボロシュミレーター!?」
<オンボロは余計だってば!>
「あれ、ホントに動くんだ…。」
<タツヤ、今はそんなことより、
目の前の敵と戦わなきゃ!!>
「そ、そうだった…。
アイツと…戦わなきゃ、
いけないんだよな。」
オレは現実に引き戻される。
<じゃあね、今度は武器を使おう!!>
「武器!?」
<そうだよ!!
ずーっと体当たりなんて、
機体がもたないでしょ!>
「そ、そりゃ、そうだけど…、
武器ってどこにあるんだ?」
<ハイヒートグラディウス(剣)が左腰に、
魔導砲が、
腰の後ろにあるよ!
今は、ハイヒートグラディウス(剣)を
取って戦おう!!>
「わかった。
とりあえず剣だな…。」
オレは機体を操り、
大型の剣(ハイヒートグラディウス)をにぎる。
「こ、これでいいか。
でもさ、
オレ剣術なんてしたことないんだけど。」
<大丈夫!!
タツヤは立派に戦えてるよ!!>
「そ、そうかな…。」
<じゃ、構えて!!
反撃だ──────!!!>
ブルージュ・ZWEIは、
大型の剣(ハイヒートグラディウス)を構え、
敵ガタカⅡへ突進する。
「こうなったら、なるようになれだ────!!
くらえ────っ!!」
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ブルージュ・ZWEIの
攻撃に対し、
「くそっ!!
させるか─────!!」
迎え撃つガタカⅡは”左手”に大型剣を構える。
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ガキィィィィン! ガキィィン! ガキィィィィン!!
交錯する二機のライデンシャフト。
ブレードが連続でぶつかり、
弾き、ねじ伏せあう。
「うぐぐぐぅ……。」「くっ……………。」
二機のライデンシャフトは互いに譲らず、
斬りあいが続く。
「うわっ─────────!!」
互いに打ち込みが続く中、
オレは叫んだ。
その瞬間、≪ツヴァイ≫の動きが勢いを増す
<ま…まただ!?
出力が上がった!?>
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「なに─────っ!!!」
急に勢いを増したツヴァイに対し、
押し込まれるレイン
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ジュザザザンッ!!!
力を増したツヴァイの斬撃が、
ガタカⅡの剣もろとも、
左腕を切り落とした。
「……!?」
<やったー!!!>
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「ちっくしょう!!
どうなっていやがる!!」
ビシス・レインは唇を強く噛んだ。
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「や、やったのか…オレ…。」
<タツヤ!!
何ボーっとしてんのさ!!
とどめを刺さなきゃ!!>
「と、とどめ…!?」
その言葉に、
オレは次の攻撃をためらった。
オレがちゅうちょした、
その隙を、敵は見逃さない。
ガタカⅡは、
バーニアスラスターを急噴射して、
上空へ逃げる。
「あ────っ!!
リゼル!敵が逃げた───!!」
<もおっ!!!
タツヤがモタモタしてるから!!
さあ、追うよ!!>
「あ、あの、リゼルくん、
そこまでしなくても…。
敵は逃げたわけで、
ひとまず、村は助かったんじゃぁ…。」
<ううん、1機だけってことはないはず!!
普通、部隊は複数機で編成されてるんだ。
だから、絶対近くに仲間の機体がいる!!>
「えええ────っ!!!」
<まさか…、敵は1機だけだと思ってたの?>
「えっ…、いやぁ…、
まさか…、そんなことは…。」
<…思ってたんだ。>
「は、はい。」
<はぁ…。>
「追います、追いますよ!!
追えばいいんだろ、追えばいいんだ!!」
オレは半ばやけになって、
ペダルを踏み込み、
大空へ飛んだ。
<タツヤ!!操縦は冷静にしなきゃ!>
「うっ…、正論だけど、
まったく、誰のせいで…。」
<僕のせいだって言いたいんでしょ。
そういうのは、
終わってからにしようよ。
まだ戦闘は終わってないんだから。
今は操縦に集中して!!>
「うっ…、うう…。」
オレはこみ上げる怒りを、
なんとか抑え、
「すぅ~、はぁ~。
すぅ~、はぁ~。」
深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
「くっそー!!
集中、集中しろオレ!!」
オレはブツブツつぶやいた。
<あのさ、タツヤ、
ライデンシャフトには、
空中で、姿勢を安定させるために、
空中姿勢制御システム、
ってのが、備わってるんだ。
さっきは使わなかったんだけど、
今度は空中戦だから、使わなきゃ!>
「空中制御システム…。」
その間に、
機体は、敵ガタカⅡと同じ高度に達する。
オレは、機体の上昇を止め、
リゼルに言われた、
その何とかシステムを、
コントロールパネルを操作して、
起動させる。
システムを起動させると、
機体は前後左右あらゆる方向に、
不規則にゆれ始めた。
「わーっ!
ちょっと、なにこれっ!!
バランスおかしくない!?」
機体は、フラフラとして、
きちんと止まらない。
<あっ!!>
「ど、どうした!?」
<そういえば…。
グレアム少佐…、
サブスタビライザーが損傷したって、
言ってたっけ。>
「そのせいなのこれ!!
もう、早く言ってよー!!」
<…タツヤだって聞いてたじゃん。>
「そ…そうだっけ…、。
オレ、あの時よくわかってなかったし…。」
オレは、話しながら、
操縦桿を色々な方向に傾けたり、
足元のペダルを微調整しながら、
おかしな挙動を、
正常な状態に近づけようとガンバってみる。
「まったく、
えっと…、こうして、
なんでこんな目に、
こうやって…、
あわなきゃなんないんだよ!!
と。
よしよし…なるほど、
まったく、ふざけんなっての!
あー!!こうか…、
ちっくしょー!
ふ~、
多少コツがつかめてきた…。」
<…タツヤ…………、
………すごいよ…。
すっごい文句ばっかり言ってるけど、
壊れたサブスタビライザーの補正、
しっかりやってる。>
「え、何か言った?。」
<ううん、何でもない。>
その時、
正面スクリーンパネルに、
いくつもの影が映る。
「─────!?」
<タツヤ、どうしたの?>
「あ、あれ…。」
影の正体は、
帝国軍ライデンシャフト、
ガタカⅡの集団だった。
オレは、敵機体数を確認する。
「1、2、3、………、
……7……9機!?
9機もいるじゃん!!!」
<タツヤ…、
これからが、本番だね!>
「マ…マジっすか…。」
オレは、自分の置かれた状況に、
ただただ、呆然とした。




