ミレーネの捜索2
「はあっ… はあっ… はあっ…。」
オレの意思を無視して、
勝手に動いた体は屋上へ登る。
「いやいやいや、ちょ、ちょっとこれは…、
無理、無理、マジ無理なんですけど!!!」
屋根から下を見て、
オレは足がすくんだ。
<これぐらいの高さで、何ビビってんの。>
(オレ、高いところ苦手なんです…。)
オレの恐怖をよそに、
<ここからなら、よく見えるはずなんだ…。>
リゼルは周囲をよく観察する。
(あの…、よく見えなくていいから、
早く戻らない?
ミレーネちゃんもきっと待ってるよ。)
オレは自然とシェルターに目を移す。
<ちょっとタツヤ、頭を下に向けないでよ、
よく見えないよ!!>
(は、はい…、
ってオレ…言われっぱなし…。)
顔を上げあたりを見渡すと、
村のあちこちで、黒煙が上がり、
「早く!! 急いで!! 避難するんだ!!!」「みんな!! 急げ―!!!」「待って───────!!!」
逃げ遅れた人々が走り回っている。
(こんな状況でオレたち何やってんだよ…)
ゴオオオオオオ!!!!
「うわぁ、今度は何だ…!!」
もの凄い轟音がオレたちを襲う。
<……>
「!?」
ドシュウウウウウ!!!
一筋の閃光がオレたちの頭上を走った。
その後も、次々と連なるように閃光が走る。
「…もう…どうなってんの……?」
<……>
「おいっ!リゼル! あそこ!!」
オレは、とっさに閃光のあった方角を指さす。
そこは村はずれにある丘で、
赤灰色の巨体が猛スピードで、
もう一方の、白い巨体へ突進する。
その瞬間、赤灰色の巨体が光る。
ドシュウウウウ!!!
「さっきから光ってるのって…!!
や、やっぱり、ビームのたぐい!?」
<……>
リゼルは戦闘に見とれているのか、
さっきから黙りこんだままだ。
ドゴオオオオオオ!!!
最後の閃光が白い巨体に直撃する。
<…そ、そんなぁ…。>
リゼルの独り言がオレを不安にする。
「リ、リゼルくん、
戦況はどうなってるの?」
<……>
ゴオオオオオオオ!!!
閃光が直撃した白い巨体のいる丘から、
白煙が勢いよく立ちのぼっている。
「ああ、もう!煙のせいでよく見えないじゃん。」
オレが不満を口にしていると、
あたりに充満していた白煙が、
徐々に薄まっていく。
その瞬間、オレたちは息をのんだ。
「リゼル…くん…もしかして…あれが…。」
<…うん、…そうだよ…。>
「あれが… …ライデンシャフト…。」
煙の中から、
二体の”ライデンシャフト”が姿を現した。
<ブルージュ・ZWEIとガタカⅡだ!!>
「ブルージュ…?ガタカ…?」
<あの白と紫の機体は、
王国軍が誇る主力量産機・第3世代型ライデンシャフト
”MLV-207・ブルージュ・ZWEI”
赤灰色の機体は、帝国軍の機体で、
同じく第3世代型ライデンシャフト・量産機・ガタカⅡ。>
「ホ、ホントに…巨大…ロボットだ…。」
ガタカⅡは、ブルージュ・ZWEIめがけ、
紅く輝く剣を振りかざしながら接近する。
<”超熱ファルシオン───”!!>
「ちょ…超…シオン??」
オレはリゼルの説明についていけない。
<帝国軍の接近戦兵器!!>
(……)
ガタカⅡはその超熱ナントカを水平に振った。
その瞬間、
ブルージュ・ZWEIの胴体は、
真っ二つに切断された。
「────!?」
<い、一撃……!?
ウソだ────!!>
真っ二つに切断された、
ブルージュ・ZWEI、
その下半身は、
溶解した金属部分をむき出しに、
無残な姿でその場に立ち尽くした。
「あわわわわ…、
な、何て、威力…。」
<超熱ファルシオンは確かに強力だけど…、
ZWEIの装甲が耐えきれないなんて……。>
切断された機体から黒煙があがる。
そして、あっという間に炎に包まれた。
「─────────」
(や、やばい……オレ…、
本当に…戦争の中にいる……。)
オレは寒気を感じ…、
全身が震える。
ゴゴゴオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
「こ、今度は何!!!」
オレは轟音のする方角へ顔を向ける。
<タツヤ!! 増援部隊だ!!>
「ぞ、増援…。」
応援に現れた機体群は、
光線を放ちながら飛行する。
ドシュウウウウ!!!ドフウウウウウウ!!!ドシュウウウウ!!!
(は、はぁ…よかった、
村から離れてく、
あっちの丘の方か…。)
<1機…2機…8機もいるっ!!!
しかも、全部ZWEIだ!!>
「よ、よくわかんないけど、ガンバれよー!!!
あと、こっちには来るなよ────!!」
オレはリゼルの分も声をあげた。
<大丈夫!絶対勝てる!!>
ブルージュ・ZWEIの集団が、
次々とガタカⅡの編隊に向かっていき、
激しい交戦が始まった。
ガキィィィィン!!!!
バリバリバリ!!!
ゴオオオオオオオオ!!!
とんでもない衝撃音が、
離れた場所にいるオレたちの所まで響く。
<あっ……!?>
「…リゼル…どうした?」
<……ZWEIが……、
………やられてる。>
リゼルの言葉通り、
8機のブルージュ・ZWEIは、
次々と撃墜されていく。
「え――っ!?
さっき大丈夫って…、
このままじゃ王国軍の負けじゃん!!!」
<うそだ……王国軍が、
ここまでやられるなんて…。>
「おいおい、
オレたちどうなっちゃうんだよ……」
明らかに王国軍は劣勢だった。
全機撃墜されるのも時間の問題だ。
ゴオオオオオオオオオオオオ!!!
「!?」
一機の王国軍ライデンシャフトが、
近くの森へ落ちた。
「……。」
<……。>
嫌な予感がする。
「…もう十分見たはずだし…
よし戻ろう。」
オレはわざとらしくつぶやいた。
<………。>
しかし、リゼルは何も言わなかった。
(リ、リゼルくん!!
ここはいったんシェルターへ戻ろう!!
さすがに、これ以上は危険だって!!!
今まで無事だったのだって、
えー……奇跡、そう奇跡!!
……間違いなく奇跡!!)
<……お願い。>
「んっ???」
オレはリゼルの声を聞こえなかったふりして、
戻ろうとする。
<タツヤ!お願い!>
「また!?」
<森へ行こう!!>
「……え”────────────────────!」
(やっぱりだ(泣)
嫌な予感的中!!!!)
<お願い…。>
「バカバカバカ!!今度こそ死ぬ気か!!
オレは死にたくない!」
(ダメだって!!
さすがにこれ以上、
ここにいちゃあいけない。
リゼルを何とか説得しないと…。
だけど、どうやって説得すればいいんだ…。)
<説得なんていらない…。>
(!?)
<そうだよ、
タツヤの考えてることは僕に筒抜けなんだから、
死にたくないのは、僕だっておなじ。>
(………。)
<だからって……、
このまま黙って逃げるなんて、
僕にはできない!!>
(────────────────────)
<今ならまだパイロットを、
助けられるかもしれないよ!!
だから!!早く、早く行かなくっちゃ!!!>
(─────────────────────)
<お願いだから…タツヤ!!!>
すると、もう何度目だろうか、
再び体が勝手に動き出す。
(またか!!
まったくどうなってんだよ!!
オレの異世界転生、
なんでこうも思い通りにならないんだよ────────!!
おかしいだろ!!!)
言いながら、
オレは走り出していた。




