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【機体イラストあり!】機導大戰ライデンシャフト~転生したら最弱少年で絶望したけど巨大ロボットのパイロットとしては最強みたいです~  作者: nicobear
異世界で巨大ロボットに乗ることになりました(パイロットとしての目覚め)編
19/122

シャペル村では2

 そうこうしているうちに、

 部屋に大人から子供まで、

 大勢の人が集まってきた。


(ちょ、ちょっとリゼル、

 いきなりこんな人数、

 誰がだれやら、

 オレわかんないんですけど…。)


<大丈夫、みんないい人たちだから安心して。>


(いや、そういうことじゃなくてさ……)

 

「おお、リゼルー…!」「よかったのお……」「ううっ…うう……」

「リゼルー、ようやく起きたか!!」


 ご近所さんたちは、

 かわるがわるオレの側へやってきては、

 頭をなでてくれたり、

 ハグをしたり、手を握ってくれたり、

 いろんな愛情表現を見せてくれた。


(リゼル君…、

 キミみんなから、

 愛されてるんだね……。)


<そ、そう。

 別にふつうだと思うけど…。>


(こ、これが、ふつうなのか…。)


 オレは言葉がでなかった。


 そんなわけで、宴が始まった。

 みんなは、陽気に食べて、飲んだ。

 

 目の前には、

 うまそうなローストされた肉がある。


挿絵(By みてみん)


(一体何の肉だろう。

 めちゃくちゃ香ばしい、いい匂い!)


ゴクリ


(早く食べたい。)


<ねぇ、食べて大丈夫かな?

 僕けっこう長い間寝てたみたいだよ、

 いきなりお肉とか、食べられるかな…?>


(───す、少しだけだよ……少しだけ。)


<うーん。めったにないごちそうだから、

 タツヤに食べてもらいたい気もするけど…。


 お腹痛くなって、

 苦しむのもタツヤだよ。>


(───うっ…確かに…、

 お腹壊すのは、嫌かも…。)


「リゼル、今日はおまえの大好きな、

 村特産チーズのフォンデュもあるのよ。」

 メリーおばさんはそう言うと、

 チーズの入った鍋をオレの前に運ぶ。


(シャペル村特産チーズ…

 これもすげーいいにおい…。)


(───なぁ、これなら、いいんじゃないか?)


<もう、チーズだけだよ。>


(───やったー!!)


<…はぁ、すごい食い意地…。>


(何か言った。)


<ううん、何でもない。>


「いただきまーす!!」


 オレは、トロトロのチーズを、

 木製スプーンですくって食べた。


「あっつ!!あっつつつ!!!」


<もう!!何やってんの!!>


 チーズはオレの想像以上に熱かった。


「リゼル大丈夫か!?」


 みんながいっせいにオレを見る

 オレは無理やり笑顔を作って、


「あ、あっつくて、おいしいー!!」


 なんとかその場をやり過ごす。


<驚かせないでよ!>


(ごめんごめん、

 初めて食べる料理なもんで…。)


<少し冷ましてから、食べなよ。>


 リゼル回復祝いの宴は、

 こうして和やかに進んだ。


 少したって、オムルじいちゃんが、


ティンティンティン!!


 グラスをナイフで叩いた。


 じいちゃんは立ち上がり、

 挨拶を始める。


「ここで、あらためて一言、

 ええかの。


 みなには、大変心配をかけた……。


 じゃが、今日、わしらの祈りが通じ、

 我が孫リゼルは、目を覚ました。


 村のみな、本当にありがとう。


 みなの励ましや、協力には、

 いくら感謝しても感謝しきれん。


 せめてものお返しじゃ、

 今日は存分に、食べて、飲んでくれ。

 ……ムームー《かんぱーい》……!」

 

「「「ムームー《かんぱーい》……!!」」」

 

 食堂に集まった人々は、祝杯をあげた。


 オムルじいちゃんは座って、オレに声をかける。


「リゼル、休みたくなったら、

 遠慮せずいつでも言いなさい。」


「え、あ、はい。」


「お兄ちゃん、ごちそうだよ。」


 はしゃぐミレーネ。


「ミレーネ、リゼルに、

 あまり無理をさせちゃあいかんぞ。

 リゼルもじゃ、しばらく無理は禁物じゃ。」


「オムルさん、スープが出来ましたよ。」

 台所からメリーおばさんの声がする。


「そうじゃった、

 いきなり普通の食事は出来んかもしれんと思ってな、

 リゼル用のスープも作っとったんじゃ。」


 そう言いながら、じいちゃんは台所に行く。


「オムルさん特製のスープよ。」

 メリーさんが解説してくれる。 


(へぇー、リゼル楽しみだな。)


<うん。>

 

 じいちゃんのスープを待つオレに、


「お兄ちゃん、いつパイロットになれるの?」


 ミレーネがたずねる。


 ミレーネは、オレをじーっと見つめる。


 ガシャーン!


 台所から戻る途中、

 オムルじいちゃんは鍋を落とした。


 <じ、じいちゃん。>


(どうしたんだ?)


「オムルさん!」


「……」 


「だ、大丈夫ですか!?」


 メリーおばさんは、

 大慌てでかけてくる。


 オムルじいちゃんが、ゆっくりと口を開く。

 その顔は真っ青だった。


「すまん、すまん

 手が滑ってしまっての。」


 じいちゃんは、こぼしたスープを

 ふき取ろうとする。


 メリーおばさんは、そんなじいちゃんを制し、


「いいですよ、ここはやっておきますから、

 オムルさんは座って一息入れて下さい。」


 椅子に座らせた。


 じいちゃんは、イスに腰かけると、 


「本当に、ひどい事故じゃった………、

 あの事故は…、わしのせいなんじゃ……。」


ドン!!!


 テーブルをどんと強くたたいた。


 そして、うつむいたまま、黙り込んでしまった。

 その場は静まり返った。

 


(ひどい事故、じいちゃんのせい…?

 リゼル、一体、どういう事?)


<どういうことって言われても…、

 僕ホントに覚えてないんだ。>


(うーん、なんか重い雰囲気になっちゃったな…。)


<…ねぇタツヤ、じいちゃんに聞いてみてよ。>


(聞いてみて、って何を?)


<その事故のこと。>


(え!?

 聞くの、オレが?)

 

<もぅ!!

 タツヤ以外に誰が聞くのさ!!>


(あ、はい、そうでした。)


「あ、あの、オムルじいちゃん…、

 事故って、何が…あったの?」


「!?」


 じいちゃんは驚いた表情でオレを見る。


「リゼル!?事故の事…憶えとらんのか?」

 じいちゃんは、オレを見たまま固まった。


(リゼル、この先は?)


<こうなったら、全部聞こうよ>


(じゃ、じゃあ、次はどう言ったらいい?)


<事故の事は、何も覚えてない、

 って言って。>


 オレは、リゼルの言われたとおり話す。


「あの…僕さ…事故の事、何も覚えてないんだ。」


「…そうなのかリゼル……」


「何が、あったの…?」


「そうじゃな…」

 オムルじいちゃんはそう言ったきり、

 黙り込んでしまった。


(おいリゼル、オムルじいちゃん、

 黙っちゃったぞ?)


<事故の事、話したくないのかな>


(そういや、じいちゃんは、自分のせいだって…、

 …何か事故と関係あるのか…?)


<じいちゃんと事故が…?>


 オレとリゼルが、

 頭の中でやり取りをしていると、

 となりのテーブルに座っていた、

 長髪のおじいさんが話し始めた。


「オムル…もう済んだことじゃ。

 リゼルも目を覚ました。

 そう自分を責めるな。」


<ホメットじいちゃん…。>


(ホメットじいちゃん?)


<うちの隣で、羊を飼ってる。>


「リゼル、事故はな…、

 半年ぐらい前の日没の頃じゃ。

 ……ワシは一人で、

 古くなった柵の点検をしておった。


 その時じゃ、北の山の方角から、

 もの凄い音がしてな、

 村上空に帝国のライデンシャフトが現れたんじゃ。


 その帝国機が現れてすぐに、

 王国のライデンシャフトも飛んで来ての、

 村のはずれで戦闘がはじまってしまった。」


(ちょ、ちょっとぉぉぉお!

 話ちがうじゃん、

 村、全然安全じゃない!!)


<……>


「ワシは急いで、シェルターに向かった。

 そこに、オムルとリゼルもおった。


 リゼルは必死になって、

 オムルに何かせがんでおった。


 オムルは、興奮するリゼルを、

 懸命になだめておったんじゃが…。


 ついに…リゼルはオムルの制止を振り切って…、

 シェルターを飛び出してしまったのじゃ。」


(リゼル…、)


<……>


「わしらはすぐに、リゼルの後を追った。

 しかしな、老いぼれ二人の足では、

 なかなか追い付けんでな。


 わしらが、お前を見つけた時にはもう……、

 リゼルは頭から血を流し、意識を失っておった…。」


(おいリゼル…、

 大丈夫、…か…?)


<…………>


「すまんな、リゼル…

 あの時、わしが…止めておれば…。」


 オムルじいちゃんは、顔を上げた。


<…そう…だったんだ……。>


 リゼルの小さな声が、 オレたちの頭に響く。


「もうなんですか!

 せっかくのリゼルの回復祝いですよ!!

 みなさん、ほらもっと食べて、飲みますよ!


 ほら、リゼルあなたも、ミレーネも!!」


 メリーおばさんの力強く陽気な声は、

 その場の雰囲気をガラッと変えた。

 

 メリーおばさんの勢いに、他の村の人たちも続く、

「そうじゃそうじゃ!」「よし、歌じゃ、踊りじゃ!」

 

 食堂は、再び朗らかな歌声や大勢の笑い声、

 踊りの手拍子や、掛け声に包まれた。





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