異変2(王国軍対帝国軍)
グレアムは敵機の攻撃をかいくぐりながら、
思案する。
グレアムは自らの知る、
自機ブルージュ・ZWEIと、
敵機ガタカⅡの性能差を素早く思い返した。
(性能面については…、僅かだが
ブルージュ・ZWEIに、
分があるはずだ。
仮に目の前の帝国軍パイロットが、
全員エース級だったとすれば、
ここまでの戦力差は考えられる。
しかし、これほどまでのパイロットを、
短期間で一度に集めるとは、
…考えにくい、…となるとだ。)
ドシュウウウ!!! ドシュウウウウ!!!
敵機の砲撃が続く中、
グレアムは乱数回避機動をとる。
あいつら、機体外装はそのままだが…、
新型か!!!)
「………。」
グレアムは沈黙したまま再び思案した。
「グレン・グレアム!!」
そこへ、最初に交戦したガタカⅡが、
再びグレアムに襲い掛かる。
ガキキキキキィン!!
グレアムは、
近接兵装”ハイヒートグラディウス”で、
ガタカⅡの斬撃を受け止めた。
そしてそのまま、鍔迫り合いが続く。
(明らかにこちらが不利か·····、
だとすれば、
どうやって退路を確保するかだ。)
グレアムは自分の置かれた状況を、
冷静に分析する。
(目の前のガタカⅡの、
飛躍的な性能の向上、
このデータだけは、
司令部に届けなければならん、
なんとしてもだ!!)
グレアムは覚悟を決めた。
その時
「…グレン・グレアム、
そうか、貴様があの有名な
”レイクロッサの番人”なのか!?」
再度、敵パイロットからの交信が入る。
────ギャラス帝国・第八帝国軍・78特殊機甲隊・隊長ビシス・レイン中尉────
帝国軍ライデンシャフト・ガタカⅡ
を操る女性パイロット。
ビシス・レインは、
転属早々武勲を立てるチャンスを得た。
帝国は建国以来、
勝利至上主義を掲げる。
”ライデンシャフトにその血を捧げよ。
さすれば勝利は常に我らと伴にあり、
我らは勝利をもたらす絶対者となる”
それは、貧困層から上流階級まで、
例外はない。
帝国人にとって、勝利がすべてだった。
勝者は、富、名声、権力、すべてを手にするのだ。
────────────────────────────────
グレアムはレインからの問いかけに、
「周りが勝手にそう呼ぶだけだ…。」
そっけなく答えた。
レイン操るガタカⅡは、
グレアム機から離れ、
大きく間合いを取った。
「…ふぅ…次は仕留めにくるか…。」
グレアムは大きく息を吐いた。
眼前のガタカⅡが、
一気に出力を上げる。
「もらった───!!」
ヴゥオン!!ヴォン!!ヴゥオオオ!!
ガタカⅡは突進しながら、
”超熱ファルシオン”による連撃を繰り出す。
ガキン!!ガキィン!!ガキィイン!!
グレアム操るブルージュ・ZWEIは、
レイン機の猛攻をぎりぎりのところで、受けきっている。
「そう簡単にやらせはせんよ!!」
「くっ…しぶとい。」
グレアムが斬撃を受け止めた瞬間、
「さっきのお返しだ────!!」
ガゴォォオオン!!
レイン機はグレアム機の腹部を蹴り上げる。
グレアム機は大きく弾き飛ばされた。
帝国製ライデンシャフトガタカⅡが、
王国軍ブルージュ・ZWEIを圧倒する。
レインは操縦桿を握りなおし、
雄たけびをあげる。
「ここから帝国の新たな進撃が始まるのだ!!
くたばれ───っ!!!」
レイン機は一気に間合いを詰めると、
格闘戦機動”重連斬”を発動する。
突き、薙ぎ払い、水平斬と連続で繰り出す。
グレアム機は連打される斬撃を
ハイヒート・グラディウスで受け止めるのが精一杯だった。
勢いを増す敵の攻撃に、
グレアムは反撃の隙を見出せずにいた。
「……くっ……。」
その中を、
「ぐうう!!」
「ざっけんな!!オレ達がやられるかよ!!」
「この帝国モグラぁぁ!!」
仲間達の苦悶の声が、コックピットに響く。
シャマ達も、桁違いの性能を見せるガタカⅡに対し
劣勢を強いられたままだ。
グレアムの目に隊の敗北は必至と映った。
「───!? 隊長!!!後方より機影接近!敵の増援です!」
レーダーモニターに映る赤い光点。
(くっ…一機ならば、なんとかしのげるかもしれんが…、
数が多すぎる。)
グレアムは意を決する。
「グレアム隊、ただちに退避する!
散開せよ!!」
グレアムは、レインの斬撃を
なんとか受け切ると、
敵機の一瞬の隙をつき、
腰部サイドアーマーに収納されている
離脱用の炸裂閃光衝撃弾を機手で掴む。
(魔導砲に装填する隙はないな·····、
しかし、確実に敵の動きを止めるには、
やるしかない!)
グレアムは炸裂弾を起動させ、
「 おまえら目をつぶれ!!!」
部下へ叫んだ。
そして、起爆ギリギリのタイミングで、
炸裂弾を投げつけた。
カッ!!!!!
炸裂閃光衝撃弾はまばゆい光を放った。
次の瞬間、
シュゴオオオ!!!!!!
グレアムたちを凄まじい衝撃波が襲う。
「…ぐっ……ううっ…。」
グレアムはあまりの衝撃に顔を歪める。
あたり一体は白煙に包れた。
グレアムは衝撃波で吹き飛ばされるながらも、
機体を制御し、力の限り叫ぶ。
「…逃げるぞっ!!」
「待て!!グレアム!!そうはさせん!!」
レインも叫んだ。
しかし、レインは閃光で視界を奪われ、
すぐに身動きが取れなかった。
シャマ、ルカ、マイス機は、
グレアムが捨て身で作った
脱出の好機を生かし、
急ぎ離脱の空中戦闘機動に入る。
三人は、機体を急速旋回、
バーニアスラスターを最大出力で噴射し、
一気に現空域を離脱していく。
グレアム機もルーンリアクターを最大出力し、
運用速度限界まで加速させ、三人に続く。
途端、強烈な痛みがグレアムを襲う。
「ぐうっ…!」
痛みに耐えながら、
煙に向かって、牽制の魔導砲を数発放つが、
手応えはなかった。
閃光弾を浴びたガタカⅡ部隊も、
視界の回復とともに反撃砲を連続して放つ。
グレアム隊は、後方から幾重もの光線の束を受けつつも、
全速で撤退する。
「───本部!!本部!!こちらグレアム!!
敵部隊に追撃を受けている!
さらに敵増援接近中!───」
痛みに耐えながら、
すさまじい機体制御を見せるグレアム、
その中での交信だった。
「───こち…本…、
ノイズ…が……、
ひど……───」
本部からの返信はノイズがひどく、
聞き取れなかった。
「───!?」
「敵の…ジャミング波の…
干渉を…感知!!通…信…」
シャマ機からの通信もノイズが混じって聞き取れない。
「座標、戦域β、ブロック8、
敵軍侵入に備え迎撃態勢!敵軍侵入!迎撃態勢をとれ」
何度も、何度も、
グレアムは必死で繰り返し、交信を試みる。
「…おれの悪運もここまでか…。」
グレアムは空に複雑な放物線を描きながら、魔導砲を放ち続けた。
「───栄光よ、我ら汝の子どもらなり、
我らに汝の光あらんことを───」
グレアムは撃ちながら、
祈りの言葉をつぶやいていた。
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