偵察任務2(王国軍対帝国軍)
「間もなく帝国領内!!」
ルカ曹長の口ぶりが変わった。
「…うむ。」「了解!」「おっしゃー!!」
先ほどまでの砕けた雰囲気が一変し、
隊員たちの目に力がこもる。
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彼らに与えられた任務は、
「威圧偵察」。
しかし、偵察とは名ばかりで、
実際には敵との交戦を目的とした、
純然たる戦闘行為だ。
この日もレイクロッサ基地司令部より、
彼らに「威圧偵察」任務《オペレーション》の命令が下された。
彼らはいつも通り任務にあたる。
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グレアム隊前方眼下に大河”ボグドー川”が現れる。
これより先は帝国領である。
「スラスター限界航続時間、
残り六百四十秒、
離脱可能時間まで三百二十!!」
シャマ上等兵がみなへ告げた。
「よし!!」
グレアムの声に熱が入る。
「我が隊は敵国領域へ侵入!!
これより敵国第一迎撃網、各員、戦闘準備!!」
「さあ、帝国のみなさん、
いつでもいらっしゃい!!」
シャマが威勢よく言い放つ。
しかし、敵帝国部隊は沈黙したままだ。
「隊長!!
…いつもと…様子が違います。」
「ルカ、どういう状況だ。」
グレアムは落ち着いてたずねた。
「森の先の敵照射反応ですが…、
ほとんどありません!」
「ほとんどない…、
いつもなら≪ダントン≫の森を抜けると、
第一迎撃網として、
移動式簡易火撃魔砲台(ふみだい)が、
しっかりと待ち構えているはずだ…。」
「隊長、どうしますか!?」
「敵の罠の可能性もあるか…。」
グレアムの脳裏に、
一瞬、退却の文字が浮かぶ。
しかし、自分の勘だけを根拠に、
退却命令は出せなかった。
「…このまま進軍!!」
「当然っすよ!!」
「対空防御制圧に入る。
このまま第一迎撃網を突破する!」
「「「了解!」」」
「各機フレアバルーン展開!!」
ブルージュ・ZWEIリアアーマーの兵装ポッドから、
格納されたフレアバルーンが、
次々と射出される。
グレアム隊4機の周囲に、
それぞれ3機分のフレアバルーンが展開。
これにより、敵基地レーダーに映る
グレアム隊は、
中隊規模となった。
─────フレアバルーン─────
敵レーダー攪乱兵器。
敵地対空攻撃を分散化し、
弾幕を薄める戦術補助兵器。
疑似ライデンシャフトのバルーンに、
使い捨て型の熱源発生装置が組み込まれている。
高精度バルーンで作成され、
高高度上の望遠レンズからでも、
敵機と誤認させることが可能だった。
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ドゴオオオ!!!ドオオオオン!!!ドゴオオオ!!!
帝国領土側のダントンの森を通過すると
移動式簡易火撃魔砲台の砲撃が、
グレアム隊めがけて一斉発射される。
「敵砲撃!!!」
「ようやくお出迎えか。」
「あたるかよ、そんなもんが!」
シャマ機は機体の軌道を変え、
空中戦機動の乱数回避機動に入る。
不規則に乱舞する機体は、
飛襲する砲撃をすり抜ける。
敵機砲撃は、
休むことなく、
グレアム隊めがけて撃ち続けられた。
ドフウウウウ!!!ドゴオオオン!!!
敵砲撃が、
フレアバルーンに着弾した。
「はずれだっつーの!!。
この程度の弾幕じゃ、
オレたちは止められないぜ!!。」
「シャマ!気を抜くなよ!!」
「抜きませんよ!!」
「全機速度上げろ、一気に抜ける!」
グレアムの一言で、
隊機はさらに航行速度を上げ、
砲撃の中を進む。
機体速度を上げながら
グレアムは、操縦桿のトリガーに指をかける。
王国軍が誇る最強火器兵器
”MRK-16・280mm魔導砲”の銃口が、
ダントンの森へ向けられる。
グレアムは躊躇なくトリガーを引く。
ドシュウウウ!!!
魔導砲から放たれた紅い閃光が、大気を切り裂く。
ドシュウウウ!!!ドオオオオ!!!ドシュウウウ!!!
シャマ、ルカ、マイスも、
グレアムに続き魔導砲を放った。
大地が燃え、
そこからいくつもの黒煙が立ち昇った。
「見たかグレアム隊の魔導砲撃!!」
調子づくシャマ上等兵。
グレアムたちの反撃をうけ、
帝国軍自走砲は沈黙した。
立ち昇る黒煙を後にし、
空中を推進し続けるグレアム隊4機。
「───本部管制
こちらグレアム隊、
隊は敵第一迎撃網を突破。
さらに敵領域内に深く侵入を試みる───」
「───こちら本部管制、
レーダー上に敵機確認!!
警戒せよ――」
その声にルカがいち早く反応する。
「ルーンレーダーに大型魔導反応!!
その数5!!!
移動速度から、
帝国軍”ガタカⅡ・タイプ”
と推測します。」
それを聞いたグレアムは、
「ようやく、おいでなすったか…、
さぁ!ここからが本番だ!!」
みなへ檄を飛ばした。
「「「了解!!」」」
帝国領域内で、
ライデンシャフトによる
戦闘の火ぶたが切られようとしていた。
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