その名は魔導機兵(ライデンシャフト)3
(ここで異世界転生モノの説明しても、
すぐにはわかってもらえないか…。)
オレはため息をつきながら、
ゴロンと床に横になった。
<タツヤの言ってる異世界転生の話は、
正直よくわかんないけど、
だからってさ、なんでいきなり寝っ転がるの。>
「なんか、色々考えてたら、
疲れちゃった、とりあえずゴロゴロさせてもらいます。」
<え──────!!>
オレはリゼルの不満を聞かなかったことにして、
そのまま床に寝っ転がる。
ぼんやりとオレの頭に浮かんだのは、
この世界での”自分”についてだった。
(オレ、あの巨大ロボットに乗るのかな…。)
<タツヤもパイロットになりたいの!?>
すぐさまリゼルが嬉しそうに返事をする。
(いや…、そういう訳じゃなくて、
オレなりに今後の展開を予想してるわけで…。)
<展開を予想…。>
(あ、あんまり気にしないで。)
<ふーん…変なの…。>
(整備係って可能性も…。)
<僕はパイロットがいいな!>
リゼルはどうしてもオレに絡んでくる。
(き、気持ちはわかるけど、
パイロットってさ簡単になれるの?)
<なれないよ。>
(そ、そうだよな、
パイロットって色々大変そうだもん。
オレも異世界で巨大ロボットに乗るよりは、
もっと簡単な職業で楽したいなー。)
<…またその話。>
(あーあ、巨大ロボットの操縦スキルとかゲット出来てたら、
パイロットもありなんだけど。
今のオレには、異世界の文字を読むスキルしかないからなぁ。)
<…操縦スキルなら持ってるよ。>
オレははっきりと、
リゼルの自信に満ちたつぶやきを聞いた。
「操縦出来るの!?」
オレは驚いて上体を起こした。
<たぶんだけど…。>
「…たぶん?」
<あの装置!
あの装置でいっぱい練習したから、
僕は絶対操縦出来るんはずなんだ!!>
(…す…すごい自信。
だけどあのオンボロで練習したからって、
ホントに本物を動かせるのか…。)
オレの頭を本音がよぎる。
<オンボロだからってバカにしないでよ!!
すごい練習したんだから!!
絶対に操縦できる!!>
オレの心の声にリゼルが激しく反論する。
「ま、まぁ…落ち着いて、
あの装置が動いてたとしても、
再現度の問題もあるし
絶対操縦出来るとは…。」
オレはリゼル少年の発言を、
ただの強がりとしか思えなかった。
その時だった。
「……ゼル」
下の部屋から低い声が聞こえた。
<じいちゃんだ!>
リゼルがオレに教えてくれる。
(ど、どうしよう?)
<下に降りよう。>
オレはリゼルに促されて、
恐る恐る天井から顔を出す。
そこには、よく日に焼けた肌に、
真っ白なあごひげを蓄えている、
イメージ通りの老爺が立っていた。
(すっげー、昔話に出てくるような
じいちゃんオブ・ザ・じいちゃんだ。)
そのじいちゃんは、
こちらをじーっとと見つめている。
ちょっとの間があって、
「……リゼル!
…リゼル!!!」
じいちゃんは声を絞り出した。
その瞳からは光るモノが流れ落ちた。
<じいちゃん!!>
リゼルの声がオレの頭にもう一度響く。
しかしじいちゃんは何の反応も示さない。
(そうか……、
声を出すのは、オレにしかできないんだった。)
<タツヤ、じいちゃんに返事してよ!>
(えーと、この老人は、リゼルのじいちゃん、
ってことは、今、オレがリゼルだから、
オレのじいちゃんってことになるのか…。)
オレは少し考える。
(だけどなぁ、見知らぬ老人に対して、
いきなり”じいちゃん”って、
けっこうハードル高いな。
オレにとっては初対面のじいさんなんだもんな…)
オレがグチグチ考えていると、
<もぉタツヤ、そんなに呼ぶのが嫌だったら、
それはいいから、早く降りてよ!!>
リゼルにせがまれて、
オレは慌てて縄ばしごを降りる。
しかし、慌てたオレは、
縄ばしごから足を踏み外して、
見事に落ちた。
「あ””────────────────」<わ────────────────>
そこでオレはあらためて思い知らされる、
何事も慌てちゃいけないと。
床に叩きつけられると思った瞬間、
オレの身体は、力強い温もりに抱きしめられた。
そこは、じいちゃんの腕の中だった。
そして、じいちゃんはオレを力強く抱きしめた。
「まったく、ようやく目覚めたと思ったら、
いきなりこんな無茶を。」
そういうじいちゃんの目は涙であふれている。
「とにかく、よかった…よかった…。」
(はぁ…、助かった。)
<ちょっと、助かったじゃないよ!!
何足踏み外してんのさ!!>
(ごめんごめん。)
オレたちは頭の中で会話をする。
「…よしよし、今日はこれから、
リゼルの回復祝いじゃ!!」
じいちゃんは朗らかに叫んだ。
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