表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

うさぎ--6--

次の日の朝、僕は菜子さんが学校に来るのかどうかを心配しながら、自分の席に座っていた。

平気そうに見えたが、3階から落ちたんだから、どこか怪我をしているかもしれないし、

ぬいぐるみを失くした事で、精神的にとても不安定になってるように見えたからだ。

そんな事を思いながらぼーっとしていると、教室のドアが開き、菜子さんが入ってきた。

そして、無表情で、黙って僕の席に近づいてきた。

真っ直ぐ僕を見て、歩いてくる。

「おはよう、あっくん」

…は!?

「え…何?」

菜子さんは、ニコニコと、けどどこか冷たいものを感じる笑顔を見せ、僕に言った。

「今日から、君はあっくん。菜子だけのあっくんだよ」

あっくん…?

敦だからか…?

親戚に『あっちゃん』とか呼ばれた事はあるけど、そう呼ばれたのは始めてた。

いや、そんな事より“菜子だけの”って、何だ…?

なんで昨日の今日で、こんな事言われてるんだ…?

「ね、あっくん」

菜子さんは、その可愛い顔を、思いっきり僕の顔に近づけてきた。

「ゆ…雪村さん…?」

ドキドキして、まともな事が言えない。

さっきの言葉の意味を聞かなきゃいけないのに。

「よろしくね」

息がかかる距離で、一言そう言われ、菜子さんは顔を離した。

僕はまだ心臓の高鳴りが抑えられず、平常心になれなかった。

「それじゃあ、またお昼休みにね」

菜子さんは、無表情に戻り、自分の席に向かっていった。

「おい、敦」

一部始終を見ていた友人が、僕に話しかけてきた。

「今の、雪村の、何?」

「…僕が聞きたいよ…」

「変な格好の奴だと思ってたけど、言う事も変なんだな、雪村って。

 顔は可愛いのに勿体ねーなー」

「………」

「で、お前ら何かあったの?」

…あったのだろうか…。

色々あったような、何もなかったような…。

「解らない…」

「雪村が誰かに話しかけるの初めて見たよ、俺」

「ああ、そうだね…」

「しかし、なんかヤバそうだな、雪村って」

「ヤバそう…?」

「ジャンキーみてーじゃん」

「ジャンキー…?」

「ヤク中の事」

「ああ…。…ちょっと待ってよ、どのへんがヤク中みたいなのさ…」

「目がイッてるのと、言動が変」

「…それだけ?」

てゆーか、目イッてるかな…?

「それだけだけど、それだけでも立派にヤバいと思うよ、俺は」

……そのヤバい女の子を好きなんだよ、僕は…。

昨日の事があって、なんで今でも好きなのかよく解らないけど…。

それでも、近づいた菜子さんの顔が脳裏に焼きついて離れない僕は、

菜子さんが好きで好きで仕方ないらしい。

…なんでだろ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ