うさぎ--2--
この女の子の名前は雪村菜子。
クラスは、僕と同じ。
彼女はクラスで目立つ事がなく、いつも1人でいた。
だが、その“目立たないところ”が、逆に目立つような女の子だった。
彼女は、クラスと溶け込もうなどとは一切しない。
学校行事は参加せずに休むし、
授業中、先生に名指しされても『解りません』と一言言って終わる。
新学期の始め、何度か菜子さんに数人でかたまった女子が話しかけているのを見た事がある。
だが菜子さんは何も言わず、その女子達を無視していた。
それから、菜子さんが誰かと話しているのを、僕は見た事がない。
菜子さんは背がとても低く、顔は一見小学生かと思うほど童顔で、
腰までありそうな黒くて長い髪を、高い位置で2つ結びに縛り、
学校指定のセーラー服の白いスカーフを赤に染め、
(他の女子は、そのまま白いスカーフをつけるか、自分で買ったリボンをつけている)
女子のほとんどが紺のハイソックスを履いている中、
彼女は、黒と白のボーダー柄のニーソックスをはいている。
羽織っているカーディガンのポケットには、いつも小さな兎のぬいぐるみが入っていた。
授業中にだけ聞ける声は、アニメの声かと思うほど甲高い。
そんな、“普通の女子”とは違う外見が、目立たない彼女を、目立たせていた。
校則に違反した格好をしているから、先生に目をつけられているというのもあるが。
問題行動をとった事があるなんて噂も、彼女を更に目立たせている。
……そして、彼女は――――
僕が、初めて見た時から、ずっと想いを寄せている相手だった。