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第13話『英雄の帰還と不穏な空気』


 兄ジャックの入試結果から1週間が経ち、兄達御一行(ごいっこう)は無事リネレー村に帰ってきた。

そんな兄達を村の民は大勢で出迎え、「村の英雄(えいゆう)の帰還だ~!」と大はしゃぎし、兄ジャックはいつも通り母マリーナにピョンピョン跳ねながら抱き着かれて胸が上下に……うらやまけしからん状態で、しかもいつも凛々(りり)しい立ち振る舞いをしていた兄ジャックも珍しく頬が緩み切っていやがり…。

てかヤバい…大衆(たいしゅう)面前(めんぜん)手前(てまえ)エドガー兄は我慢しているようだがエドガー兄の目が完全にキレている。そんな中父フィリップは帰ってくるなり「エブゾフェア大公に呼ばれたから残念だけど祝賀会(しゅくがかい)はまた今度だ!」と言い残し家族を放っておいて1人さっさと出かけてしまっている。

といういつも通り皆好き勝手でカオスな状況だが、俺ことアランは兄ジャックの帰還に素直に嬉しく思いつつも今の状況を楽しんでいた。



 数日が経ち家族を放っておいて勝手に出かけた父フィリップが帰ってきた。


 父フィリップは帰ってくるなり稽古(けいこ)の途中だった兄ジャックを連れて屋敷の書斎(しょさい)に入っていった。

 また何か(くわだ)てているのだろう…俺の話も出そうなので今回も聞き耳立てたかったが、母マリーナと魔法の稽古中の為残念ながら不可能だ…。


 暫くして父達が稽古場に戻ってきて父フィリップが俺たちに言った。


 「帰ってきて直ぐですまんが私は公務(こうむ)でひと月程エブゾフェア公国に行かなければならない。話すべき事は全てジャックに話してあるから留守の間は頼んだぞ! それとジャックの祝賀会だが、申し訳ないが今回はアランの誕生日会と合わせて行う事にした。それまでには必ず戻るから安心してくれ。 それとジャック、後の事は頼んだぞ。」と言い残し出かけて行った。


 ええ!? 帰宅したと思ったらもうまた出かけるのか…。まぁ別に居なくても気にしないが…、というより他人を操り人形の様に扱おうとする父に関しては嫌いなので正直居ない方が有難い。 自衛の為に兄ジャックに吹き込んでいる企みの情報だけ欲しいけどね…。 前世で言う「出張(しゅっちょう)」の事を思い出しながらも「少しは母マリーナの事考えろよ」と思った。


 「さっそくだけどアラン、ちょっといいかい?」

 兄ジャックに呼ばれた、父との企みで俺を上手く使おうと考えているのだろう。


 「ジャック兄何でしょうか?」

 俺は軽く警戒しながらも返事をする。


 「こないだアランが話していた『公衆浴場(こうしゅうよくじょう)』なる『銭湯(せんとう)』や『温泉(おんせん)』の発想について詳しく教えて欲しいんだけどいいかな? 手始めに屋敷に取り入れて使用人達の環境改善(かんきょうかいぜん)(つと)めたいんだ。 それと父と相談してこの村にも取り入れて村の住みやすさと税収を含めて運営を検討しているんだ。アランの知識と発想は僕よりも優れているから是非力を貸して欲しいんだ。」


 成程、てか風呂がこの世界にとって貴族以外無い事や貴族なのにデュフォール家に風呂が無い事を愚痴(ぐち)って色々言ってた事聞いてたのか…、それにしてもよく周りを見ているな、直接話した訳でも無いのにジャック兄も抜け目ない。 屋敷の公衆浴場設営は使用人を含め、より良い環境になるし、俺もわざわざ岩場にある自作風呂入り行く必要無くなるのはありがたい。

 ――まぁコソ練で岩場行った際は今まで通り使うけどね。


 「分かりました。僕で良ければ協力します。」俺はジャック兄に付いていき、書斎にて知識を提供したのだった。


 ――言っておくけどこれは操られてなんかナイゾ?俺にも利益が有るし村の発展にもなるからダゾ?




――――




 「8007年12月21日」


 あれからが月日が経ち今日はアランが3歳になる誕生日と兄ジャックの入試合格祝賀会だ。

 俺は一日たりとも怠けることは無く魔法の稽古を受け続け、毎日魔力を上げる効果がある『精神統一(せいしんとういつ)』も欠かさず行っている。暇な時はジャック兄に『公衆浴場』について知識を提供していた。

 父フィリップも数日前に帰って来たがその際に『エブゾフェア公国』を治める『エブゾフェア大公』も連れて来ておりどうやら祝賀会に参加するらしい。 自分の国の大公を初めて見たが『厳格(げんかく)そうで接しにくそうな小奇麗(こぎれい)なおじ様』というイメージを受けた。


 祝賀会(けん)誕生日はどうやらお昼から行われるようで、朝からジャック兄は綺麗な貴族服に身を包んでおり長男らしくキッチリしている。対称的に俺はいつも通りの服であるが俺の誕生日会ならいざ知らず兄の祝賀会も含まれているのに俺はこの服装のままでいいのであろうか…。釈然としないまま俺は祝賀会の会場の準備を手伝っていた。


 「ア~~ラ~~ン~~♪♪」

 可愛い声が聞こえたと思ったら後ろからいきなり抱き着かれた。


 「かあさま、どうしたのですか?」


 「準備を頑張ってるアランを見てたらつい抱き着きたくなっちゃったの♪」


 何を言っているんだこの母は?嬉しすぎるじゃないかぁ!それにしても良いにお…ナンデモナイ…。


 「アランもその服装じゃ駄目よ? 洋服用意するから母の部屋に行こ?」

 母マリーナはそう言うと手を繋ぎ強制的に部屋に連れていかれた。


 「貴族服はまだ用意出来ていないけどアランは魔法が息子たちの中で一番だから私のお古のローブをあげるわ!」


 流石に普段の服ではマズいのであろう。しかし母マリーナのお古のローブって女性用じゃないのか?流石に女装は嫌なのだが…。それに3歳で着れるローブがあるのか?てか母マリーナも同じ頃にはローブ着てたって事になるよな? てことは俺と同じ様な歳で母も魔法が使用出来たって事じゃないのか? この母は女性として完璧な上に子供の頃からも天才だったのか?


 俺が勝手な妄想を膨らませる中マリーナは押し入れから1つのローブを取り出した。 そのローブはフード付きで紫色だった。


 「どう?綺麗なローブでしょ? 私の幼少期に着ていたお気に入りローブなんだからっ!」


 「かあさま、有難う御座います!」俺は手短に感謝を表しローブを着てみた。


 するとローブの袖を通した瞬間フワッとした何かに包まれた感じがして暖かい。しかも血行も良くなってる感じがする。だが袖口が広く空気の出入りが有りスースーして少し落ち着かない。慣れれば気にならないのかもしれないが…。


 「かあさま、ローブ着た瞬間何かに包まれた感覚が有ったのですがもしかして魔力ですか?魔力の循環(じゅんかん)と共に体が暖かくなってきているのを感じます。」


 「あらあら♪ 流石私のアランだわ♪ そのローブはとある有名職人のオーダーメイドの特製ローブなのよ! 『魔力の糸(まりょくのいと)』を使用してるからローブ自体が魔力の(かたまり)なの! 小さい頃のみしか着れないから本当は作るのもったいなかったんだけど私の母が買ってくれたのよ。 当時の私にはローブを使いこなせず宝の持ち腐れだったけど、アランなら絶対に使いこなせるローブだわ!」


 「かあさま、そんなに良いモノを僕にいいんですか?」

 母マリーナからマジで良さそうで高そうなローブを貰ったみたいで、前世でも親からそんなに良い物を貰った事が無い俺にとっては驚きと共に血行が良くなっているせいか何故か心拍数(しんぱくすう)が上がってドキドキしっぱなしである。コレ恋ジャナイヨネ?…


 「あらあら、うふふ♪ 私からのアランへの誕生日プレゼントだからいいのよ~直ぐに成長しちゃって私も着てた期間短かったし綺麗でしょ? アランも直ぐ成長すると思うから着れる期間短いと思うけど存分に着て頂戴♪ なんなら孫にも着せてあげてね~。」


 孫とか話が早すぎるぞ…。 俺は母から貰ったローブを身に着けた俺は試しに精神統一をしながら魔力の循環をしてみる。

 するといつも以上に魔力の循環がしやすくなり魔力が()りやすい。 更に魔力量を多くしてみると「ブワッ」っと体の中の魔力が溢れ出すと共にローブに魔力が(おお)い更に体が暖かくなった。

 それを見た母マリーナは目を丸くしている。


 「アラン?… それいつ覚えたの?」


 どういう事だ?何を覚えたとか全然分からないんだが、この服自体に自分の魔力を(まと)わせる行為の事を言っているのであろうか?ただローブのお陰で魔力の循環をしやくすなったので、魔力量を多く込めて循環してみたら纏えたみたって感じなのだが…。


 「かあさま、それって今みたいに魔力を自分の体を纏ってる状態の事でしょうか?」

 確証はないが聞いてみた。


 「え、ええそうよ。 確かに価値が高いローブな程魔力を持っているから自身の体に魔力を纏いやすくはなるけど初めてローブを着て直ぐに魔力を体中に纏えた人は私は初めて見たわ…。 この魔力量は私や母、親友や師匠(ししょう)以上よ? アラン、貴方はもしかしたらジャック以上の存在かもしれないわ! 今日の誕生日で【真眼の水晶(しんがんのすいしょう)】を用意してあるから祝賀会時にお披露目しましょう! 絶対に凄い結果になると思うわ! それと今は魔力を込めるのは無しよ、周りに置いてある生活魔力器具(せいかつまりょくきぐ)が壊れてしまうわ!」


 話していた母はいつもと違いかなり真剣な表情をしていた。俺ってもしかして『精神統一』含めコソ練頑張りすぎて強くなり過ぎたか? いや分からない、前世でどれだけ努力しても報われなかった俺が軽々と成長出来ているとは限らない。それに世界は広いしこの異世界の事を全て知っている訳では無い。比較対象が身内だけなので待ちに待った今日の【真眼の水晶】でステータス確認しても正直分らない。ただ、今後も得意分野を極めていく方針は変わらない。

 俺は色々思考しながらも母マリーナの言う通り魔力の循環を辞めた途端、体全体に覆われていた魔力が途絶えるのを感じると共に心拍数が下がった。これも魔力の循環の際に良くなった血行の良さが下がったからであろう。この貰ったローブによって更に知識と経験がかなり増えた気がする。


 「ドンドン!マリーナはいるかい?」


 俺が思考を(めぐ)らしている中、母マリーナの部屋に誰か来たようだ。

 ――それにしても声が年寄りだな…そんな人屋敷の使用人に居たっけ?


 「あらあら、もしかしてエルザ母さん? 本当に来てくれたの!? 今すぐ開けるわ!」


 どうやら「エルザ」という人物は母マリーナの母らしい、話に聞いたことは有るが会うのは初めてである。

 ドアを開けると金髪に所々白髪(しらが)が見られる元々美人であったろう顔立ちな初老の叔母さんが入って来た。


 「フィリップが居るから本当は来たくなかったんだけどね、可愛い孫の為に来てやったわ! おお!お前さんがマリーナが言っていたアランか? 初めまして、お前の祖母であるエルザだ。 今まで会いに来れなくて悪かったね、それにしてもお前さん本当に黒髪(くろがみ)なんだね…」

 と言いながら祖母はまじまじと俺を観察していた。


 「初めまして、エルザおばあさま。僕もかあさまよりお話では凄い魔法使いだと聞いておりお会いしたいと思っておりました!」


 「おやおや礼儀の正しい子だねぇ、マリーナに似て良い子だねぇ。それにしてもマリーナ、この子の魔力は…。」


 「ええ、母さん凄いでしょ? 自慢の息子なんだけど凄すぎて私でも計り知れないのよ…。きっと予言の子よ!」


 「そうだと良いわねぇ、この子は見込み有りそうだしターヒティア帝国学校なんか行かないでルテイト魔法学校で魔法を極めたらどうだい?」


 「駄目よ! 予言の子なら魔法だけじゃ無いハズだから帝国学校の方がいいわ!」


 「そうかねぇ、学校が良くてもあそこの国の貴族は人として終わってるから正直お勧めできないよ。」


 なんか進路に関して親子で考え方が違うみたいだった。それにしても『予言の子』か…。うる覚えだが転生時にそんな話が出たような…。


 そんな久々に再開を果たした親子の会話を聞いてる中いきなり部屋のドアが開けられた。


 「マリーナ、会場の準備が整ったぞ! アランも一緒か!そろそろ祝賀会始めるから準備して……、叔母様ご無沙汰(ぶさた)しております…。」


 マリーナの母エルザが来ている事を何も知らない父フィリップは長男ジャックと共に部屋に入ってくるなり露骨(ろこつ)に顔を(ゆが)めた。


 「ふん、今更ちゃんと会話しようだってそうはいかないよ、私は孫の為に来てやったんだ。 お前さんがジャックかい? 帝国学校合格おめでとう、『最優秀合格者』と『飛び級合格者』2つも貰ったんだってね?凄いじゃないか!だが慢心しすぎて誰かさんみたいにならないように注意するんだよ?」


 「叔母様、ジャックは優秀な子ですから私の過去を引き合いに出さないでもらってもいいでしょうか?」

 何か嫌なところ突かれたのか父フィリップも軽く抗議(こうぎ)する。


 「あんたに似たらろくな人間にならないから忠告してやってるだけさ、何が悪いのさ?」


 誕生日(けん)祝賀会前なのにも関わらず何やら不穏(ふおん)な空気が流れていて気まずい…。

 それにしても父と祖母の不仲(ふなか)は聞いていたがここまでだったとは…、過去に何が起きたのか興味があるが俺の予想では父フィリップのせいだと予想しているけどね。


 2人の様子を見てなだめに入るマリーナとジャックとその光景を見て不安に思うアランであった。

小説執筆初心者ですが見てくださり有難う御座います(*‘∀‘)ノ

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