退屈
「俺?ぶっちゃけホストやってる時の方が金はあったけど、やっぱモテるのはホストよりも公務員っしょ」
誰かに警察になった理由を聞かれたらそう答えている。
そりゃそうだ、金はあっても将来不安なホストよりも、将来安定、社会的信頼抜群の公務員方がいいに決まっている。
公務員なら他にも市役所とか区役所とか都庁や県庁だってあるけど、頭が悪い俺には警察官くらいが丁度いいのさ。
「そんなこと言っても、やっぱりホストの方が楽しそうでいいと思うけどね、僕は」
そう言ったのは同期の橘 琉華。こいつの方がよっぽどホストみたいな名前していると思うんだが。
「お前みたいな隠キャには無理無理、真面目な公務員ほ方がよっぽど似合ってるぜ?」
「相良、僕のことをまた隠キャって言ったら班長にチクるからね」
俺、相良樹貴は3年前までホストをしていた。
とある出会いで警察官になることになったのだが、警察官になって最初に配属になったこの交番、暇で仕方ない。交番の事務デスクに突っ伏しながら橘と駄弁る。
「俺さぁ、学校卒業してすぐ刑事になれると思ってたんだよねぇ・・・」
「まぁ、最初に交番勤務になるってのはあんまり知られてなかったよね」
橘はパソコンでぱちぱちと何かを打ちながら答えた。警察ってこんなに事務仕事が多いと思ってなかったんだよなぁ。
「何してんの?」
「巡回しててさ、気になる話があったからデータにしておこうと思って」
「ふーん、真面目なこってっすなぁ」
「暇ならちょっと外に出てきなよ、そろそろ下校時間だよ?」
ちょうど15時前、そろそろ近所の小学校の下校時間だ。
「まぁ暇だし、ちょっくら行ってくるかねぇ」
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「あ!チャラケー!!」
交番前で立っていたら下校中の小学生達が見えた。小学生の集団は俺を見つけるなり大声で指をさす。
「るせぇ、気をつけて帰れよ!」
「チャラケー!アメくれよ!!」
「あ?ねーよそんなもん。俺が欲しいくらいだわ」
「こないだのお巡りさんはくれたぜー!?」
誰だよガキに餌付けした奴は。
「いいからまっすぐ家に帰れ、今すぐにな!」
「ちぇーつまんねぇの!じゃぁなチャラケー!」
「チャラケー言うな!また明日な!」
今日は当番勤務だから、明日の朝まで仕事だ。明日の朝またこのガキ達と会うことになる。俺は下校するガキ達を見ながら、無線機に繋がるイヤホンを外し呟いた。
「平和だねぇ。できればこのまま明日の朝まで何もないといいな」