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終わらない恋 side Rena

 お姉ちゃんの元気がない。

 いや、元気が無いと言うのは語弊がある。別にエラは冗談を言えば笑うし、仕事にも真面目に行っている。

 だけど時々、とても寂しそうな顔をする。

 憂いに満ちた横顔をこの一年で何度見ただろう。

 レーナは一緒にランチを食べる姉を見遣った。

 姉のエラはやっぱりぼんやりと外を眺めている。

 銃撃事件で姉は彼氏と別れた。

 良い人だった。数回しか会ってないが、姉にいつでも優しかった。まさか母親がプリンセス・エイブリーだとは思わなかったけれど、言われて見れば顔立ちが似ていた。コブランカレッジに通っていると言っていたからきっと頭も良いのだろう。

 その彼氏と別れた時、姉は泣きに泣いた。病室に帰ってきた瞬間に泣き出されて、すわ撃たれた肩が痛いのかと慌てたが、蓋を開けて見れば振られたという。理由は不明。

 旅行行くほど仲が良かったはずなのに?と疑問だったが、どうやら本当に振られたらしく、姉はしばらく沈んだ顔をしていた。病室にお見舞いに行くと、泣き腫らした目をしていた事もあった。

 レーナからすれば、姉は彼を狙った弾丸に誤って撃たれて大怪我をしたのに、その姉を振るなんてとんでもない男だ。普通なら謝り倒して何度でもお見舞いに来るべきだろうに、あれっきり姿も現さない薄情な奴。優しい人だと思っていたのは間違いだったらしい。

 彼のせいで姉は酷い目にあったんだと言った母に姉は怒り、父もそれは違うと宥めていたが、今は母が正しい気がする。

 だからレーナは怒った。そんな薄情な奴、忘れようと姉に言った。

 姉は……エラは寂しそうな、泣き出しそうな顔で頷いただけだった。

 ああ、姉はまだあいつが好きなんだと理解するには十分だった。

 理解できない。酷い男なのに。

 あの日から大好きな姉はずっと未練を引き摺っている。

 振られた相手に未練が残る気持ちは分からないでもない。振られた理由が不明なら未練も残るだろう。

 だからしばらくはそってしておいたのだ。

 なのに、一年経ってもまだ姉はあの男を忘れていない。

 その事を大学で愚痴ったら、出会いの場であるパブに連れていったらと提案されて、レーナは騙し討ち的に姉を誘ってそのパブへ連れて行った。

 姉は怒りこそしなかったが、ずっと物憂げな顔で座っていた。姉の憂いを帯びた顔はどうやら男の子達には魅力的に見えるらしく数人が姉に声を掛けていたが、結局姉は話しかけてきた誰かと連絡先を交換する事もなく、素っ気無い態度で話に相槌を打ち、ソフトドリンクをちびちび飲んでいただけだった。

「お姉ちゃん、彼氏できた?」

「できるわけないじゃない」

 間髪を容れずに返ってきた答え。

 嘘つき。本当はできないんじゃなくて、作る気がない癖に。

 せっかくキレイなのに。そりゃ、芸能人ほど美人じゃないし、十人並みと言えばそうだけど、姉はキレイな人だとレーナは思っている。ちょっと、いやだいぶ魔石馬鹿だけど、料理は好きだし、真面目で一途だし、愛嬌だってある。故郷で姉は祖父母世代に人気だった。

「……彼氏、作んないの?」

 ダメ元でもう一度聞く。

 姉はそっと視線を外に向けた。またあの物憂げな顔。

「いらないかな。……今は修行の方が大事」

「修行しながらでも恋愛はできるでしょ」

「あは。私、二つの事を同時進行できるほど器用じゃないよ」

 嘘つき。アルフィーさんと付き合ってた頃は同時進行してたんでしょ。

 いつになったら、姉はあの男を忘れてくれるんだろう。

「レーナはどうなのよ。彼氏できたの?」

「仲のいい男友達は数人いるけど、どれも付き合うって感じじゃないのよねぇ」

「ふーん。大学はどう?」

「もー聞いてよー。教授の授業が意味不明ー」

 大学の話を皮切りに、他愛ない日常を話していく。

 結局レーナはそれ以上、もどかしく思っている姉の恋愛事情に踏み込めなかった。




本日のみ3話更新です。次、17時。

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