花の日 6
うーん…まあ今のはハンナが悪いからなぁ…。
ロルフはメソメソ泣いている姪っ子を見遣りながら、内心ごちた。
家の雰囲気は最悪だ。アルフィーが分かりやすく怒ったのを初めて見たオスカーやマチルダも、萎縮したのか大人しくなっている。すっかりペットボトルロケットなんてやる雰囲気ではなくなった。頑張って作ったのに。
ハンナに掛けられた二度目の魔法もすぐにロルフが解いてやったが、流石にアルフィーに魔法を掛けられたのはショックだったらしい。一応アルフィーはすぐに解ける魔法を使ってはいたのだが、それは乙女心とやらには関係ないだろう。
ロルフは知っている。ハンナはアルフィーに勝手に理想の恋人像を押しつけているのだ。
アルフィーは親の自分から見てもよくできた息子だと思う。自分の面倒で微妙な身分について、ロルフ達に理不尽な文句を言ってきた事もないし、身を守るための魔法訓練だって真面目に取り組んで、周りの勝手な『万が一に備えておいて欲しい』という期待も理解し、勉強だって頑張って国内最高峰の大学にまで入った。
でも親の自分達はアルフィーがどれだけ努力してきたかを知っているが、たまにしか会わないハンナ達はその努力を知らない。
ハンナ目線で見れば、アルフィーは頭もよく、魔法も得意で、大抵のことは何でもこなせる、その上性格も良いーーーまるで恋愛漫画や小説のヒーローのように見えるのだろう。
しかもアルフィーは我慢強い。ああいう恋愛物にありがちな、ヒロインの可愛い我儘を笑って許してくれるという理想を、アルフィーは我慢強いが故に意図せず叶えてしまっている。
だから余計にハンナはアルフィーに甘える。そしてアルフィーは我慢を強いられ、ストレスがかかっていく。
そりゃあ爆発するな。
分析したロルフは、少しだけ息子に悪く思った。もう少し早くアルフィーを逃してやるべきだったか。オスカーと一緒に図書館にでも行かせてやれば、あんなに怒らなかったかもしれない。
……いや、普段ならアルフィーは簡単に怒らない。
やはりガールフレンドを悪く言われたり、彼女が作ってくれた好物を食べられたり、花の日の予定が狂った(と思われる)のが原因だろう。彼女の事を随分大事にしているのは知っていたのに、アルフィーがあれほど怒る事が予想できなかった。
それにしても破邪退魔の魔石か。
ロルフは改めて、息子のまだ見ぬ彼女について考えた。
ロルフが知っている彼女の情報は少ない。名前、年齢、職業、最終学歴、あと髪の色、そして少なくとも記録に残るような悪事はしていない事、そのくらいか。
だが、破邪退魔の魔石なんてとんでもない物を作った。
実はロルフはアルフィーに魔石を持たせていた事がある。アルフィーは覚えていないだろう、未就学児の頃の話だ。
しかし普通の魔石ではダメだった。相手に魔術師がいれば魔石の守りでは破られてしまうし、一度魔石をすり替えられた事もあって、魔石では危ないという結論に達したのだ。
それなのに、今になってアルフィーの守りに魔石が出てくるとは驚きだ。しかも破邪退魔の魔石とは。
あれは魔力消費量が莫大だからアルフィーがふらふらだったのは本当だろう。なんせ王宮の破邪退魔の魔法を張り直す時は、軍の魔術師達の勤務に調整が入るほどだ。軍で一番強いと言われるグレイ少佐も何度か駆り出されていたが、いつも飄々としている彼が魔力の使いすぎで顔色を悪くしていた。
息子の彼女はとんでもない子かもしれないなぁ。
とりあえず、目下はメソメソ泣いている姪っ子だ。妹が上手く諌め、慰めてくれるといいが。
妹のメリッサが呆れた顔でハンナの隣りに座るのに、それほど時間はかからなかった。
アルフィーの機嫌が悪い。
エラはカウンターに立ち、視線を二階に向けてから溜め息をついた。
昼にやってきたアルフィーは話せば普通だが、何だか機嫌が悪かった。
どうしたんだろう。
気になるが、オンラインの魔術学会とやらでノートパソコンと向き合っているアルフィーに声をかけるのは憚られる。しかも自分は仕事中だ。気になるからといって持ち場を離れる訳にもいかない。
どうしたんだろう、と何度も気にしているうちに少しずつ不安になっていき、自分が何かしただろうか、いやしてないよね?と自問自答が多くなっていく。
おかげで久々に魔法付与で失敗して指先を切ってしまい、絆創膏のお世話になった。
絆創膏を巻き終わった時、丁度オーダーメイドの客が来たので、エラはお茶を淹れようと二階へ上がる。
お湯を沸かし、お菓子を用意していく。
だが、何か上手くいかない。
「あっっつ!!」
今度はカップに注いだお湯が飛び跳ねて、カップを持っていたエラの手に当たった。
慌ててカップを置き、流水で冷やすが熱湯が掛かった肌は赤くなっていた。
「…はあーー……」
もう溜め息しか出てこない。何でいつもカップを置いてお湯を注ぐのに、今日に限って手に持って注いだのか。
ジンジンと痛む手を無視して、とりあえず客にお茶を出そうとお茶とお菓子をお盆に乗せて、一階へ降りようとする。
しかし、カチャと音がして書斎の扉が開き、ひょっこりとアルフィーが顔を出した。
「エラ、どうかした?」
エラの悲鳴を聞いて顔を出したのだろう。アルフィーは不思議そうに首を傾けている。昨日エラが贈ったピアスが揺れた。
「あー…ちょっと火傷しちゃって」
「火傷?」
「お茶淹れてたら手に熱湯がかかったの。大きな声出してごめん。とりあえず、ちょっとお茶出してくるね」
トントンと階段を降りて、工房側に顔を出して幸せそうな夫婦にお茶を出す。
そうしてから店番に戻ると、二階からアルフィーが降りてきた。
「学会終わったの?」
「まだ。どこ火傷したの?」
「ここ」
素気ないアルフィーに手を見せると、彼が手を翳す。治癒魔法を使ってくれるのだろう。
いつも通りだけど、いつも通りじゃないアルフィーに、エラが小さく溜め息をついた瞬間。
「はあー……」
もっと大きな溜め息をアルフィーが吐いた。思いっきり肩も落としている。
「…………え?どうしたの?」
分かりやすく落ち込んでいるアルフィーにびっくりして溜め息も引っ込んでしまったエラが思わず尋ねると、アルフィーが顔を伏せたままで情けない声を出した。
「いや……あんまりにも大人気なかったなって反省してるだけ……」
「?」
よく分からない。
落ち込みながらも治癒魔法はいつも通り掛けて、アルフィーは「仕事頑張って」と声を掛けてから二階に戻っていく。
その背中を見送り、エラは手を目の前に翳す。先程まであったジンジンとした火傷の痛みはもう無い。なんなら魔法付与で怪我した傷も痛くない。
そーっと絆創膏を取ればやはり治されていた。
それにしても大人気ない、って何だ。
うーん?と首を捻りながらエラは店番を続ける。
結局答えは出ないまま、夜の帳が降りる頃、ようやくアルフィーが二階から降りてきた。
「学会は終わったのか?」
「はい。あー長かった」
ルークに問われたアルフィーはぐっと伸びをして答える。
アルフィーが降りてきたので、魔法付与を練習していたエラも店側に顔を出した。
「お疲れ様。長かったね」
「大きな学会だからこんなもんだよ。長いのは二日かけてとかもあるし」
「そうなの?」
学会なんてものに馴染みのないエラからすると、何だか信じられない世界だ。
もうすぐ閉店なので、三人はそのまま雑談をする。
でもアルフィーが学会で学んだ事をあれこれ話してくれるが、エラもルークも話の半分も分からず、疑問符を頭の上に浮かべてしまい、アルフィーが苦笑した。
そんな中、カランとドアベルが揺れた。
「おーい、ルーク」
やってきたのは近くに住む壮年のおじさんで、ゴミ出しなんかで会うし、よくゾーイの店に現れるのでエラも知っている。
とても陽気なおじさんなのだが、酒癖が悪いのが玉に瑕だ。
今日も彼はすでに赤ら顔で、ふらふらとレジカウンターにやってきてルークを酒に誘った。近くの呑み屋ですでに相当呑んでいると見た。
「このあたりの奴ら集めて、適当に呑んでるんだ。ルークも来いよ」
「まだ閉店してないだろう…」
「もうすぐ閉店だろ?固いこと言うなよぅ」
むう、と唇を尖らせた彼はレジカウンターに凭れ掛かる。全然可愛くない。
しかし、彼はエラに目を止めるとニカッと笑った。
「じゃあエラちゃん連れてこうかな。お酌してくれ」
「「は?」」
剣呑な声を出したのはエラではなく、アルフィーとルークだ。
「…行きませんよ」
アルフィーとルークの機嫌が急降下するのを感じながらエラは普通に断る。
だって彼は本気でエラの事を誘っているわけではない。エラを誘えば、心配性のルークがエラを巻き込まない為に酒の誘いに乗ると分かって言っているのだ。
「えー?いいじゃないか。若い女の子がいればおじさん達も嬉しい…」
「おい、毎回エラを連れて行こうとするな」
「いいよなぁ、ルークは。こんな可愛い弟子が来てくれてよう…オレんとこなんか、可愛くもない倅は出たったきりだしよう…よし!呑もう!」
「何がよしだ!」
「じゃあエラちゃん!来てくれ!なんならウチの末息子の嫁に来てくれるなら大歓迎だ!」
「やかましい!誰が可愛い弟子をお前の放蕩息子にやるか!」
「うぉーん!オレも可愛い娘が欲しかったよー!エラちゃん!一緒に呑も…」
「行きませんって…」
「分かった!行ってやる!行ってやるからあんな所にエラを誘うんじゃねえ!」
「よっしゃあー!じゃあシンディも呼んでくれ!みんなで呑むぞ!」
「はあ……」
ルークが溜め息をついて頭を抱える。
そしてちら、とエラを見て申し訳なさそうに目を伏せた。
「エラ…店頼んでもいいか」
「いいですよ。もうすぐ閉店ですし」
エラはけろりとしたものであっさり承諾する。
ルークはまた一言謝ってから奥に引っ込み、鞄を持ち出すと、まだエラに「今度一緒に呑もう」「全部奢るからいつでも声掛けてくれ!」と絡むおじさんを引き摺って店を出て行った。
「あー騒がしかった」
「…あの人、いつもあんな感じなの?」
剣呑に問うアルフィーに、エラは苦笑しつつ工房の方へ戻ろうと足を踏み出す。
「そうよー。店長とお酒呑みたいと毎回私を誘うの。店長って絶対に断るから、私を誘うフリをして店長を誘い出してるのよ。本気で私なんか誘ってないのに」
「どうだか」
工房側に付いてきたアルフィーが不機嫌そうに答えるので、エラは意外に思いつつ首だけアルフィーの方を向けた。
「本当よ?私なんか絶対に誘ってないわ」
「………はあ…」
え、溜め息?
何で溜め息吐かれてるのか分からず、エラが胡乱気に振り返るより先にぐっと体を力強く引かれた。
「わっ…」
思わず悲鳴を出し掛けるが、引っ張られた先でアルフィーの体にぶつかり、そのまま抱き竦められる。
「ちょ、アルフィー!?」
突然の行動に驚いて身を固くすると、丸めた肩口にアルフィーが頭を預けてきた。
そのまま何をするでもなく、彼はエラを背後から抱きしめたまま動かなくなってしまう。
「…アルフィー?」
何だか様子がおかしいので、そろりと声をかけるとまたアルフィーは大きな溜め息をついた。
「…どうかしたの?」
「…………すっごい情けない話してもいい?」
弱りきった声がエラの耳に届いた。
抱きしめられているせいで身動きが取れないエラは、視線だけアルフィーの方を向ける。
「何?」
「…従妹が」
従妹?
「その、腹立つ事言うから」
「うん」
「つい、魔法使っちゃった」
エラは目を瞬いた。
「…………はあああぁ…」
また大きな溜め息を吐くアルフィーに、今日の不機嫌そうなアルフィーの様子が繋がる。
「…それで何か様子変だったの?」
ストレートに聞くと、アルフィーが頷く。
「従妹って昨日の三人兄弟よね?どの子と喧嘩したの?」
「一番上」
あの子か。
エラは昨日を思い返して、妹と同い年くらいに見えた濃い金髪の女の子を思い出す。
「魔法って、攻撃魔法でも使ったの?」
あんまりにも落ち込んでいるから、てっきり怒り任せに魔法で暴力でも振るったのかと問うが。
「…さすがにそれはしてない…」
落ち込みながらの答えに、エラは片眉を上げた。
「じゃあどんな魔法使ったのよ」
「閉口の魔法」
その答えにエラは拍子抜けしてしまう。
「そんなの、子供の頃によく悪戯で使う魔法じゃない」
声が出なくなるだけの魔法で、子供がよく悪戯で使う、エラにも覚えがある魔法だ。
昔は隠れながら友達や妹にかけて、突然声が出なくなって驚くのを見て笑ったものだ。別に大した魔法ではないし、解くのだって簡単だ。
まあ、アルフィーが掛けたら強力な魔法になるのかもしれないけれど。
そんな事を考えていると、アルフィーの沈んだ声が耳元でした。
「でも、年下相手に大人がなかったなと…今反省してる………あー…叱られるな、これ」
「叱られるって誰に?」
「母さん。あとじいさんとばあさん、かな」
「えっと、お母さん側の親族って事よね?そんな叱られるような事なの?」
「うち、騎士道精神にうるさいから」
「……なるほど」
なんとなく王宮側の親族というだけで納得してしまう。
「…ごめん、甘えた」
何度目か分からない溜め息を吐きながらアルフィーがエラを解放する。
やっとアルフィーを振り返ったエラは、落ち込んでいる彼の腕を軽く叩いて苦笑した。
「何喧嘩したの?」
「くだらない事」
言葉を濁すアルフィーに、エラは深追いしない方がいいかな、と判断して話を変えた。
「でも、昨日会った従妹のマチルダちゃん?だっけ。アルフィーにそっくりね」
「マチルダが?そんな事、初めて言われたけど…」
「顔は似てないけど、興味持ったら夢中になっちゃう所とか似てる」
「そう?」
「そうよ。アルフィーだって、魔石に興味持ったから月光干し見せて欲しいって押しかけたじゃない」
アルフィーが目を見開いてから、気まずそうに頭を掻く。
昨日見たマチルダは、興味が出るとそれ以外見えなくなっていた。アルフィーも興味を持つとそれに夢中になるあたり、そっくりだと思う。
アルフィーがフランマにやってきたばかりの頃、魔石について全く知らなかったのに、興味を持ったらあっという間に魔石に詳しくなってしまったので、必死に勉強して詳しくなったエラとしては面白くなかったのだ。たぶん、魔石の細かい理論やなんかはエラやルークよりアルフィーの方が詳しいかもしれない。
「アルフィーが小さい時ってあんな感じだったのかなーって思うよ」
「……もう少し落ち着きがあったと思いたい」
一理あると思ったのか、アルフィーがぽつりと呟く。確かに昨日のマチルダは落ち着きなんてなかった。ずっとあちこちに視線をやって、瞳を輝かせながら冒険心を疼かせていた。
そこでエラは気づいた。
「ねぇ、アルフィー。この後、私の家に寄ってくれる?」
「いいけど……どうかしたの?」
「花の日にうちのお父さんが毎年プレゼントを贈ってくるんだけど、センスが無くて…というか、五歳くらいで私の年齢が止まってる気がするのよね。どうみても子供向けのキーホルダーを今年は贈ってきたの。いらないから、マチルダちゃんにあげて欲しいんだけど…ダメかしら?」
あの子供っぽいキーホルダーはエラには使えない。キーホルダーは悪くない。センスのない父が悪い。でもやはり、リボンやハートのついた子供っぽいデザインを普段使いには抵抗がある。こっそり使うにしても、知り合いに、例えばアルフィーなんかに使っているのを見られるのも恥ずかしい。
だったら、鞄の飾りでいいから使ってくれそうな子にあげた方がキーホルダーも嬉しいだろう。
が、アルフィーは何故か渋そうな顔をした。
「マチルダにか…」
「何か問題ある?ダメならいいんだけど…」
「いや、ダメって事はないんだけど…ハンナが荒れそうだなって」
「一番上の子?」
「そう。なんか、喧嘩の原因の一つが花の日に俺が何もあげなかった事っぽいんだよね。突然来たから用意もしてなかったし、元々あげるつもりもなかったし、毎年用意してるわけでもないし、何であんなに怒ったのか本当に分からない」
「……憧れのお兄ちゃんから何か欲しいんじゃないの?」
本気で首を捻っているアルフィーをエラは不思議な気分で、ほんの少し呆れながら見上げる。
「え?」
「…アルフィーって本当に鈍感よね」
「………………」
不服そうに黙り込むアルフィーにエラは続ける。
「レーナ…妹がそうだったんだけど、私の従兄にニックっていう人がいて、レーナがすごい懐いてたのよね」
当時を思い出してエラは思わず微笑みを浮かべる。
ニックはエラにとってはただの従兄のお兄さんだったが、妹には憧れの人だった。
「ほら、私の父親が娘溺愛のむさ苦しいおじさんだって前話したでしょう?」
「むさ苦しいとは聞いてない気がする」
「そうだっけ?まあ、むさ苦しい人なのよ。趣味が筋トレだし、うるさいし。でもニック兄さんはギターが上手な静かな人でさ、妹の周りには居ないタイプだったせいなのか、ニック兄さんと会うとずーっと後ろ付いて回ってた。私がニック兄さんと話すと私のお兄ちゃん取らないで!ってよく怒ってたし、花の日にはプレゼントが来ないか玄関で待ってるもんだから、母がプレゼントを用意してニックから渡すよう頼んでたわ」
きっと妹の初恋に近い憧れだった。
今でこそ、レーナはニックに対して親しい従兄以上の感情を持ち合わせていないだろうが、それでもニックに会えるとなると少しだけ嬉しそうにしている。憧れである事は変わらないのだ。彼に教えてもらったギターは今でも趣味としてたまに爪弾いている。
ハンナの事はよく知らないが、従兄であるアルフィーにプレゼントを強請るのはそういう感情から来るのではないだろうか。少なくともハンナはアルフィーを慕っているように見えた。
「ま、私の勝手な予想だから違うかもしれないけどさ」
そう締めくくりつつ、エラは工房内で目に付いたものを片づけ始める。もう閉店作業をしてもいいだろう。
「何かあげれば仲直りできるんじゃない?」
「何かって何」
「ん?うーん……何だろう、雑貨とか?」
問われてエラは答えに窮する。
「雑貨」
「マグカップとか、ハンドクリームとか、ポーチとか…高校生くらいならペンケースとか可愛いコスメでもいいかもね」
必死にプレゼント候補を捻り出しながら、片づけの手は止めない。元々それほど散らかってないので、周りを見渡して片付ける物を探す。
「帰りに雑貨屋にでも寄っていったら?」
「…考えておく」
アルフィーの答えに満足してエラは破顔する。
時計を見るともうお店を閉める時間だった。
エラは手伝うというアルフィーと一緒に閉店作業をして、本日の仕事を終えた。




