出会い
「天…君、天宮君」
ぼーっと曇天の広がる空を見上げていた高校1年生俺こと天宮晃太は国語の教師の声でハッと意識を戻した。
「では、天宮君ここの問題の答えを答えてください。」
もちろん聞いてなどいないのだから分かるはずがない…
どうしとものかと考えていると隣からノートが差し出されていた。え~、なになに
「え~、佐藤太郎です。」
「それは体育の佐藤先生でしょ!?」
あ…そういえばそんな名前だったなと思い隣を見るとお調子者そうなやつがニヤニヤと意地の悪い顔で笑っていた。こいつは悪友の佐々木、入学してすぐに仲良くなったやつだ。
…てめえ、後で覚えとけよ…
それと体育の先生名前が佐藤太郎なのかよ…
「まあ、いいです。では、水無月さん、答えていただけますか?」
国語教師はそう言うと俺の前の席の天才美少女水無月楓を指名した。水無月は亜麻色の髪を靡かせながら席を立ち答えた。
「……です」
水無月は静かに解答し席に座った。
「正解です。よく予習していましたね」
水無月楓という少女はとにかく凄い。テストの成績は全て1位、体育祭でも陸上部にも負けない走りを見せていた。才能の塊と言われても間違いないだろう。かく言う俺は何も持たないザ ノーマル ヒューマン。成績は普通運動も普通。関わる事なんて無いだろう。
この時はまだそう思っていた。
はあ…最悪だ…。帰りに先生に呼び止められ、雑用を押しつけられたせいでいつもより一時間も帰るのが遅くなっちまった…
まあ、家に帰ってもダラダラするだけだしたまにはいいか、と思い普段通りアパートのエントランスを抜けていると、亜麻色の髪を靡かせた水無月がいた。
何やってんだあいつ?
少し悪いとは思いながらも、後をつけてみると俺の一つ下の部屋の前で止まった。
「誰ですか?さっきからちらちらと私のことを見てくるのは。」
ドキッとした。まさか自分がつけているのがばれているとは。
仕方がない、正直に言って許してもらおう。警察沙汰はゴメンだ。
「同じクラスの天宮晃太だ。別にあんた自身にそんなに興味もない。このアパートで見慣れなかった人物だから何か用かなと思っただけさ。」
そう、本当に興味がない。男子達が可愛い可愛いだのと吹いていて、何十人もの男子が告白するほど可愛いのだ。だが、俺はあくまで俺のそれは鑑賞用としてのそれだ。俺らとは住んでいる次元が違いすぎる。
「私ここに住んでるんですけど…」
なんだと…
その時の俺の顔は余程間抜けな顔をしていたのだろう。