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”豊穣”を冠する後継の勇者  作者: ネツアッハ=ソフ
王冠~エヘイエー~
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2,星の真価

 戦いは激しさを()してゆく。猛り狂うような激しいプラズマが空間を(はし)る。その中を縦横無尽に駆け抜ける五竜と一神の二人がゼノに()らいつき、そしてその間にアルジュナとクリシュナの二人が異能により作り出した仮想空間(かそうくうかん)にゼノをとらえる。


 だが、ゼノはその仮想空間を()の異能により無理やり打ち(やぶ)り現実世界へと飛び出してくる。其処をクロノが切り掛かり、ゼノが何処(どこ)からか取り出した黒い剣と鍔迫り合う。


「どういう事だ?先ほど戦った時よりも大統領達の戦力(せんりょく)が大幅に()している。いや、それだけではないだろう。遠藤クロノ、お前のその(かたな)はヴォーパルだな?」


「ああ」


「情報によれば、ヴォーパルはお前の息子のシイル=クリフォードが()っている筈。なら、その刀はどういう事だ?何故、ヴォーパルが二つもある!」


 そう、現在クロノがその手に持つ刀はヴォーパルだ。より正確(せいかく)に言えば、クロノの持つ炎を物質化した太刀と融合させた云わば炎剣(えんけん)のヴォーパルとでも呼ぶべき魔剣だが、問題は断じて其処ではないのだろう。


 実際、ヴォーパルはクロノからシイルへ渡されている。現在はシイルの(もと)にある筈だ。


 にもかかわらず、ヴォーパルはクロノが()っている。明らかな矛盾(むじゅん)が生じているのだ。


 だが、その矛盾点をクロノは軽く一蹴(いっしゅう)する。


「ああ、確かにヴォーパルは俺からシイルに(わた)した。それは断じて間違(まちが)っていないさ。だが、それでヴォーパルが俺の(もと)からなくなったわけではないぞ」


「どういう事だ?」


 刃を(まじ)え、互いに鍔迫り合いながら距離(きょり)をとり再び刃を交える。そんな超高次元の戦いを繰り返しながらクロノとゼノは(たが)いに言葉を交わす。


「簡単な話だ。それこそが、俺の異能の真価(しんか)だからだよ。俺の異能は仲間たちとの絆にある。仲間たちとの絆こそが、俺の力の(すべ)てだ」


「だから、どういう事だって()いている!」


「つまり、だ。俺は全ての(おも)いと魂に対する()け皿であり、器でもあるんだ。最初から俺が何も失っていないというのは、つまりはそういう事だ」


「…………ちっ、そういう事かよ」


 クロノの言葉に、ゼノは舌打ちと共に小さく(つぶや)く。


 つまりはそういう事だ。クロノは全ての人々の想いや魂に対する受け皿であり、器でもある。


 それは即ち、遠藤クロノがすべての人々に対してバックアップたりえるという事。


 そして、遠藤クロノこそが全ての(かなめ)である何よりの証明(しょうめい)でもある。


 だが、まだ(なぞ)は存在している……


「だが、まだだ。先ほど大統領達と(たたか)った時よりも、いや、それ以前にクロノ。あの辺境の惑星でお前たちと戦った時よりもお前たちが(つよ)くなっているのは一体どういう事だ?」


「……それよりも、俺だけに集中していて()いのか?戦っているのは俺だけではないだろう?」


 ゼノの問いに答える事なく、クロノは話題(わだい)を切り替えた。ゼノははっとして先ほどから戦闘に参加していなかったクロノの背後にいる筈の彼女(ユキ)の方へ向く。


 そう、其処には白川ユキが居た。そして、白川ユキの準備が全て(ととの)ったのだ。


「全神話権限解放、神話召喚(しんわしょうかん)……パンテオン‼」


「―――っ!?」


 それは、あまねく存在するすべての神話の解放。全ての神話に存在するすべての神々(かみがみ)の召喚。


 元々、白川ユキの異能は惑星規模の環境制御能力だ。だが、白川ユキはその異能を応用(おうよう)する事により神話という異次元にして高次元世界から神々を召喚する事が出来る。


 神話という物語の中の世界からの召喚すら可能とする。故に、白川ユキは星の女王(アバター)たりえる。


 だが、まだだ。まだ、白川ユキは更にそこから飛翔(ひしょう)せんとする。


「神話武装、完全解放!我は星のアバター!」


 瞬間、白川ユキの姿が書き()わった。髪の色は輝く黄金に、瞳の色は澄んだ青色へ。そして纏う衣服は純白のドレスアーマーへと置換(ちかん)した。その頭には(きら)めくティアラが在る。


 これこそが、白川ユキの最終到達点。星の女王としての真の姿(すがた)だ。


 即ち、全ての神話。全ての物語の(ぬし)である神々の女王だ。


 その圧倒的な力の圧力(あつ)に思わずゼノは一歩後退する。


「さあ、新たな神話(ものがたり)を始めましょう……エクスカリバー‼」


 ユキの掌に、圧倒的なまでの(ひかり)が収束しやがて一振りの(けん)へと変わった。


 それは、一撃で巨人すらも打倒しうる聖剣(せいけん)の一撃。かつて、大陸を広く(せい)した王の一撃。


 その圧倒的なまでの光の斬撃により、ゼノは断ち切られ―――


「いや、まだだ。まだ俺は()わってはいないっ‼」


 ゼノの魂からの(さけ)びにより、光の斬撃は()し飛んだ。そう、白川ユキの全力を込めた一撃をゼノは耐えきるどころか消し飛ばして見せたのだ。


 此処で、ゼノはさらなる飛躍(ひやく)を見せた。だが、分かっている。クロノはわかっていた筈だ。ゼノがこの程度の存在ではないという事など。


 故に、クロノは其処で跳躍(ちょうやく)する。真っ直ぐと、ゼノへ()けて飛び込んだ。


「ああ、そうだろうな。ゼノならそれくらいして見せると思っていたさ」


 そう言って、クロノは炎剣のヴォーパルを(かま)えた。


 その瞬間、ゼノは幻視(げんし)した。遠藤クロノの背後に彼の背負(せお)う数多の生命達の姿を。


 そして、其処でようやく理解(りかい)した。遠藤クロノの異能に何故、(ほのお)が関係していたのかを。


 それを理解して、ゼノは満足そうに()みを浮かべて……

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