1,星の英雄
一方、遠藤クロノと白川ユキは機械仕掛けの平野でゼノと対峙していた。
機械仕掛けの平野。文字通り、機械仕掛けの大地がどこまでも広がり空には燦々と輝く疑似太陽が昇っているのが見える。
そんな中、クロノとユキはゼノと対峙していた。
「……ああ、一つ言っておくことがある。お前の仲間たち、死んだぞ?」
ゼノが事もなげにそう告げた。そう、遠藤クロノと白川ユキの仲間たち。かつて共に戦った仲間たちは皆死んだのだ。ゼノが殺した。
だが、クロノはそれでも平然としている。いや、超然と立っている。
仲間たちの死を悼んでいないと言えば嘘になるだろう。だが、それでも二人は立っている。
真っ直ぐと、超然と。
「ああ、だけどゼノ。お前は俺から全てを奪おうとそう言ったのかも知れない。だけど、一つだけ失念している事があるぞ?」
「何だ?」
「俺はまだ、何も失ってはいない。最初から、全ては俺と共にある」
「……っ‼」
その瞬間、ゼノは言い知れぬ悪寒に襲われ一歩ほど退いた。だが、自分が一歩退いたという事実にほんの僅か驚愕した直後、真っ直ぐとクロノを睨みつけた。
そう、まだゼノは優勢にある筈だ。クロノとユキは全てを失った。仲間たちも、帰るべき場所も失ったのだから。所詮はただの強がり、の筈だ。
その筈なのに、何故だ?悪寒が未だに拭えないのは。
そして、それを見てクロノは僅かに笑みを浮かべた。そして……
「来い、俺の仲間たち」
そう、クロノが告げた。その瞬間、ゼノはクロノの背後に大勢の者たちの。ゼノが殺したはずの者たちの幻影を見た。いや、事実その者たちは其処に居た。
ありえない、なんだこれは?そう、思わずゼノは目の前の光景を疑った。
大統領が居る。王五竜が居る。飛一神が居る。クリシュナが居る。アルジュナが居る。クラウンが居る。ヤスミチさんが、エリカが、アキトが、ツルギが、マキナが居る。
かつて、クロノとユキと共に戦った皆が。其処には居た。
「何だ、お前は……」
思わず、ゼノはつぶやいた。何だこれは?何なんだ?
お前は一体何なんだ?そう、告げずには居られなかった。目の前のでたらめに、ゼノは訳が分からなくなっていた。
死者の蘇生、などではない。これはそんなものでは断じてない。強いて言えば、これは最初からそのようになっていた。そうとしか思えないような不可解な現実。
そして、事実……
「星の英雄―――最初から皆は俺と共にあった。俺は何も失ってはいなかった」
「……………………」
クロノの告げる言葉に、ユキは何も言わない。黙ってクロノを見ている。
そして、ゼノはそんなクロノに更に困惑していた。
「……それが、お前の真の異能か?」
その言葉に、クロノはただ笑みを浮かべたまま静かに頷いた。




