3,豊穣vs暴食
「行けっ‼」
まず、僕は先手として足元へ生命力を過剰に与え樹木を生成。生命力で形成された霊体の樹木によりブラスを攻撃する。だが、所詮その程度の攻撃などブラスには通用しないだろう。事実、ブラスは生成された霊体の樹木を一瞬にも満たない僅かな時間で周囲の空間ごと喰らった。
そう、ブラスは僕の異能で生成された霊体の樹木を周囲の空間ごと喰らったのだろう。その捕食にかかった時間はコンマ一秒にも満たない刹那の瞬間だ。
本来ならば驚愕してしかるべき脅威の光景だろう。その生命の大樹に注がれた生命力は文字通り世界の創造にすら匹敵しうるだけのエネルギー量を秘めている。
だが、それだけの純粋な生命力をブラスは一瞬にも満たない刹那で喰らったんだ。
けど、分かっている。この程度はまだ予測の範囲内だ。だから、僕は続けて次の手を打つ。
「生命付与、創造、百鬼夜行‼」
足元にある機械仕掛けの床。其処に更に過剰な生命力を与え、付与する。それにより、機械仕掛けの床から這い出してくるように異形の生命の群れが生まれ、一斉にブラスへと襲い掛かる。
それはまさしく百鬼夜行とも呼べる異形の群れ。創造された怪異の群れは、一体一体が恐るべき力を秘めており無双の軍隊だ。
だが、まだこの程度では足りないだろう。そう、僕は考えていた。
事実、ブラスは百鬼夜行の群れを次々と空間ごと捕食していく。
だが、関係ない。僕は次々と百鬼夜行を生み出し続け、ブラスへとけし掛けてゆく。生命の創造と暴食が正面からぶつかり、静かに拮抗しあう。
ああ、それでいい。それが良い。そうやって、ブラスの体内に過剰に生命力を注入する。
そうして、やがて……
「う、くっ……!?」
ブラスが急に、苦悶の声を上げてその場にうずくまる。
過剰に注入された生命力はどこへ行くのか?捕食された生命力はどこへ向かうのか?
簡単な話だ。過剰に捕食され、注入された生命力という名の純粋なエネルギーはやがて、ブラスの胃袋とも呼べる異空間の中へと到達し、其処に居る彼らに届く。
そう、遠藤クロノと白川ユキの許へ―――
「あ、ああっ!あああああああああああぁぁぁぁぁああああああぁぁぁっっ‼‼」
周囲の空間にスパークが迸り、ブラスが苦しみの声を上げる。その絶叫は、空間そのものを圧するほどの超高密度の力となり不可視の圧力が波動となって拡散していく。
そして、やがて不可視の力の嵐が治まった時そこに居たのは。可憐な美少女の姿になり、ぺたんとへたり込んだブラス=スペルビアの姿と―――
「ようやく、だな」
「ええ、ようやく復活出来たね。でも、それもクロノ君の掛けていた保険のおかげでしょう?」
「ああ、まあな……」
そう、復活した遠藤クロノと白川ユキの姿が其処にあった。