2,覚悟を無駄にしない為にも
意識が覚醒していく。気が付けば、其処は機械仕掛けの星の内部だった。
「此処、は?そうか……僕は…………」
周囲を見渡す。周囲には誰も居ない、恐らくは僕一人だけが生き残ったのだろう。周囲には大破した小型宇宙船の残骸だけが残っている。さきほどまで一緒にいた皆の姿はどこにもない。
しばらく、目を閉じて仲間たちの死を悼む。だが、そんなことをしている暇などもうきっと何処にもないのだろう。こうしている間にも、敵はこの場所に集まってきている。
……恐らく、僕は皆に庇われたのだろう。だからこそ、こうして生きている。
「ごめん、皆。ありがとう……」
そうして、僕は先へ進みだした。目の前には生体兵器の群れが大勢居た。全員が黒い影のような異形の群ればかりだ。中には不定形の薄いもやのような何かすらいる。
だが、構わない。僕は構わず先へ歩を進める。
異形の一体が僕へと突撃してくる。だが、それを僕は無造作に呼び出した細身の剣、ヴォーパルで一太刀に切り捨てる。
それを皮切りに、大勢の異形達が僕へと殺到してくる。僕はそれを地面から生やした無数の樹木により一斉に薙ぎ払った。
薙ぎ払い、切り捨て、そして……
僕はそのまま異形の群れを掃討しながら歩を進めてゆく。
そんな僕の脳内に、直接流れ込むように声が聞こえた。中性的な声だ。
『その先を右に、その奥で私は待っています』
どうやら、敵首魁が自ら僕を出迎えようとしているらしい。なら、僕は遠慮しない。
そのまま先へと進み続ける。そして、やがて巨大な扉が目の前に現れた。その扉の前に立つと自動的に扉は開き、僕はその中へと一歩踏み入れる。
踏み入れた先は、機械仕掛けの神殿のような広大な空間だった。
その空間を進んでいくと、やがて玉座の前にたどり着く。その玉座に、一人の少年がゆったりと座っているのが見えた。どうやら、彼が……
「君が、ブラス=スペルビアだね?」
「はい、私がブラス=スペルビアです。どうぞよろしくお願いします」
ブラスは丁寧に頭を下げた。表情はとても穏やかで、柔らかな笑みをたたえている。その姿はとても多くの銀河を滅ぼしてきた大敵には見えない。
だが、事実として彼は大勢の人たちを喰らい、多くの銀河を滅ぼしてきた。その事実だけは絶対に変わらないだろう。
なら、僕がやるべき事は明らかだろう。
「ブラス=スペルビア。僕は君と全力を持って戦おう」
そう言って、僕はそのままヴォーパルの切っ先をブラスへ向けた。
相変わらず、ブラスは柔らかな笑みを向けている。いや、その笑みはより微笑ましく僕を真っ直ぐと見詰めている。
ここに、最終決戦が幕を開いた。