プロローグ
銀河連合艦隊———アルゴナウタイ。
宇宙中の様々な国家がたった二人の反乱因子の為に手を組んだという空前絶後の大連合艦隊だ。
艦隊を構成する国家は大きく分けて六か国。その内一か国はクラウン代表が式する大連合国家。
大連合国家とは二十六もの小国が集まった連合国家群である。その規模は他大国と引けを取らないだろう規模がある。それ故に、連合国家を取りまとめるクラウン代表の手腕の高さとカリスマ性の高さがうかがえるだろう。
けど、それ故にこれ程の大連合艦隊を動員しても勝率は低いという現実に驚愕せざるを得ない。
相手はあのゼノとブラスだ。クロノさんとユキさんが敗北を喫した程の敵だ。決して油断する事は出来ないだろう難敵だった。
だから、僕達は気を引き締め直す。相手にとって不足は無し。全力を尽くさねば全滅すらありうる強敵が二人も居るのだから。
「……………………」
僕は、改めて気を引き締め直すべく呼吸を整える。
向かう場所は観測可能領域帯にあるとある銀河。其処に人工惑星型の拠点が存在しているのを発見し現在その宙域に向かっている場面である。
「現在地点より敵拠点までの距離推定、残り3光年半———到達時間推定、」
「残り35分62秒で到達可能。ワープバブル生成、再転移開始します」
「転移失敗!目前にアンノウン出現!これは……ゼノです、敵将自ら———‼」
突如、アラートが鳴り響き、瞬間艦隊の内約過半数が壊滅した。何が起きたのか理解出来ない。しかし恐らく概念的な攻撃であろう事だけは理解出来る。
だが、こうして黙って見ている訳にはいかないだろう。敵はすぐ目の前に居るのだから。
「シイル」
「はい、何でしょうか?」
大統領が僕に話し掛けてきた。その表情は真面目そのものだ。だから、僕も表情を引き締めて真剣に話を聞く。
だが、その話の内容に僕は思わず瞠目する。
「今すぐ、ヤスミチ・センジョー達と共に先に行け。此処は、我らで食い止める」
「っ⁉大統領、それでは———」
「失礼、言い方が悪かった。此処は俺達に任せろ。奴は俺達で倒す」
その気迫に、僕は思わず息を呑んだ。どうやら、本気らしい。
どうやら悩んでいる暇もないようだ。何時、ゼノが再攻撃をしてくるかも分からない。だったら僕も覚悟を決めるしかないだろう。
「これだけは言わせて下さい。御武運を……」
「ああ、お前もな!」
そうして、僕とヤスミチさん達は艦隊から離脱して単独で敵拠点に向かう事となった。
・・・ ・・・ ・・・
そうして、ゼノとの戦いが始まり半時間も経過せぬ内に。
連合艦隊アルゴナウタイは———完全に壊滅した。ゼノは無傷だった。




