2,クロノからのメッセージ:上
「クロノさんからの伝言、ですか?」
思わず、といった具合で僕は身を乗り出した。けど、気分が高揚した僕を抑えるようにヤスミチさんが片手で制した。気付けば少しばかり興奮していたのだろう息が荒くなっている。
どうやら、少しだけ興奮しすぎたらしい。気分を鎮める為に一度呼吸を整える。
それを見たヤスミチさんが一度だけ頷くと、小型の宇宙船を顎で示した。
母船である人造惑星からこの小型船で来たのだろう。宇宙船としてはかなり小型だ。
「詳しい話は中で話そう。とりあえず入るぞ」
「……はい」
そして、小型宇宙船の中に入る。其処にはメイド姿の女性が立っていた。いや、所々機械的な部分が見えているから、彼女が有機アンドロイドの?
そう考えていると、ツルギが僕に紹介した。
「シイル、こいつが俺の制作した有機アンドロイドのマキナだ。有機アンドロイドとはいえその本質は有機生命と機械のハイブリッドだ。人間と同等の思考活動だってするから人間と同じと考えてくれても構わないのでよろしく頼む」
「私がマスターの制作した有機アンドロイドのマキナです。どうぞよろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします?」
マキナはスカートの両端をつまみ、僅かに持ち上げてお辞儀をする。かなり礼儀正しい。
それに……
うん、確かに人間と同等の知性を感じる。ずいぶんとハイスペックなアンドロイドだ。
そう、僕は思った。
……そうして、僕はマキナに案内されて小型宇宙船の一室に入った。其処には巨大モニターがあり椅子とテーブルが用意されている。テーブルには、クッキーとお茶が入ったコップが置かれているのが理解出来た。どうやら、最初から此処で伝言を伝える気だったらしい。
そう呑気にお茶を飲む気にはなれないけど。仕方がない……
「では、こちらに。今から遠藤クロノからシイル=クリフォードへの伝言を再生します」
「……………………」
ついに、クロノさんの伝言が再生されるのか。クロノさんから、僕に充てた伝言。
緊張しない、と言えば嘘になる。事実、今の僕はかなり緊張している。不安を感じていない筈が無いだろう。それくらいに心臓が鼓動を刻んでいる。
でも、それでも僕はこの伝言を聞く必要がある。そんな気がするから。だから、僕はこうして黙って伝言を聞く為に椅子に座る。
その覚悟を察したのだろう。マキナが「遠藤クロノの伝言を再生致します」と言ってモニターを指で刺した。その瞬間、室内は薄暗くなり、モニターに灯りが灯った。
そして、次第にモニターが鮮明になってゆき。やがて一人の青年が映る。
「クロノ、さん……」
そう、その姿はまごう事なき遠藤クロノその人だった。




