プロローグ
緊急議会の終了した後。会場となった会議室には既にほとんど人は居ない。残っているのは議会の進行を任されたギイと、用事があって残っているクラウン代表だけだ。
クラウン代表はギイと向かい合って話している。
「で、どうだったかな?シイル=クリフォードを見て、何か思う事はあったかな?」
「思う事とは何の事でしょうか?」
とぼけるギイを相手に、クラウンは薄く笑みを浮かべる。その所作は何処までも優雅で、まるで物語の中にいる貴族か何かのようだった。
しかし、その笑みを見たギイは僅かに冷や汗を流す。どうやら、この男を前にして一切のごまかしは利かないらしい。
そう、悟った。
「とぼけなくても良いさ。もう既に答えは得ているんだろう?」
「……ええ、まあ。まだ完全に答えを得た訳ではないですが。それでももう少しは頑張ってみようと思える程度には勇気は得ました」
「そうか、なら重畳だ。司会進行に君を推薦した私の目は節穴ではなかったという事だ」
「ええ、其処は感謝しています」
ギイはクラウンに深々と頭を下げる。そんなギイを相手に、クラウンは僅かに考える仕種をした後に問いを投げ掛ける。
「一つ、良いかね?」
「はい、何でしょうか?」
「君もこれからの最終決戦に参加してみないかな?」
その言葉に、他ならぬギイ自身が驚いた。それはつまり、これから行われる敵との決戦に参加する事を許すという事でもあるからだ。だが、それはつまり……
ギイの参戦を認めるという事は、前回の銀河大戦の被害者たちからすればつまり銀河大戦の再来を意味すると受け取られるだろう。それは、避けねばならない事だ。
だが、当のクラウンはあっけらかんと言い放つ。
「別に、君自身はロイ将軍とは違うのだろう?この戦乱に乗じて戦争の拡大を狙うような真似はしないと約束出来る筈だ」
「そ、それは勿論分かっています!ですが、それでも納得出来ない人も居るのでは?」
「分かっているさ。だからこそ、首輪はつけさせてもらう。その上で言わせて貰う、君はこの決戦を機に過去の罪過を雪いではみないか?」
それはつまり、過去の清算の為に今回の決戦に参加してみないかとの誘いだ。
それはかなり魅力的な話だ。だが、それでも納得出来ない者だって居るだろう。
「……それでも、納得出来ない人はどうするつもりですか?」
「私が納得させるさ」
「……………………」
「私が納得させる。納得させて見せる。だから、最終的な判断は君がしたまえ」
「…………分かり、ました。私も参戦しましょう」
そう言って、ギイはクラウンの差し伸べた手を取った。