エピローグ
そっと、アルジュナは手記を閉じた。
「……内容は大体理解した。そろそろ戻ろう」
「うん、そうだね。そろそろ緊急議会が始まる」
アルジュナの言葉に、クリシュナが頷く。そして、船に戻ろうとしたその時、アルジュナの腰に仕舞われた携帯端末が鳴り響いた。どうやら、誰かからの通信らしい。
アルジュナは端末を取り出し、周囲を警戒しながら通話ボタンを押した。
「はい……ああ、分かった。今から向かう。場所は……軍事国家ライだな?了解した」
再度、ボタンを押し通話を終了する。傍で聞いていたクリシュナが、アルジュナに問う。
「相手は?」
「ああ、通信の相手はキングス大統領だ。何でも、緊急議会に割り込みでクロノの息子を連れてくるつもりのようだ。そして、それに際して場所をライの首都であるステラジアで行うらしい」
「そう、クロノの息子。シイル=クリフォードだね?」
「ああ、丁度良い。あの子には話さなければならない事が出来た所だ」
「……そうだね。場合によっては、クロノの事を恨むかもだけど」
「仕方がないさ。遅かれ早かれだろう」
アルジュナの言葉に、クリシュナは黙って頷いた。そう、遅かれ早かれの問題だ。どれほど隠し通したとしても何れは気付く事だろう。それは、クロノ自身知っていた筈の事だ。
恐らく、クロノとしては機会を待っていたのだろう。だが、その機会が来る前に別れは来た。
ある意味、これは悲劇なのかもしれない。だが、やはりそれは仕方のない話だった。何れ、どの道シイルが知るべき時は来ていただろうから。
それが、偶然にも今回だっただけの話だ。
例え、その結果として育ての親を恨む事となろうとも。