2,現実改変の兵器
「げ、現実改変だって⁉そんな空想じみた異能が可能になるのか‼」
素っ頓狂な声を上げたのは、王五竜だ。しかし、他の皆も同様の心境らしくそれぞれが冷や汗混じりにキングス大統領を見ている。
しかし、当の大統領は至って落ち着いている。というより、その反応も織り込み済みだったのか平然とした反応をしていた。
「ああ、だがこれは異能とはまた異なる次元にある超能力だ。無論、限界も存在するが」
「限界?」
「どうやら話している暇は無くなったらしい。主星で何かあったようだ」
見ると、コンソールのパネルには先程からレッドアラートのような物が表示されていた。
大統領がパネルを操作する。すると、虚空に立体ホログラムが投影された。アークの大統領補佐官であるフィリップ=クロス補佐官だ。
「どうした?フィリップ補佐官」
「大変です!主星地球にある研究部本部が襲撃を!」
「敵の数は?」
「僅か一体です!どうやら敵主力の生体兵器が単独で攻めてきたようです!」
と、その瞬間ホログラムの映像が消えた。どうやら通信回線が切れたらしい。
しかし、敵は僅か一体か。逆を言えば、僅か一体で大国アークの軍事施設を襲撃出来る程に強力無比な力を保有しているのだろうけど。さて、
「大統領?」
「分かっている、急いで地球に戻るぞ」
僕の言葉に、大統領は端的に答えた。直後、宇宙船を包み込むワープバブルが起動し瞬間その空間上から宇宙船は消失した。
・・・・・・・・・
大国アーク、主星地球。アメリカワシントン———
其処には黒い人型の影が暴れ回っていた。その身体は変幻自在なのか、或いはそもそも実体というのを持たないのか、身体の至る部分を変形させ伸縮させて破壊活動を行っていた。
「ひゃははははは、ひゃははははははははは、あははははははははは!」
笑っている。影は破壊活動をしながら楽しげに笑っていた。そんな影に、兵士達はアサルトレーザーライフルを構え一斉に撃つ。
しかし、それでも効かない。光線の弾幕は漆黒の影に呑まれてそのまま反撃とばかりに変幻自在の影により薙ぎ払われた。
笑う。嗤う。影はそれでも笑い続ける。しかし、
「それまでだ!」
「(。´・ω・)ん?」
直後、影を呑み込むように巨大な樹木が襲い掛かった。樹木は薙ぎ払うように、或いは空間を呑み込むように嗤う影を襲撃する。
それは、間違いなくシイル=クリフォードの豊穣の異能によるものだ。大地に生命を与え、与えられた生命力により豊穣を成す。
しかし、直後さらなる暴虐によって巨大樹木は薙ぎ払われた。影はまだ笑っている。
巨大樹木を薙ぎ払いながら、影は尚も笑う。
「ひゃははは、どうやら来たらしいな!遠藤クロノの息子!」
楽しげに笑う影を、シイルは真っ直ぐ睨み付けていた。




