1,デウス=エクス=マキナ
現在、僕達は大統領と共に天の川連邦アークの主星、地球に向かっている。その道中、僕は大統領に詳しい話を聞く事にした。
「大統領、少しお話を伺いたいのですが。良いでしょうか?」
「うむ、ずいぶんとまあ仰々しいが構わん。内容は察した」
どうやら内容は察していたらしい。まあ、この状況下で話す内容は限られてくるだろう。実際に他の皆も同じ事を聞きたいようだし?
なので、いっその事聞いてしまう事にする。いや、この状況下で聞かない選択は無いだろう。
「先程大統領が言っていた改変兵器とは一体何ですか?」
そう、今気にすべき事はその一点だろう。大統領は概念兵器に対抗しうると言っていたけど。
それはつまり、概念兵器に匹敵する兵器をアークが極秘裏に製造している事になる。
概念兵器を胡散臭いと断じて全て放棄した大統領が、である。
「まあ、確かにお前達がそれを気にする気持ちは分かる。だからこそ現段階で明かしたのだが」
「どういう事です?」
「概念兵器に匹敵する兵器だ。流石に見過ごす事は出来んだろう、それは俺とて理解出来る。しかし俺は同時にこうも考えているのだ。今でも概念兵器を秘密裏に運用する国家は多い。なら、それに対抗しうる為の抑止力はどうあっても必要になるだろうと」
その為に、わざわざ改変兵器というものを?零から構想して製造したというのか?
僕の疑問は他の皆も同意見だったのらしい。同じような表情を浮かべている。
それを感じ取ったのか、大統領は苦笑を浮かべて話を続けた。
「分かっているさ。そんな事、ほとんど机上の空論に近いなんて事は。それに、結局武力で武力を抑止するしか出来ないのも自覚はしている」
「では、何故?」
「完成させてしまったからだよ。ほとんど机上の空論に近かった筈の、その兵器の構想を」
「…………」
完成させてしまった。そう、大統領は繰り返した。ほとんど机上の空論に近かった、その兵器の構想をアークの開発部は完成させてしまったのだ。
後は誰もが予想出来る通りの話、大統領が主導してその兵器開発を行うしかなくなった。事此処に至り既に開発を中断出来るような勢いになかったという。
話を聞き終え、僅かな沈黙が流れる。どう答えれば良いのか、流石に返答に困る。
が、やがてその沈黙を破り五竜が溜息混じりに問い掛けた。
「つまり、その机上の空論が現実になった物が……件の改変兵器だと?」
「ああ」
「その改変兵器とは、厳密にはどのような兵器なのだ?字面からして何かを改変するのか?」
「ああ、ただし改変するのは現実だ」
「何?」
大統領の言葉に、一瞬耳を疑ったのか五竜が怪訝な表情をした。無論、僕達も同様だ。
今、大統領は何て言った?
大統領自身も、僕達の気持ちを理解しているのか。溜息混じりに説明した。
「特殊ナノマシンデバイス、デウス=エクス=マキナ。改変兵器の名の通り、現実改変すらも容易く可能とする究極の兵器だ」
その言葉に、僕達は再度絶句した。




